第1話 告白
はじめまして、マイペースに執筆活動をしているうなぎ昇再と申します!
作家ネームの「昇再」は「のぼり」とちょっと強引に読ませていて、勢いが落ち着いてもまた巻き返すという粘り強さを込めて付けてみました笑
小説を書くのは初めてですが熱意を込めた作品を発信していけたらと思ってます!
3分前に鳴り響く予鈴、教室内では机上に胡座をかいた生徒の周りを囲むクラスメイト達。
どうやらクラス中心の一人が一発芸を披露するらしくこのギャラリーの数だ。
また女子達は付き合ってる彼氏について愚痴を言い合ったりしている。
その他諸々も派閥ごとにコミュニケーションが絶え間なく飛び交う活気に溢れた空間になっていた。
““キーンコーンカーンコーン““
本鈴と同時に教室前方の戸が開き赤フレームメガネに長髪が特徴の菅林先生が教卓の前に立ち気怠そうに一声かけた。
「じゃあ号令」
「起立」
日直の生徒がそう言うと皆一斉に立ち上がる。
「礼‥‥よろしくお願いします」
生徒一同がお辞儀をしている最中、1人だけ視線が先生ではなく違う方向を見ていた尋奈辺コウは(つまりオレ)ぼーとしてとある人に見蕩れていた。
その正体は頑和冷華という147センチと小柄な女子生徒だ。
内気で真面目な一見どこにでもいる普通の女の子だが生徒会長を務め不器用ながらも風紀の乱れを一生懸命に指摘していくその姿にいつの間にか惹かれていた。
惚れたもう一つのポイントはニコッとした時の笑顔が小動物っぽくて正直心に刺さる。
(可愛い‥マジ好き彼女になってくれ‥あわよくば将来の嫁に‥。)
そんな感じで現在絶賛片想い中のいち男子高校生のオレは頑和を見て幸せな気分になる日々を過ごしていた。
──放課後、部活動に向かうため下駄箱から革靴を取り出すとその下敷きになっていた何かがヒラヒラと床に落ちた。
(あれ、未提出のプリントの残骸でも入ってたかな。)
そんな事を思いつつ手に取って見てみると紙の中段辺にメッセージが書かれていた。
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放課後、屋上に来てね
待ってるから
3年3組とある生徒より
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なんだか既視感のあるこの文面に心臓が鼓動を速めている。
(待てよ、、、これってもしかして誰もが羨む展開なんじゃないか?!【下駄箱】に【手紙】この2つのワードが揃った時点でもう確定だろ、神イベントの!)
これまでの学生生活を振り返ってもこんなことは一度も無くて思わず期待に胸を膨らませてしまうのは仕方のない事だ。
(けどまあ有り得ないか‥バレンタインとか一個も貰ったことないし誰が好き好んでこんな陰キャを彼氏に選ぶんだろ)
自虐的になることで冷静になりこの手紙は冷やかし類の物だと結論付け、無視して部活動に行こうとした。
しかし後々禍根を残すのも嫌なのでやっぱり屋上へ行くことにした。
──階段を陸上部で培った脚力を生かして全速力で駆け上がり屋上へ続くドアの手前まで来た。
(勢いできちゃったけどやっぱ戻ろうかな‥これがもしオレ自身が気づかない内にやらかしてて人から恨みを買って呼び出されたとしたら‥)
そんなネガティブな事を考え怯んでしまったがここまできたら確認せずにはいられないと思い覚悟を決めてドアノブを回した。
ドアを開けると心地よい風と太陽の日差しが入ってきて、縦横25mの屋上の中央で誰かがそっぽを向いて立っているのが視界に飛び込んだ。
その人物の髪の束は左右二つに分かれていて風がなびく毎に兎の耳の如く揺れている。
「頑和か?」
声をかけるとビクッとしながらこちらを振り向いてきた。
「あっ!尋奈辺くんっ、約束通り来てくれたんだね!」
「あ、ああ、まさか本当にココにいるとは思ってもみなかったけど一応な」
屋上に呼び出された事にもビックリだが呼び出した張本人がまさかあの頑和冷華だとは、なんだコレ?嬉しい、ひょっとして今日は命日か?
気持ちがハイになりかけるのを抑えてなぜ呼び出されたのか理由が気になったので聞いてみた。
「んとね、実はさ‥その‥‥‥す‥でさ‥」
理由を話そうとすると急にさっきとは態度が変わり人差し指同士を合わせてモジモジし始めた。
(これ、もしかしなくてももしかするよね、絶対100パーアレだよね。)
その恥しがる表情と言葉に抵抗している姿からもう察してしまったオレはニコっと意地悪げに言ってみた。
「え、ごめんもう1回言ってくれる?」
「もうーー気づいてる癖にそうやってあたふたするの見て楽しんでるんでしょっ!」
頑和はそう言いながら眉を細めて頬を赤らめていた。
(おいおい、反則だろこんなの‥一個一個とる動作可愛い過ぎんだろ‥もうウエディングドレス着て式挙げようぜ)
たぶん今鏡みたら尋常じゃないくらい気持ち悪い顔してるオレはSAN値がピンチの中なんとか言葉を紡いだ。
「きちんと言わないと伝わんないよ?」
「わかったよ‥‥‥‥好き‥尋奈辺」
「お、おう‥」
恥じらいを残しつつ真剣な顔と口調で堂々と告白された。
これ程嬉しいと思ったのはいつ以来だろうか、いや過去にもこんな衝撃的なことは無い。
間違いなく歴代最高の神イベントだ。
でもどうしてこんなオレを好きになったのか素朴な疑問が湧いてきた。
「でも正直オレなんかの何処がいいんだ?
成績と運動神経、顔も並なのに、これは何か裏があるとしか」
そう言うと頑和はムスッとして拳を少し強めに胸に当ててきた。
「ちょっと人の恋心は素直に受け取りなよ!ほら覚えてない?1ヶ月前に校門前で服装検査してた時にさ金髪にピーナッツのピヤスした不良いたじゃん」
「ああ、アイツか!なんとなく覚えてる、すげー目つき悪かったよな」
そう、あれは約1ヶ月前中間テストが終了した翌日の出来事だった。