どこまでだって青く
羽田から飛行機に乗ったのに、お空の上から降りるハメになった。どうしてかなんてわかるわけないじゃん。エンジンが爆発したんだもん。機体に穴あいたんだもん!
だからぼくのからだは雲の中なのだ。
くるくるしてると思う。息が苦しいんだ。ずっと定まったよりどころを得られないまま、腕はガタガタする。脚は全然所在が分からない。顔がずっとうーってなる。耳がごうごう言う。目もあかないんじゃ……。
ぼくどないなってまうんやろ?
頑張ってどうにかしないとと思った。目を薄く開く、開け、頑張る! すっと真っ白い世界が消える。あ! すごい海だ。かとおもうと、水平線と雲が見える。
お腹を張って、からだをグッと固めて姿勢を定めようと頑張る。全然できない。
あっちが持ってかれる、こっちがぐらぐらする。下を見たかと思うと、ぐるんとなって、後頭部に抵抗がかかる。ぼくはいつかテレビで見たスカイダイビングの人の両手を広げた姿勢を一生懸命思い出して、そればっかりを思ってからだを動かしていた。
あのときはこたつの中が暖かくて、おばあちゃんが隣にいて、お雑煮のお餅を食べていたんだった。お家の庭は広くって、花どきにはミツバチがブンブンいって怖かったり、楽しかったりした。パパは犬を連れて帰ってきて、三日のうちに冷たくなって、可哀想だった。ぼくは一番気に入っていた毛布にペロを包んで、ライラックの花壇の下に埋めたんだ。ライラックは紫のきれいな花をつけるんだ。もうすぐ広島の尾道について千光寺だとか猫の細道だとか、いろいろ予定通りに見て回るんだ。それからあと何年でぼくは映画監督になるんだろう。りっぱな映画をとるんだ。
あ、海が青くて。どこまでだって青くて――