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群青、行く春。  作者: クサナギカナデ
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8

「お前は結局どうすんの? 」


「わからん」


「ははは。なんだよそれ。らしいけどさすがにますいだろう」


「楓はどうするの? 」


「俺は就職かな、まぁ肩書きがあった方が便利だけど、そんな余裕はないからなぁ」

 

「そっか」


 こいつのこういう変に物分りのいい所が俺にとってはありがたい。

 変に押しつけがましくないっていうか、煽ってきたりしないもんな。

 お前なら出来るとか、もっとがんばれとかそんな自分言って気持ちよくなっているだけ奴らより

 よっぽどありがたい。

 

 

 学校が終わって家につくと薫が出迎えてくれる。


「私、今日出かけるから」


「ん、分かった」


 今から男の所に行くのだろう彼女はバスタオル一枚を巻いただけ姿だ。

 一緒に過ごすようになってどれくらいたっただろうか

 ちょっと変な出会い方ではあったけど、同時に声を掛け合ったのには笑った。

 

 初めのうちはたまに見かける程度の相手だったけど

 お互い違う相手を連れていることに気づいたときに思わず目が合ってしまった。

 そこで分かってしまったお互いの状況が。

 

 でも、その程度はよくあることだし。

 声をかけるなんてことむしろルール違反みたいなものだけど

 一体何が気になったのか、気づいた時にはお互いに声を掛けていた。

 

 それからそのまま同棲することになったのはすごく自然なことで、

 当然のように始まった共同生活に何も不満はない。

 お互い相変わらず他に相手がいたりするけどそれはそれでやっている。

 



初めての体験は小学生の時だった。

近所のお姉さんに誘われて何かよくわからないまま部屋に連れ込まれ、帰りに金を渡された。

そのお金でかったジュースを飲みながら、自分がしたことがそういうことなんだろうと納得してしまった。

きっとそこが分かれ目だったのだろう。


 

 父親と呼ぶべき人の顔を知らない。

 母親の横には立っている男がよく変わっていた。

 そんなどうしようもない人たちのなかで育った俺が担う役割なんて知れている。

 

 だから自分の生き方も当然のようにどうしようもなくなっていた。

 この生き方しか知らないのだから当然といえば当然だし、自分でも受け入れていた。

 

 だからといって母親のことを悪いとも思っていなかった。

 むしろこの容姿に生んでくれたことを感謝した。

 

 そんな俺が進学したのもただの気まぐれで

 そこで出会った虎と仲良くなったのは本当何でなんだろうか?

 

 どこか俺に似ている所があったのだろうか、お互いのことを話すことなんてなかったから

 あいつも俺も周りが思っている以上に何も知らない。それでもこうして一緒に過ごしてこれた、

 知らないからこそ過ごしてこれたのかも知れない。

 

 結局お互い何も知らないまま別れるんだろうなと、そんな風に思っている。

 卒業したら会うことなんてないだろうし、街で見かけたって声もかけないだろう

 それでいいと思えるやつなんだ。

 

 結果、綾がいるからどうにかなるだろうとも思う。

 何故か柄にもなく幸せになって欲しいなんて考えてしまうほど虎の事が気に入っている

 

 

 

 

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