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屋上で昼飯を食べながら、さっきあったことを話してみる。
「どう思う? 」
「クソみなたいな話だな」
率直にそんな言葉を口にするのは瀬川楓である。
眉目秀麗のこの男は少々口が悪い。
「何それ、だから野球部は嫌いなのよ」
野球部批判を口にするのは容姿端麗の藤咲綾。
幼馴染みたいなものである。
昼はこの3人で集まって食べることが多い。
「ところでお二人さんは呼び出された事ってある? 」
「あるけど? 」
当たり前のように返してくる楓は流石ではあるけれど、お前はないの? 的なのは止めて欲しい。
「一応あるけど、私は行かないよ」
行く行かないよりも、どっちも呼び出されたことがあるという事実。
それだけでもうお腹いっぱいです。
そういうのってよくあることなのか? ただ俺が知らないだけ?
俺の周りで呼び出されてる率、高すぎないか?
「俺は行くよ、何かあるかもしれねぇし」
何かしら起こる事を期待している、楓らしい答え。
そうやって楽しめるのは本当すごいと思う。
「それが嫌。よくわかんない相手と二人っきりって危なすぎる」
普通はそうでしょう、女子なら当然の反応です。
やっぱり楓は変わっている。
「まぁ、それもそうか。虎は? 」
「呼び出されたことがねぇ」
「嗚呼、知ってる知ってる」
楓がニヤつきながら言ってくる。
今更訊く必要はなかったよなその質問。確信犯だな、悪いやつだ。
「そんなことより虎ちゃん。補修はちゃんと出ないとあかんよ、わかってる? 」
「わかってるって」
真剣に言ってくる綾に気圧されながら返事をする。
そのためだけに来たのだから、出ないという選択肢はない……はずなのだが、出たくないのが本音だ。
そんな俺の心の内を知ってか知らずか、釘を刺してくる綾には付き合いの長さを感じる。
「何、お前補修なの? じゃあ俺が冷やかしにいってやる」
「いいよ、来なくて。お前が来るとろくなことにならん」
「いいじゃん、その方が面白いだろうに」
「面白い要素はいらん」
「楓は何の補修か知ってるの? 」
「知らん。何の補修? 」
「水泳」
そして放課後、水泳の補修が始まる。