プロローグ
薄暗いコンテナ内の片隅で、子供達は身を寄せ合うようにして固まっていた。
あともう少しで、目的地に到着するらしい。
その知らせは、彼らに希望をもたらしていた。この先がどうなるのかなど、まだ判りはしない。不安も大きくはあったけれど。それでも彼らは生き伸びるために行動しようと心に決め、そうして道を選んだのだ。その最初の試練が、もうすぐ終わりを告げる。
互いの手を固く握り合い、目と目で意思を確認しあった。
たとえこれからどのようなことが起きようとも、自分達が離れることはない。
血の繋がりなどなくたって、ここにいる全員が家族で、兄弟だった。
みなで力を合わせて、どんな困難にも立ち向かってみせる。
年齢も性別も種族も異なる子供達は、改めてそう誓いあったのだ。
と ――
その中のひとり。もっとも年かさと見える黒髪の少女が、ふと何かに気付いたのか上を振り仰いだ。
そんなことをしても、目に入るのはコンテナの天井ばかりだ。しかし胸元を手で押さえながら、何かを見透かすか ―― あるいは耳を澄ますように、上を見つめ続けている。
仲間達も彼女に倣い、ひとりまたひとりとそちらへ意識を向けていった。そばだてた彼らの耳に、これまで聞いたこともない響きが捉えられる。
重低音のそれは、遠くから急速に近付いてきているようで……




