ショートショート
私は目の前にある紙切れを見て絶句した後、無言で彼女の名前の隣にサインをした。
「なんて事だ…」
彼はトボトボ歩きながら、行きつけの居酒屋に入り酒を頼んだ。彼にとって、居酒屋は日本らしさがにじみ出るテーマパークだ。ここにきて酒を飲めばいつだって、最後は前向きになれた。
しかし、今回は流石に彼の心におった傷をカバーできるものではないらしい。
そこに、彼の友人がやってきた。一目で落ち込んでるのがわかる彼をみると、隣の席に座った。
「どうしたんだ、いつになく落ち込んでるじゃないか。」
「聞いてくれるか…実は…」
友人に家での出来事を告げると彼は何とも言えない顔をしたあと、結局同情した表情を見せた。
「なるほどな、落ち込むのはわかる。しかし、男女の差は国が違うことよりも難しいものさ。君が落ち込むのも無理はないさ。」
そう言って盛り上がる2人に、隣で話を聞いていた女性は首を傾げた。
「どうして彼女からのプロポーズに落ち込んでるのかしら?婚姻届にサインするんだから、彼もいずれ結婚する気だったんでしょ?」
彼女の言葉に目の前に立っていた居酒屋の店主は苦笑いをした。
「男女平等とは言うものの、どこの国のやつでもプロポーズはされるよりしたいものなのさ。男にとってはな」