そのきゅう・冬の田んぼは大きく遊べる広場、そしてゲイラカイトはすごく飛ぶ
冬でも子供は元気だ。
田んぼの稲刈りが終わって水が抜かれると田んぼは大きな広場として子どもたちが走り回る。
そして今日も彼等は駄菓子屋へ赴く。
「おばちゃーん、新しいゲイラはいったー?」
「大丈夫はいってるよー」
「うわあ、種類が増えたねー」
「いっぱい売れるからね」
ゲイラカイトは三角の形状をしたタコでプラスチックのフレームに薄いビニールの翼のタコだが誰でも簡単に飛ばせるため子どもたちの冬の遊びの定番なのだ。
「やっぱり白だよねー」
「赤いほうがかっこいいよ」
「いやいや青だろー」
色は違うけど大きな目玉がついているのはみんな一緒。
そして冬は北風が強いし田んぼを使えるから凧揚げには絶好の時期なのだ。
そしてゲイラカイトは組み立ても簡単。
まずはゲイラカイトを裏返しにして、横棒を取り付け補強シールを貼り、凧糸を穴に結びつけたら完成。
気をつけないとタコ糸が解けてたタコがどっかに飛んでいっちゃうからしっかり何回も結ぶのが大切。
「よーし、イッセーので上げるよー」
「おおっ」
「誰が一番高くあげられるか競争だー」
一人でゲイラカイトを飛ばす場合は右手でタコ糸の結び目の部分を持って左手にタコ糸の糸巻きを持って風上に走りながら少しずつ右手のタコ糸を送り出していく。
「うわ、落ちちゃった」
うまく風を捕まえられないとタコが左右に揺れてガンと地面に墜落したりもする。
そういう場合は拾い上げて最初からやり直し。
しかし上手くタコ糸を伸ばせたらもう風に乗ったゲイラカイトは高く高く空へ舞い上がっていく。
糸がどんどん伸びてタコが小さくなるほどまで飛んだりするのだが……。
「あっ」
油断すると急に墜落するのがゲイラカイトの怖いところでもある。
必死に走ってなんとかあげようとしてももう遅い。
「あーあ、落ちちゃった」
そしてたかーくとんだゲイラカイト地面に落ちた場合拾いに行くのが大変だったりする。
「ちょっとまってくれよー」
ダッシュでゲイラカイトを取りに行って、トボトボと戻ってくる。
「棒が折れちった」
「あらら、これじゃもうだめだね」
「うーん、今日はもうおわりにしようか」
「ああーまだ買ったばっかリだったのになー」
ゲイラカイトは意外と高くて1000円位する。
小学生には一ヶ月のお小遣い全部だったりするからこれは痛い。
「棒をなおしたらなんとかならないかな」
「ビニールは破けてないしね」
「そっか、なんとか直してみようか」
ゲイラカイトはビニールが破れてもビニール袋を貼り付けてみたり、木の棒がおれても同じような長さの木の棒をナイフで削ってはめ込んでみたり、意外と壊れても簡単に直せたけど電線や架線にひっかってしまいタコ糸切れてしまった場合はどうしょうもなかった。
風が吹く旅に舞い上がり風が止めば落っこちるゲイラカイトを見てがっくりしたり場合によってはなんでそんな危ないことをするのかと怒られたりするのだ。




