そのご:冷たいラムネはとても美味しい
いつもの放課後、博と雅人はいつもの駄菓子屋に立ち寄って良く冷えたラムネの瓶を手に取った。
「おばちゃーん、ラムネちょーだーい」
「ぼくもー」
おばちゃんも笑顔で二人に答える。
「はいはい、40円ずつだよ」
二人は財布から十円玉を取り出してオバちゃんに渡した。
「はい、40円!」
「えーと、はい40円!」
ラムネはちょっと変わっていてその他の多くのビン入りジュースは金属の王冠で閉じられているのだけど、ラムネは中に入っているガラス製のビー玉が栓となっている。
そしてラムネのビー玉の栓を開ける時には1センチくらいの棒がついた平らな円形の木が取り付けられたラムネ瓶専用の栓抜きをつかう。
ラムネの飲み口の紙ラベルをはがしてから、飲み口の部分にこの栓抜きの棒の部分を当てて、栓抜きの平らな部分を平手で力強くたたくと、栓となっているビー玉がはずれるのだ。
雅人はなれた調子で栓抜きをラムネ瓶の飲みくちに当てて栓抜きを手で押した。
「よっと」
”ぽん”
小気味よく音がしてラムネが吹き出てくるのですぐに口をつける。
「あー、おいし~」
一方の博は普段あまり炭酸飲料を飲まないのも有ってへっぴり腰。
栓抜きをラムネ瓶の飲みくちに当てて栓抜きを手で押したのだが……。
「え、えい!」
しかしビー玉は落ちてくれなかった。
こういうのは勢いとか思い切りが重要なのだが。
「あーあ、ひろくんは相変わらず下手だなぁ」
「う、うーん、上手く行かなかったよ」
「もっと勢い良く一気に手を降ろさないと」
「そ、そうだね、えい!」
そして一度栓抜きに失敗したラムネは激しく吹き出して手を濡らす。
「うわ!」
そしてもったいないので早く飲んでしまおうと慌てて飲もうとすると飲みくちにビー玉が詰まってでなくなるのである。
「うーラムネって飲むの難しいよね」
雅人は笑う。
「そんなことを言うのはひろくんくらいだってば」
彼はビー玉が飲みくちに落ちてこないように瓶がへこんでいる部分にラムネを挟ませてあるので普通に飲めるのだ、だからこういうのは焦ったら駄目ということ。
「なんかあせっちゃうんだよねー」
博もラムネで手をベタベタにしながら瓶の持つ方向を替えて少しずつ飲んでいく。
コーラやサイダーもいいがラムネは何か特別な美味しさがあるように思う。
「ごちそうさまー」
「ごちそうさまー」
二人はラムネの瓶をオバちゃんに返して店の中に入っていく。
そして博は真ん中に穴の空いた白いラムネ菓子を手に取る。
「ラムネって言ったらぴーぴーラムネだよね」
しかし雅人は別のものを手に取る
「いやいや、ラムネって言ったら森永ラムネだよ」
瓶の形を模した青い容器に小さな白いラムネ菓子がたくさんはいったそれを手に取る。
「おばちゃーん、ラムネちょーだーい」
「ぼくもー」
おばちゃんも笑顔で二人に答える。
「はいはい、50円ずつだよ」
二人は財布から十円玉を取り出してオバちゃんに渡した。
「はい、50円!」
「えーと、はい50円!」
そして二人はラムネ菓子を手にして駄菓子屋をでていった。
それはそれは嬉しそうに。