ついかそのじゅうご:木で出きたみかん箱は子供にとってはお宝を入れられる宝箱、でも親からみるとガラクタ
「ひろくーん。
田舎のおばあちゃんからみかんが届いたから食べなさーい」
「はーい、空いたみかん箱、僕にちょーだいね」
「はいはい、どうせまたガラクタ詰め込んで物置に入れるんじゃないの」
「うーん、そうだね、なるべくそうならないようにするよ」
この時代のミカンやリンゴはダンボールではなく木の箱に詰められて送られることもまだまだ多い。
箱のサイズは幅30cm × 高さ31cm × 奥行き62cmで内寸は幅28.5cm × 高さ29.5cm × 奥行き59.5cmといった所。
そしてそれを座卓や椅子の代わりにしていたという話は昔はよくあったようだが、今は勉強机セットがある方が普通だ。
しかし子供にとって空いたみかん箱はおもちゃなどを詰め込める箱として大事な宝箱なのだ。
「アレも入れてこれも入れて……あ、でもアレはまだ遊ぶから上の方にいれないと出せなくなっちゃいそうだな」
おもちゃはそれがはいっていた箱や野球盤みたいに大きいものは押し入れに、小さいおもちゃは机の上や勉強机の引き出しの一番下などに、そこに入り切らなくなったおもちゃなどはやはり押入れに直接入れる場合もあるが、こういった箱に入れておいたほうが散らばらないのでいいのだ。
さらに少し古い家なら屋根裏部屋や納屋などに置かれたミカン箱の中に収められた、戦前の教科書や本、皿や茶わん、箸などの生活用品や人形などのおもちゃといった、昔の暮らしぶりがわかるものが出てきたりもする。
こういった箱が木箱から段ボールへ変わり始めるのは1951年〜1960年で、木材資源保護が声高に叫ばれた事や既にアメリカではダンボールでの梱包が主流になっていたのが原因だ。
しかし、果実は傷つきやすく箱が頑丈で衝撃などが伝わりにくい木箱のほうがまだよく使われていたのだ。
プラスチック製の収納ケース発売はまだ少し先で、この時代はあまり使わないものは木箱や段ボールに物をしまうのが普通だったが、ダンボールより木箱のほうがなんとなく見た目かっこいいのが良いのであった。
もっとも子供にとっては大切なお宝でも、大人にとってはただのガラクタやゴミにしか見えなくもの、たとえば子供が一生懸命集めている蝉の抜け殻とか色のついた消しゴム、宝石箱アイスの容器のようなお菓子の空き箱や包み紙や牛乳瓶の蓋、綺麗なただの紐、なんだかよくわからないキン消しのような小さな人形、河原で拾った変わった形の小石、貝塚で拾ったちょっと綺麗な貝殻などなどが、お母さんが部屋を掃除する時にいつの間にかゴミだと思われて、捨てられていたりして子供がギャン泣きすることもあったりするのだが。
逆にお母さんが有名百貨店の紙袋や贈り物の包装紙を押し入れいっぱいにとっておいて、たまたまそれを見た子供がなんだろうこれゴミかな? となる場合もあったりする。




