ついかそのじゅういち:うまい棒は安くて美味しい、おでんも安くて美味しい
小学生たちは今日も小銭を握りしめて駄菓子屋へ寄って帰る。
「今日は何にしようかなー」
「いっぱい種類があるから悩むよね」
中に様々な種類の駄菓子がはいった透明な容器を眺め回してアレにしようかこれにしようかと悩むのはそれはそれで楽しいのだ。
「カールは美味しいけど高いからやっぱりうまい棒かな」
「カール一袋買うなら5本もうまい棒たべられるもんねー」
駄菓子ではなくスナック菓子として開発されたカールは、株式会社明治がポップコーンに着想を得て昭和43年(1968年)から発売しているが、一袋50円という金額は小学生が買うお菓子としてはあまり安くはなかった。
それに対してうまい棒は1本10円という、子供にもお手頃で、非常にわかりやすい価格で”それ100円もすんの?、うまい棒が10本も買えるじゃん”というように「うまい棒何本ぶん」でいうこともよくある。
「それに味も選べるし、ふ菓子やおでんも別にかえるしね」
このころの駄菓子の多くは一本一本パッケージ包装されておらず、うまい棒やふ菓子、酢イカなどの多くの駄菓子はバラで売ってて、それらは大きめの透明なガラスやペコペコのプラスチックのケースに赤い蓋がついていて、その中にはたくさん同じ駄菓子が入っているのだが、それを子どもたちやおばちゃんが手づかみでとってそのままたべていたのだからおおらかな時代である。
そして寒くなってくると駄菓子屋の店先では七輪の上に載せた鍋で熱々のおでんを売っていたりもするのだ。
「おばちゃんうまい棒のサラミとソース!」
「じゃあ僕はふ菓子とおでんのはんぺんにしようっと」
「はいはい20円ずつだよ。
おでんはちょっとまってね」
当然おでんは使い捨てではないお椀におばちゃんが入れて、割り箸を添えて手渡してくれる。
「はい、あつあつのはんぺんだよ」
「ありがとう、おばちゃん。
寒いとおでんが美味しいよね」
雅人のその言葉に博もおでんが食べたくなってしまった。
「あー僕もおでんも買おう。
おばちゃん大根頂戴」
「はいはい、ちょっとまってね」
「大根もいいよね、味がしみてて」
たべ終わったおでんのお椀を返すと二人はうまい棒やふ菓子をたべながら家に帰るのだ。




