ついかそのきゅう:雪印のアイスクリーム宝石箱は女の子にとっては本当の宝石箱みたいだった
いつもの放課後、博と雅人はいつもの駄菓子屋に立ち寄っていた。
「あれ、弥生ちゃんだ」
「おーほんとだ」
弥生ちゃんこと、中西弥生は二人のクラスメイトの女の子である。
「弥生ちゃんなにかうのー」
雅人がそう声を掛けると弥生は手にしているアイスを見せた。
「これ」
それは雪印乳業が販売しているカップアイスで、黒いパッケージが珍しい”宝石箱”アイスだ。
白いバニラアイスの中に、カラフルでストロベリー、メロン、オレンジのいずれかのフルーツの香りが付いた氷粒が散りばめられている。
テレビCMはピンクレディーが歌っていて女子に特に大人気のアイスだった。
「あー、宝石箱かあ、美味しいけどちょっと高いんだよね」
博がそういうと弥生は苦笑した。
「そうなのよねー」
レディボーデンの千円やビエネッタの五百円ほど高級というわけではないが、宝石箱の家格は120円。
おっぱいアイスが30円、あたり付きのホームランバーが10円で、いちごフロートなどが50円程度の時代だと120円は少し高い。
だがそれだからこそ人気だとも言えた。
「宝石箱だから高いのは仕方ないわよね」
さらにキャンペーンとして、実際の宝石などの抽選プレゼントも行われているのだから、女の子にはたまらない。
「でもたしかに綺麗で美味しいよね」
「うん、綺麗で美味しいのよね」
「僕はおっぱいアイスのほうがいいけどな」
雅人はそういって宝石箱の脇にあるおっぱいアイスを手にとった。
これはこれでたしかに美味しいものではある。
「箱と蓋も綺麗だからちゃんととっておいてるわ」
「そうなんだぁ」
結局博はつられて宝石箱のメロンを買い、弥生はストロベリーを買った。
「エメラルドとルビーね」
「ああ、なるほど、たしかにそうかも」
「ちぇ、ひろくんのうらぎりものー」
「ええー」
「キラキラしててきれいよねー」
弥生は嬉しそうにそれをたべ、博も同じようにたべた。
「アイスの容器もらってもいい?」
弥生はたべ終わったアイスの容器をもらえないか博に聞く。
「うん、別にいいよ」
こうやって女の子は宝石箱の箱と蓋を大事にとっておいたのだ。




