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千歳の少年魔導士は再び勇者を呼び寄せる  作者: 千秋 颯
第一章 二人目の勇者と赤髪の剣士
2/9

「僕はショタじゃない、魔法使いだ‼︎」

 墓のある場所から南西の方角へ進むと五分ほどで何十年もほったらかしにしてきた僕の家の前に出た。

 家は木製で、本来ならば腐っていてもおかしくないが魔力の消費が少なくなおかつ木が腐らない程度に魔法を施してあるため、中に入っても床が抜けるなどというハプニングは起こらないはずだ。

 僕が家の戸を開けるとほこりが舞う。

「うっ、げほっ……」

 あまりのほこりっぽさにむせ返り、僕は慌ててローブの襟で口元を覆った。

 朝日は昇ってきたといっても森の中は木漏れ日が漏れるくらいであり、さらにこの家に部屋を照らすような魔法道具はない。

「『(ラス)』」

 仕方なく杖を一振りして一番簡単な光魔法を使う。

 杖の先を前に傾けると僕の正面を光が照らした。

 僕は部屋の端にある本棚に手をかけて横にずらす。

 数十冊入っていると思わせていた本棚は片手でも動かせられるほど軽かった。

 本棚の裏からは地下へと続く階段が現れる。

 僕は誤って足を滑らせないように慎重にその階段をおりた。


*****


 階段をおりきると、数メロ先にチェーンと鍵でドアノブの固定されている扉がある。

 僕は解除魔法を使ってそれを外すと中へ入った。

 中の部屋の形は一辺が五十メロほどの正方形で、墓にあった魔法陣よりも更に複雑で大きな魔法陣が白いチョークで地面に描かれている。

 僕はローブの裏から小型ナイフを取って左手首を軽く切り込んだ。

 少し痛くて顔をしかめたけれど、それだけ。

 昔のあの痛みに比べたらこんなのどうってことはない。

 その血を僕は魔法陣の上に落とす。

 そして右手で強く杖を握って叫んだ。

「『闇ある世界の黒さをも飲み込む光の源よ、この世界に平和をもたらす光の神々の加護ある勇者よ、その使命背負う我大魔法使いのルカのもとへ姿を現したまえ』!!」

 ずいぶん昔に一度だけ唱えたことのある呪文を僕が口にすると、魔法陣から風が起こり、目もくらむほどの光を放つ。

 僕はその光から反射的に片腕で目をかばい、目を細めながら魔法陣の中心を見つめた。

 しかし更に光は眩しいものへと変わって、僕は目を瞑る。

 やがてその光はどんどん眩しさをなくし、僕が目を開けたころには魔法陣の中心に一人の人間が立っていた。

 魔法で呼び出したため勇者で間違いはないだろう。

 完全に光と風が収まるとその姿がはっきりと見えるようになる。

 だが僕は、その姿を見て愕然とした。

 服は白い生地に紺色の襟といった長袖。

 スッと通った鼻筋に軽く赤みの差した頬。

 そして長く茶色い髪の毛を一つに後ろで縛っていて、身長は大体一六〇センメロくらい。年は大体一五、六歳。

 勇者は長いまつげを伏せているが、こちら側の世界ではおそらく誰もが見とれる美貌の持ち主だろう。

 だがしかし、問題なのはそこではない。

 短いスカート、胸についた大きな赤いリボン、短いスカート……。

 ……適度に膨らんだ胸。

 それが勇者の性別を決定づけていた。

「おっ……女……!?」

 僕が召喚した二人目の勇者は戦闘なんて言葉とは無縁そうな女の子だったのだ。

「……ん」

 僕が思わず呟くと勇者は睫毛を振るわせてゆっくりと目を開ける。

 そして驚いたように周りを見回す。

「え? ……え!?」

「……」

 僕は勇者の召喚に失敗してしまったのだろうか。

 一瞬そんなことも考えたが、僕は召喚に失敗したとき、どんなことが起こるのかも知っている。

 ならば本当に彼女が勇者なのだろう。

 少々……いや、随分と力不足な気がしてならないが召喚してしまった以上は彼女に頑張ってもらうしかない……。

 勇者召喚の魔法のせいで消費してしまった魔力の底を感じながらも僕は彼女に話しかける。

「勇者」

「……ん?」

 混乱していた勇者は僕の姿を両目にとらえて少しの間の後に僕に抱き着いてきた。

「可愛いー! え、何この子。超可愛いショタ!!」

「ちょ、あのっ……」

 僕の身長はせいぜい一四〇センメロだ。

 顔が完璧に勇者の体に埋まってしまって息ができない。

「ふぉむふぉふぉ(『トニトル』)!!」

 息苦しくなった僕は杖を勇者に向かって振った。

 すると杖から光線が出て、勇者を襲う。

 小さな雷を出した瞬間、僕は自分が犯した失態に気づいた。

「うぎゃあああああ!!」

「うわわわわわ!?」

 しかしもう遅い。

 雷は勇者を襲い、更に勇者を通って僕をも襲ったのだ。

 気絶するほどの強さではなかったものの、体中が痺れてしまうというトラブルが発生した。

 だが、勇者の方は僕から一歩離れて地面に座り込む。

「なんなのぉ……」

「勝手に抱き着かないで。あと……」

 僕は痺れる右手を何とか持ち上げ、杖で床を突く。

「僕はショタじゃない、魔法使いだ‼︎」

一話ずつの文字数はもう少し増やしていきたいです。


シリアスはやはり続かなかった……(;´∀`)

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