ニートの王子様
初投稿です。筆の進みは遅いですがよろしくお願い致します。
「スー・・・ハー・・・」
愛猫のみっちゃんを仰向けにして顔を埋めている。可愛い匂いがする・・。
誰が変態だって?誰でもやるだろ?これくらい。
俺は寝る前の至福の時間を過ごしていた。
何度かみっちゃんが逃げようとするのを捕まえては仰向けにし、繰り返し匂いを嗅いでいたら日付が変わっていた。
「明日は朝早いんだったな。そろそろ寝なきゃ起きれなくなる。」
そう思い俺はみっちゃんにおやすみのキスをした。
顔を近づけるとみっちゃんは右手を前に突き出してきた。ハイタッチか!みっちゃんはさわやかスポーティ系だな!
みっちゃんとハイタッチを交わすと俺はベッドのある寝室へ移動した。
寝室に入るとダックスフンドのチャッピーと秋田犬のケンタが「遅いよー!!」と言わんばかりに突撃してきた。
二人と共に布団に入り電気を消す。みっちゃんとも一緒に寝たいのだが、彼女はたまーにしかベッドに来てくれない。
俺が一人でいる時なんかは甘えてくれるんだけど、他の子がいると「私は甘えたりしないのよ!」みたいな顔をして離れてしまう。
そんなところも彼女の良いところだと思い、思わず頬が緩んでしまう。
俺は佐伯王子、30歳。時代を先取りしたキラキラネームのナイスガイ。
キラキラネームでもないって??そんな事は無い。王子だったらまだ解るよ??王子だよ??
子宝に恵まれなかった両親にやっと出来た子供だから、名付けの時に盛り上がりすぎたらしい。
可愛かったのかもしれないが、そんな王子様も今では30歳。お腹はポッコリ、おでこも広くなってきた。
可愛さの欠片も残っちゃいない。俺を見て笑顔を向けてくれるのは一緒に暮らす動物達だけさ。
仕事は何してるかって?プリンスの名の通り甘やかされて育って来た為、今でも自宅警備員をしている。
ある意味名前の通りに育ったと言えるだろう。
ちなみに俺には弟と妹がいる。健吾と里美だ。二人はキチンとした人生を送り、今では医者と弁護士になっている。
何だこの差は。と自己嫌悪と嫉妬に苦しみながら今日も俺は両腕に感じる犬達の体温を感じながら夢の中に落ちていった。