トイレ
「ねぇアミーラさん。こ、この辺りにトイレを借りれそうな家とかかな?」
お昼に頂いた牛の生乳が直撃したのだろうか。
作治は急な腹痛を感じていた。先ほどより大腸の辺りがローリングサンダー状態である。
「どうしたサク。顔色が悪いではないか」
一方のアミーラと言えば普段とあまり変わる様子はない。
「ああァァァアア、アミーラさんは平気なのおおお?」
「ふむ。ニホン人は胃腸の弱い種族らしいのう。これだから三等民族は。どうでもよいが荷台の上でぶちまけるでないぞ。そこは商品を載せる場所であって、サク専用の移動式トイレではないのだからな」
「そんなこといわれれれましてええもおおお」
作治は白骨死体の乗った荷台の上でのたうち回る。
「仕方ないの。ではあそこの林まで我慢するがよい」
一キロくらい先だろうか。麦畑の真ん中に木々がまばらにある場所がある。あそこにトイレがあるのだろうか。
ならば今少し。今少しだけ我慢しよう。そう思い作治は耐える。
若干の茂みがある雑木林に到着した。
「う~トイレう~トイレ~」
そんなわけで今トイレを探して雑木林を走り回る僕はごく普通のさいたま市の高校生。
強いて特徴をあげるとすればパスポートなしで日本国外にいて、何故か自分より年下の女の子に使用人として働かせているってことかな。
「って、トイレどこなのおおおおおお!!!!」
木と草。その向こうにあるのは今まで来た道と同じ麦畑があるだけだ。
トイレを借りれそうな家などありはしない。
「何を彷徨う魔法学科の学生のような行動をしておるのだ。こっちだ」
「ふ、普通がっかだ・・・。と、トイレは、トイレはどこなああの??!!」
両足を摺り寄せ、ふらつきながらもアミーラの声がする方に作治は歩いていく。
「ほれここじゃここでするがよい」
「え?」
そこには幼稚園児が砂場で使うようなシャベルを持ったアミーラが立っていた。
彼女がそのシャベルで示す地面には、小さな穴とそれを掘り返したらしき土山があった。
「なにこれ」
「トイレに決まっておろう」
アミーラは恥ずかしげもなく言ってのけた。
「街から街。街と村を繋ぐ駅馬車にはたくさんの旅客が乗っておる。それらは時には屋根の上にまで客を乗せる事もあるのだ。そんな馬車が街道を移動中、トイレを借りれるような建物に寄れると思うか?」
「えっ、それは?!」
「よいか。長旅をするのならば野外排泄は基本だ。魔王討伐の正規遠征軍が毎年のように志願兵を集めておるが、訓練初日まず何をやらせるとおもう?」
「それってまさか・・・」
「スコップを持たせ、穴を掘らせ、そこでクソをする。それが最初の訓練だ!そもそも魔王殿ヒラヌマまでは歩いて半年以上かかるのだから外トイレができて当たり前なのだ。できぬ奴は街の警備兵にもならんわ!!開拓地で畑の開墾をしているのがよほどいいに決まっておろう!!!」
そういうとその場にシャベルをおき、アミーラは作治から離れていく。
「どこ行くの?」
「ニホン人はデリカシーがないらしいな。これだから三等民族は困る。それとも妾に見てほしいのか。これからお主は用便を済ますのであろうが」
やむなく作治は麦畑の中の小さな木立の中に、地面に開けられたさらにそのまた小さな穴の前でズボンを降ろし始めた。
「おお。そうだった。そうだった。一つ大切なことを言い忘れておったぞ」
「うおっ、半分でかかってるんだぞ!!???」
「この辺りにはいないと思うのだが、野生の熊だの、狼だのと言った類は縄張り意識というのが大変高くてのう」
「それがどうした?!こっちはそれどころじゃないんだぞ?!!」
「マーキングというのを知っておるか?街中で犬がクソだの小便だのをする行為なのだが、あれは自分の臭いを漂わせることで、ここは俺の縄張りだと主張しておるらしいなのだ。つまり自分の臭いがするもの以外が置かれたら、獣達は縄張りが荒らされたと思ってケツに噛みついてくるわけだな。ああ、すまんの。どうでもよい話をしてしまった。どうぞ用を足してくれ」
作治は小さなシャベルをしっかり握ることにした。
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あなたはコンピュータRPGで遊んだことはあるだろうか。私はある。
もしあるのならば、1時間ほどゲームで遊んでこのように感じたことはないだろうか?
「そろそろトイレに行きたいなぁ」
ちなみに女性が「お花を摘みに行きます」と仰ることがあるが、それはトイレに行くという意味の隠語である。
まぁ「ネトゲ世界でデスゲーム」なら2年間トイレ行かなくても大丈夫なんだろう。
え?現実世界の体?さぁね。病院でオムツでもして排泄の面倒をしてくれているんじゃないのかな。
大人用紙オムツは1ヶ月辺り600円。2年で一万四千四百円。6000人分で8640万円。あ、紙オムツ代だけでベッド代とかその他医療費は計算しないよ。それにしても誰が負担してくれるんだろう?
話を中世ヨーロッパ風世界に戻そう。製紙技術の関係で、この世界にはトイレットペーパーが存在しない。
じゃあどうやってお尻をふくのか。
貴族なら高~い絹のハンカチを使い捨てにしてお尻を拭くようなこともあるのかもしれない。
やはり手で拭いて、その手を水で洗う。というのが筆頭にくる。砂漠の民なら砂で拭くことが可能だろう。
多少トイレ文化の発達した民族なら木のヘラでお尻の残留物を除去するらしい。
東日本大震災の被災者達が困ったもの。食料、衣料品、暖房用の燃料、住居、そしてトイレがある。
上下水道が停止したので、当然ながら被災者は野外で排泄を余儀なくされた。
重要なのはここから先で、野外での排泄を行う際には河川から離れた場所、少なくとも10メートル以上離れた土壌に位置に排泄物を埋葬する必要があるという事である。もちろん用を足した後は土をかぶせる。
見た目が不愉快だから、というのもあるが、それ以上に問題なのは環境保護の点から考えて、水質を汚染してはならないということだ。
アメリカ・ヨーロッパ・アジアなどの多くの河川は鞭毛蟲で汚染され、生水では飲めない。浄水器の類が必須である。
汚染源はほぼ間違いなく人間だと思われる。
鞭毛蟲は経口感染で七日から十日で爆発的な下痢に見舞われる。一ヶ月から二ヶ月で自然完治する。
なに?河川の汚染など気にならない?水道のない地域では、その川の水を飲む必要があるが、それでもかまわんかね?