はじまり
問題:水分95パーセント以上のスライムを速やかに駆除したい。適切な対処方法を述べよ。ただし魔法は使えない状況とする。
模範解答は最下段。
「つまり法律が変わったのだ」
屋内の片づけをしていた作治に、アミーラは説明した。
「元々このイスカンドリアの街には空き家が結構あってな。だが今年から空き家に高い税金にかかるようになったのだ」
「なんで?」
作治は尋ねる。
「やれやれ。そんな事もわからぬとは所詮ニホン人は三等民族だな。では妾が説明してしんぜよう。サク、お主の故郷であるサイタマのとかいう街。繁華街に誰も住んでいない家とか、使われていない店舗とかないか?」
「あ、けっこうあるね」
「そういう家屋に壁に落書きしたり、窓をぶち破って中で酒盛りする若者とかおらなんだか?」
「いるよ」
さいたま市に限らず、新宿でも大阪西成区でもそんな感じだ。
「そういう不貞の輩がゴミを捨てたり、火付けをしたり、盗みや強姦をしたりするようになるのだ」
十二歳くらいの女の子が口にする言葉にしては不適切な発言が混じっていたような気がするが、まぁ気にしない事にしよう。
「空き家を所持している土地の地主に高い税金をかけるのだ。すると地主は借主を見つけるか、空き家を取り壊すしかなくなる。すると街の治安がよくなる。同時に市の税収も上がるのだ。わかったか?」
「よくわからないです」
「これだからニホン人は。正しい税金の取り方と内政の仕方もわからぬとはな。大方、『なぁに。困ったら魔法で何でも解決してしまえばいいさ。HAHAHAHA』とでも思っておるのであろう」
「いや思ってないですが」
「で、この空き家の建っている土地はどうも妾の母が所有しているものらしい。人が住んでおらねば高い税金を払わねばならぬ。ということで妾が住むことになった」
「それで、どうしてアミーラさんが店長で、僕が店員として働くことになるんですか?」
「それも法律だ。妾はこの国で産まれたし、生後一年以内に出生届けが役所に提出されたゆえ、この国の市民権がある。が、サクよ。お主はニホン人だな?」
「そうだけど。それがなにか?」
「ニホン人はこのイスカンドリアでは外国人だ。不法移民の労働者は犯罪の温床になるゆえ厳しく規制されておる」
「日本人はそんなことしないぞ!」
「妾もそう思う。だが中には例外もある。『アイムザパニーズ。ニホンジンデーズ』と連呼する窃盗団の一味が依然国中を荒らしまわって問題になったことがあったのだ。それ以後法律を厳しくせざるおえなくなったのだ」
「アイムザパ・・・?」
「首領の名は、キノシタカネオとか言ったかのう。捕えられたとたん、『ワタシノニホンジンジャアリマセーン』とか言っておったが。まぁニホン人であろうとなかろうと盗っ人は盗っ人であろう?」
「木下金・・・あっ」
作治はその名前の響きに思い当たる節があった。間違いなく、あの連中だろう。
「魔術協会に忍び込んで貴重な魔術書を破損したり、教会に押し入って価値ある神像を破壊したり、宝飾店に押し入って宝石だのサンゴだのを盗んだりしてのう。それはそれは酷いありさまだったのだ」
「スイマセン。スイマセン。それ間違いなくウチの近所に住んでる連中ですわ」
作治は両手をつき、地に頭をつき謝罪する。まさかこんな異邦の地にまで迷惑をかける連中だったとは。
「そういうことで正規の労働許可証を持ったもの、身元引受人がいる者などしかこのイスカンドリアの街の中で働くことは許されぬのだ。役所に届け状に引受人が妾となっておるから、妾から百メートル離れたら豚箱にぶち込まれてもその場で射殺されても文句は言えぬからな。ゆえに妾の店で働かないとお主は檻の中だ。それとも今すぐニホンに帰るか?」
その問いに、自分の半分くらいの背丈の、十二歳くらいのフランドル衣装を着た少女に対してこう答えた。即答である。
「ぜひ働かせてください」
「うむ。よい返事ではないか。ニホン人が皆働き者というのは本当らしいのう」
回答例:ナトリウム結晶体を投入する。