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第2話 出会う

潮風に吹かれていると気分がいい。乗っているバスの窓からは、陽光を受け海が輝いて見える。俺は今、バスに乗り海へ向かっていた。

優人「うおー!久々の海じゃーい!」

???「いやー家族で来れて良かったなあ」

???「優人ー、はしゃぎすぎるんじゃないわよ」

優人「分かってる!」

口ではそういったものの、内心かなりウキウキ状態だった。家族揃って遊ぶなんていつ振りだろうか。二人とも仕事であんまり時間が無いんだよな。

それにしても今日は暑い。何か飲まないと干からびてしまいそうだ。

(こらぁー?)

あ、そうだ、バッグの中にコーラ入ってたっけ。飲もう。

(こーらぁー!)

あれ、無いなあ、おかしい。さっき飲みかけのが、

???(うおーーい!)

あれ、お茶だったっけ。


???「こらああああああああ!」

優人「うおっ!…んあ?」


声に驚き目を覚ます。

…あ、部屋だ。

輝いている海は無く、眩しさを感じさせたのはカーテンから漏れる光だった。

それよりコーラどこいった。早く飲みたい。

???「もう!ゆーくんったら早く起きてよ!」

目の前では明るめのショートヘアーの女の子が一人、俺の顔を覗き込んでいる。

朝から女の子を拝めるなんて眼福…まあ、俺にとっては毎日のことなんだが。


彼女は東野あゆみ。俺が暮らしているこの家の同居人で、同学年の女の子である。まあ、正確に言うと彼女の家に俺が住まわせてもらっているのだ。

優人「おあ…あゆみ、コーラは?」

あゆみ「コーラ?どうしたの突然?」

優人「そりゃまあ、バッグからコーラ出そうと思ったらあゆみが出てきた」

あゆみ「なによそれ」

どうでもいいという顔である。まあどうでもいいか。


優人「ふぁぁぁ~」

寝ぼけた頭を起こそうと一度あくびをしたときにふと気づく。

身じろぎするたびに感じる肌の感触、熱、布団の上からでも分かる二つの慎ましやかな膨ら――何で俺抱きつかれてんの。ってか格好もおかしいし。ポップな下着にワイシャツのボタンはとめかけ、下はパンツだけで何も履いていない。ああ、各方面がやばい。

優人「あのさあ、あゆみさん?これ、何?」

あゆみ「これって?」

優人「だからさあ…なんでそんな格好…?」

あゆみが得意げな顔をした。

あゆみ「ふふん、嬉しいでしょ?」

優人「せめて服くらい着ろやい!」

毎日起きれてるのはあゆみのお陰ではあるんだけど、この起こされ方はホントに疲れる。

ちなみに昨日の朝は添い寝プレイだった。


あゆみ「そんなこと言ったってー、もう私たちキスも済ませた仲じゃない?」

優人「…い、いつの話だよ」

あゆみ「とぼけちゃってー。鮮明に覚えてるでしょ?」

あー、そうさ覚えてるさ。中学生の頃のことだ。

優人「…あれは事故だって」

あゆみ「とか言って顔赤いけど?」

不可抗力だ。ベットで女の子と密着しながらキスの話だ。赤くならない方が不健康だろ。いくら毎日暮らしてるって言っても年頃の男子には限度がある。このままじゃそろそろまずいな。色々。

俺は無理矢理身体を起こしてベッドから飛び降りた。

優人「あー、着替え着替えっと…」

あゆみ「あー逃げられたー!」

少しふくれっ面のあゆみが立ち上がり、俺の正面に立つ。しかし表情はすぐに晴れやかになった。

あ、今日の柄は水玉なのね。

あゆみ「朝ごはん準備しとくから、早く降りてきてね♪」

ばたん。

ウインクひとつ残して、部屋からあゆみが出て行った。台風一過。


あゆみとは中学からの仲。最初はクラスも違ったし接点がなかったけど、体育祭練習をきっかけに関わるようになった。さっきあゆみと話してたキスとか事故ってのは、その体育祭練習期間中にやっちまったものである。いくらハプニングとはいえ、関わってから全然経たない女の子にキスしちゃったのはまずかった。まあ、回避出来なかったんだけど。幸い、その時の状況が状況だけに他に見てる人もいなかった。だけど何故だかあゆみが俺にべたつくようになった。

それ以来、あゆみと遊んだり、お互いの家に行き来するようになって、家柄みの付き合いとかも多くなったんだ。


それから大体一年、中2の夏だった。ある事故があって、俺は両親を失った。頼れる人なんてものはいなくて、俺は一人になった。その時、身寄りの無くなった俺に手を差し伸べてくれたのが、今住んでるこの東野家。俺を息子同然に可愛がっていてくれたあゆみの父さん、英宏さんの一声で、俺はこの家で暮らすことになった。英宏さんは単身赴任でヨーロッパに行くことになったから、代わりに部屋を使って欲しい、とのことだった。この機会があったからこそ、今の俺がいるのかもしれない。こうして笑って生活出来るのも、この東野家無しでは考えられないことだ。



俺はバッグと学ランを手に階段を下りていく。コーヒーの匂いがする。それになんだか甘いような香ばしいような匂いもする。今日の弁当はいわしの蒲焼だろうな。

キッチンを見るとあゆみがせかせかと料理をしていた。いつの間にか制服をちゃんと着ている。スカートを翻し動き回る姿はいつ見ても華麗だ。

あゆみ「弁当はできてるよ。もうしまっちゃっていいから」

優人「おう、さんきゅー」


椅子に座ってしばらく携帯をいじっていると、朝ごはんが置かれた。ベーコンエッグにカフェオレ一杯。定番である。

優人「みなみさんは?」

あゆみ「まだ寝てる。昨日も遅かったみたい」

あゆみの母、みなみさんは繁華街でバーのママをやっているからいつも帰りが遅い。基本は夜の仕事だから、朝はゆっくりでいいみたいだけど。

それに対して俺は陸上部、あゆみは合唱部の朝練があるから、こうして朝ごはんはいつもあゆみが作ってくれているのだ。うん、今日もおいしい。


あゆみ「それより!ゆーくん?昨日は何してたの?」

優人「あ、ああ――」

そういえば、昨日はあの後家に真っ直ぐ帰ってシャワー浴びたのは覚えてるんだけど、その後全く覚えてないんだよな。練習後で腹減ってたはずなのに、飯も食べずに寝てしまったらしい。というかあの状況で寝られた俺凄い。昨日のこと、変な男に追われていた、なんてあゆみには言えない。あゆみに余計な心配させてもな。

優人「えっと…特訓?」

あゆみ「なんで私に聞くのよ」

優人「そう!特訓!練習終わった後のデザート的な?学校帰りに山走ってたらすっ転んで泥付いて、とりあえず帰ってシャワー浴びたらそのまま疲れて爆睡…zzz」

あゆみ「ゆーくん練習の後走る人じゃないよね」

ああ、誤魔化しきれてねえ。

あゆみ「もう、何あったか知らないけどさー。部屋に入ったら起こしても起きないし、制服は汚いし、おまけに私は一人寂しく夕飯食べるし…」

優人「ごめんごめんもうしないって」

あゆみ「ならいいけど。あんまり心配させないでよねー。あ、今日クラス発表だよね!ゆーくんと同じクラスかなあ?」

優人「どうだろ?」

どう転んでも休み時間とか毎回来るんだろうけどさ。

とか話している間にそろそろ家を出る時間だ。

優人「お、そろそろか。ごちそうさま」

あゆみ「おーんなじクラス!おーんなじクラス!」

聞いちゃいねえ。


今日から2年生。クラスも新しくなる。あゆみと同じクラスになるかなんて分からないが、まあ一年間楽しいクラスになってくれることを願うばかりだ。

朝ごはんを食べ終えた俺たちは荷物を手に取り出発した。



電車に乗って30分ほどで梅ノ町駅に着く。朝練のある高校生がちらほら。この生徒たちが向かっているのが俺たちの通う高校、梅沢高校。通称梅高である。

なんかこうして見ていると、昨日の俺は何だったのかと思えてくるな。恐らく誰かといるときには襲ってはこないとは思うが、こうしているときにも監視されているのだろうか。

あゆみ「優人は今日は朝練無いんだっけ?」

優人「そうな。まあ自主練でもしてる」

あゆみ「合唱部くればいいのにー」

優人「いや俺歌うまくないし、遠慮するわ」

あゆみが俺のことを「優人」と呼ぶときには、彼女の中では学校モードに入ったということだ。「ゆーくん」なんて呼びやしない。一応、そこはけじめをつけているらしい。家では俺にべったりだが、外では仲良い男女、あくまで友達ということにしたいそうだ。

俺もそこには敢えて突っ込まないようにしている。

あゆみ「じゃあ、私こっちだから」

目の前は文化棟。ここには美術室や調理室、あゆみが活動する音楽室など、文化系の施設が集約している。俺が向かうのは陸上部部室だから、ここで毎朝別れることになる。

優人「おう。またな」


さてと、部室で着替えて朝練するか。

???「おお?朝からまたまたラブラブしてることじゃん」

優人「そんな都合よく行くかよ。友達の壁は高いぜ?」

???「東西統一したんじゃないの?」

優人「俺ハンマー持ってないし」

こいつは石島雅也。陸上部の仲間で、専門は長距離。部で一番仲が良いのは雅也で、まあいつも馬鹿やってる友達だ。

雅也「そんなん蹴りでドッガーンとやっちまえばイチコロよ!」

優人「あゆみの壁は厚いぞ?かまぼこくらいある」

雅也「すげえ簡単に穴開きそうだな」

あゆみからは好かれてるんだろうけど、あからさますぎるんだよな。たぶん女友達の感覚でしか見られていない気がする。あゆみは学校ではしっかりしてるし、顔も整ってるからけっこうモテる。故に、俺といっしょにいることで男から寄ってこられずに済むし、それでバリア張ってるんじゃないかと思う。まあ俺としてはモテる女子と一緒にいられるから鼻高いし。

優人「雅也も自主練?」

雅也「そ。動かさないと体だるいし」

優人「一緒にジョグしねえ?」

雅也「あらあら、女の子の話ですかい?付き合いますぜ?」

優人「ふへへ。じゃあ今日は40分コースな」



朝練が終わってから、中庭で一人ココアを飲む。ゲームしながらとか堪らないね。何やってるかって?そりゃもちろんインベーダーゲームだろ。

あゆみ「優人ー!お待たせっ!」

優人「おー来た…」

シュドカーン

あ、終わった。俺の15分が崩れ落ちた。

あゆみ「…何?せっかく私が来たのに悲しそうにしてさあー」

優人「いや…何でもない、うん、何でもないんだ…」

ちなみにこのステージ勝ってれば俺新記録だったとか言わないぜ。


あゆみと合流して教室棟へ向かう。入口では本日のお目当て、クラス発表の紙が張り出されていた。自分のクラスを確認すべく、周りは生徒で溢れている。

あゆみ「優人?見えるー?」

あゆみはけっこう背が低いので、背伸びしても紙を見ることが出来ない。なんか笑えるな。これを言ったら怒られるから止めよう。

さてと、俺の名前は、っと。あったあった。3組だ。すぐ下にはあゆみの名前がある。早川で東野だから見つけやすい。

優人「お!あったあった!3組!俺ら一緒じゃん!」

あゆみ「おおお!やったあー!いえーい!」

とりあえずハイタッチをして喜ぶ。良かった。これで一年間お互い安泰だ。

そういえばもう一つ気になることがあった。二ヶ月前くらいに校庭から見えた教室の…

雅也「あの子見つかったか?って、名前知らないんだっけか」

あゆみ「あ、石島君じゃん」

優人「うおっ雅也か。ってかお前何組?」

雅也「5組ー。優人さんと離れるなんて私、心が痛くて耐えられませんわ!」

優人「何言ってるんだい。俺の心はいつだってお前の心にあるだろうが」

雅也「何ってこと!優人さんったら!ぽっ」

あゆみ「…あー。ああ。うん。」

そう、名前は知らない。でも教室の窓から顔を出していたあの横顔が何とも――

回想しようとしたところでチャイムが遮る。

あゆみ「予鈴!そろそろ行かなきゃだね」

雅也「お、じゃあまた練習でなー!」

優人「またなー!」

これから始業式があって、後はクラスでのホームルームとかで今日は終わる。入学式は明日だから、今日はまだ新入生の姿は無い。さて、急がないと。



優人「にしても、何で始業式とかってこんな話長いの?」

あゆみ「仕方ないでしょ?始業式なんだから」

優人「よく分かんねえー」

始業式が終わってから、俺たちはクラスで待機していた。出席番号順の席で、俺の後ろにはあゆみがいる。始業式といえばどこの学校でもそうだと思うが、やっぱりあの話って疲れるんだよ。話が長いから咳をしたり倒れる人が続出だ。まあ、今日は咳の連鎖がきよしこの夜のリズムだったからいいや。

先生「はーいみんな席ついて下さい」

お、男の先生だ。名前は確か、

先生「担任の西仁志です。まあ一年間ということになりますね」

そうそう、にしひとしさん。でもありゃにしにしだよな。

先生「初めに自己紹介だけしてもらって、そこから係など決める、ということになりますね。ではいきなりですが、出席番号順に浅田さんからということになりますね」

早速自己紹介タイムだ。と、後ろから突っつかれる。あゆみだ。

あゆみ「なんか楽しみだね。あー私何って言おうかなあー?」

優人「そりゃ胸の大きさははBカッ痛い痛い痛い!」

思いっきり脇腹をつねられた。悪いのは私です。

あゆみ「もう。ゆーくんのバカ」

そしてこの反動が明日の朝にどう響くかが怖い。


自己紹介は順調に進んでいく。このクラスはなかなか面白そうだ。割と当たりのクラスだと思う。俺の番まではまだまだだな。

先生「はい、次、佐々岡さんということになりますね」

佐々岡「はい」

優人「――あっ」

間違いない。二ヶ月前くらい、校庭で練習してる時だった。あの子は教室の窓から外を眺めていた。そんな光景ありふれているのに、何故か目が離せなかった。こうして近くで見るとやっぱり綺麗な顔立ちをしている。もちろん、そういうのも含めてなんだが、あの日目が離せなかったのはそれだけじゃない。どこか悲しそうで、何かを堪えてるような、そんな感じに見えた。女の子は一つ息をすると、控えめだけどしっかりとした声で話した。


文音「佐々岡文音です。よろしくお願いします。」

だいぶ間空けてしまいました。ちょっと私の都合で時間が取れなくて;;

一気に書いたので誤字とかミスとかありそうで怖いですが上げます笑

話自体も長くなりました。

読んでいただけると嬉しいです!

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