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『私』というイキモノ

ほんとに読む?

暗いと思いますよ?

 私は恋をする。



 そして愛する。






 恋をして




 愛して




 愛おしくて





 そう


















 死にたくなる。


















 小さな頃の記憶。

 薄暗い部屋の中、目覚めれば一人。

 泣きわめいても何もない。

 驚いて、寂しくて、悲しくて、ただ泣く。

 そして泣き疲れて眠る。


 保育所の隅で輪に入れずぼうっとしてる。


 誰もいない保育所の部屋で暗くなっていく空を見上げる。



 仲良くできる?



 一緒に遊べる?



 できないよ。


 お友達なんか上手につくれない。


 差し伸べられる手に縋る。


 そして知る。





 一番、痛いこと。


 信じていた相手に手を払われることの痛さを。



 幼い思考で考える。



 泣いていることの無力さと意味の無さ。


 だから何とかしようとして躓く。


 自分の唾液が発作的に飲み込めなくなったり、昨日のことを覚えてなかったり。


 ぐるぐるとつんのめっていく。


 こわいということがわからなくなっていく。



 周りに合わせようとして空回る。

 目の前であの子が喋ってるのに音が聞こえない。

 言葉が理解できない。

 私が人をはじめて愛した日のことは覚えていない。

 だって気がついたら愛していた。


 喧嘩したり、文句を言ってても愛している。


 愛することをやめることは私にははできない。


『おかあさん』



 はじめて焦がれたのは保育所の時、気まぐれに優しくされて嬉しくなった。


 そして私は自分を殺して、相手へ依存する。

 差し出された手に縋る。

 棄てられないよう自分を殺す。

 それもうまくできない。




 中学の時にはできない自分が完成してた。


 保育所のお友達は『イジメテテゴメン』って言ってたらしい。


 私はそんなこと知らなかった。

 わかってなかった。



 物理的な攻撃は痛い。

 小さな頃はじゃれあいにまぎれたり遠巻きにされたり。

 中学の頃には楽になった。

 だって相手に興味を持たなければ気がつかずに済むと気がついたから。


 それでも寂しい心は荒んでたんだ。


 ああ。


 だからこそ、痛かったのが『先生』の他愛無い悪意なんかない言葉だったんだ。


 私は先生が好きだった。


 どの先生も好きだったんだ。


 だから、私の一生懸命が先生の取るに足らないもので、からかうように言っただけとわかる言葉が痛かった。


 上手にできないから。

 頑張るだけではダメだった。


 その先生の言葉の後を小さく笑う同じクラスの知らない子達。


 何もできないから阻害されるのかと、努力してみる。


 頑張ってみたんだ。


 一年生の時、周回遅れで走っていたのが、三年生の時には一番になれた時だってあったよ。


 誰もすごいとは言ってくれなかったけどね。


 向けられた眼差しは『むきになってバカみたい』って言われてる気分だった。


 どんどん、何も感じなくなっていった。




 だから。

 そんなものだと思ってた。



 それが普通だった。


 がんばるのは無駄なんだ。


 体が膿む。


 振り返れるくらい時間のたった今ならわかる。




 寂しくて一人がいやで弱った心が体すら傷つけていた。


 ふつふつとクセになっていた。毛髪を抜くこと。


 あのころはどこかを見ることが耐えられなかった。


 たまぁに、

 たまに。


 優しくされる。

 するとすごくすごく嬉しくて、嫌なことを忘れて希望を抱いてしまう。



 ねぇ。


 好きになって大丈夫?


 あなたに恋してもいいかなぁ?


 心に灯る淡い恋の光りは春の日の雪のように溶けてしまう。



 私は恋をすることも愛を注ぐことも手放せない。



 あなたが恋しくて愛おしいから、私はあなたのどこにも残らないでいたい。


 あなたに浅ましくも手を伸ばして消えない痕を残したい。


 私を知らないでいて欲しい。

 私を知り尽くして欲しい。



 記憶に残らないでいい。

 どうか忘れないで。



 何かを信じれるとは思えないのに。

 それなのに恋をする。

 報われず、裏切られるだけなのに、恋をはじめる事をやめられない。


 ああ、私はどうしてこんなに浅ましいいきものなんだろう。




 どうか、私の恋に誰も気がつかないで。


読んで頂きありがとうございました。

主人公の『私』紹介回でした。

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