3クォーター:試合終了
日記を朗読する至の声が震える。
「い、いた…ると陽一が、しっかりするまで…俺まだまだ、死んじゃ…いられねぇな……!」
最後の行を読み終わったとたん、至は片手を顔に覆いかぶせた。
美奈たちは涙を浮かべ、陽一はうつむいて分からなかったが拳を震わせていた。すると、陽一がいきなり至の腕をつかんだ。
「……」
「よう…いち…?」
「俺さ、誠のあの手紙見たとき、何でだろうって…どうして俺たちに何も書いてないんだって。どうして…どうして俺たちの事どうでもいいみたいな死に方すんだって……そう思ってた」
静かな中庭に、陽一の声が響く。
「でも、違ったんだな…何で今まで気づかなかったんだろうな……」
その瞬間、至は我慢しきれなくなったかのように涙を流した。つかんでいる陽一の腕を、逆の手でつかんで、唇をかみ締めて泣いた。
その時、至の耳に聞こえていたらしい。
『何、泣きべそかいてんだよ』
そうやって、冗談っぽく笑う誠の声が――
それから数日が経った。至はいつも通り会社に出勤し、目をこすりながらパソコンに向かっている。隣の机には北島がいた。
「なぁ北島」
「ん?」
それはいつも通りの光景。言葉を交わしながらも仕事からは手を離さない。
「今日の昼飯何?」
「は? そこら辺で食べてくるつもりだけど?」
「じゃぁ一緒に来ないか? おすすめの店があるんだ」
北島の手が止まった。そして目線の先は至の姿。北島の目に映る至は、爽やかだった。
「お前どうかしたのか?」
「何が?」
「雰囲気が変わった」
「…そうかもな」
北島の目が大きくなった。至はそんな北島を横目でちらりと見て苦笑した。
「素直な俺って気持ち悪いだろ」
「気持ち悪すぎだろ…」
そんな北島のその言葉に、至は苦笑した。
お昼に近づいてきた頃。
突然、単調な機械音が鳴り出した。パソコンではない、それはどう聞いても電話の受信音。
「あ、俺のだ」
「電話?」
「いや、メール」
メールなのに電話の呼び出し音とは趣味が悪い。その場にいた皆が思ったはずだ。
至はそんなこと気にもせずメールを確認した。
「……あいつ…」
どうしたんだ、北島がそう言うと、至は黙って携帯を北島に渡した。
不思議に思って北島が見ると、そこには一言書かれていた。
「何だこれ」
そんな北島に、至はにこやかに笑ってみせた。
『件名:あれから10年
試合終了!
陽一』
こんにちは。終わりましたぁ。どうでした?
ぜひ感想書いてくださると嬉しいです。
ぱっと思いついたのを書き綴ったのがこの小説で、私的にまとまりがなかったと思ってるんですが…皆さんどう思います?って聞くなって感じですね。
では、失礼いたします。