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言葉×コトバ

まずは、隗よりはじめよ。

 昼休み、大学ではたいていの学生がどこかへ行き先を持って行動している。

彼女と、彼氏と、友人と、付き合いと、さまざまである。

そんななか、サークルのたまり場へ行く人は多い。

何も、特に理由なくやってくる場合が多いが、私には自分には大切な理由があった。

 取手レナ。

彼女はいつも厳しい。

自分に対しても、他のメンバーに対しても。

でも、そんな彼女でもきっと、一瞬の隙を見せるはずだ。

一瞬の隙とは他ならない、隙なのである。


 近年、メール以上に便利なツールとして、フィールというサービスがある。

言ってしまえばテレパシーのようなもので、人間の個性情報を携帯端末が分析し、

それを各自が持つネットワーク上のキャラクターアカウントにフィードバックし、

その人が考えていることや、機嫌を伺うことができるのだ。

そして、公開設定によってはかなり深層まで知ることができることがウリである。


 そして、今回悪友の理科系の男に頼み込み、ジャンピング土下座までして手に入れたのが、

その公開制限を無視して閲覧が可能になる、いわばハッキングプログラムである。


 当然違法である。しかし、思えば22年、恋愛に法など存在しないことが分かった。

やることやればなんとかなる。そう信じ、今回の作戦を思いついた。

 作戦は単純である。

彼女の男性のタイプ、そして現在進行形でどんなタイプに気があるか?その情報を入手する。

そして、あとは自分がそれに合わせ、隙をついて告白し、あとはウハウハである。

我ながら完璧な作戦というわけである。

 そして今現在、彼女にアクセスしたところ、、

”おなかへったな”

空腹を訴えている。よし。昼食に誘えばいい!

”授業だるいな”

そっかそっか。じゃあ一緒に3限さぼってお茶しよう!!

”この先輩、マジでバカ(^0^)/”

(^0^)/がかわいいよ!(^0^)/が。

”でも、そういうバカなところ、いいな。”

は?バカだろ?バカが好きなのか?

”でもバカは嫌い。”

どっちですか?どっちよ?

”っていうか、あいつ今日来ないのかな?”

あいつ?だれだよー。だれだよ。マジで。

”なんか、いないといないでしずかでいいけど。”

ですよねー。さすが。

”でもなんかものたんないなー”

どっちだよ!どっちなの?ん?

”でもやっぱどーでもいーやwwww”

wwwwですか。wwww。

とりあえず、独りで反応しているとまわりからの視線が痛いので、サークルのたまり場へ行く。


その間にも依然として更新は続く。

”コーヒー飲もうかなー”

”熱いからアイスかな”

”今日は雨降るかな”


なんで”かな”ばっかりなんだろう。人間ってよくわからないな。


”私、かえろっかな”

ダメダメダメ―。帰っちゃダメ―。

猛ダッシュで、たまり場へ急ぐ。


たまり場では多くの構成員が集合していた。

そして彼女は、帰る準備をしている。

「お疲れさまでーす」

彼女の元気がいい声。あいつ、帰る時は元気がいい。

「あ、どーも。」

彼女と眼が合う。”あ、来た。”

「え?」

驚いた。人間の言葉と心理と、一緒に見ると驚くものだ。

ただの一言でも。驚く。

「それじゃー」

”変な人。”

彼女はすれ違い、反対へ歩いていく。

「変な人って・・・」

彼女の動きが止まる。

「・・・へ?今なんて?」

「い、いや、なんでも。はっはは」

慌てて笑ってごまかす。こういう時は笑うに限る。

「先輩、独りでごはんでも食べたらどうですか?」

彼女が後ろを向いたまま言う。

”どーせ独りでつまらない事ばっか考えて、キャーキャーしてたんでしょ。”

あれ?

何かおかしい。

”ぜーんぶ足跡ついてるんで、みえてますから”

「甲斐性なし」

彼女が歩いていく。なんで、バレてるとか、、、、

おもわず血の気が引いた。

なんてことをしてしまったんだ。


とっさに、

「す、すきなんだよ。ハッキングするくらいな!!」

叫んでしまった。

辺りにいた大学生は一斉にこっちを見る。

次の瞬間、眼をそらす奴、指さして笑う奴、ツイートする奴。

 彼女は歩みを止める。


「、、、は?ドン引きだわ」


オワタ、、、おわたー。はははー

そういえば先週読んだコラムに書いてあったよ。

今時、フィールを使わないで告白するなんてダサくて、

口頭で気持ちを伝えるなんてことをすればフられること間違いなしだって。

ははは。


自分はもうおしまいだと思い、独りでカップめんでも食べに行こうとした。

”先輩。”


あれ?これはレナのアカウント?


”ちょっとは度胸あるじゃないですか”


頭の中はもっと真っ白になる。


”お気に入りカフェがあるんです。先輩も3限が暇なら、行きましょう。場所はここです。”


フィールに地図が添付してある。


彼女は曲がり角を曲がり、もう見えない。


ちくしょう。これじゃあ、どっちがハッキングしてるのか、わかんねえじゃねえか。


”構造や方法じゃないんです。終わりよければ、すべて良し。”


急いで自分のフィールをログアウトして、レナの後を追った。



 二作目。感想など頂けたら嬉しいです。

悪いところは直したいのです。

mixiでもあっぷ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] キャンパスライフの一瞬にSFの世界が広がっていたのがとてもよかったです。 また、少し前のSF作品とは違い、現代のSFという感じがして楽しめました。 [一言] こんばんは。 拝読させていた…
[一言] 結構面白い! 意外なオチにびっくり!
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