ガンダム哲学 種アンチが抱いた疑問 シン編
種を見ていて思った。
色んな不思議の列挙。
シン中心のクローズアップ。
メタ的に主人公を奪われた以外でも、全体的に見てあまりに不憫すぎる。
●シン:廃坑の不思議
種死、ローエングリンゲートことガルナハン基地。
地形から侵攻方向が限られ、陽電子砲で迎撃される難攻不落の要塞として君臨。
この基地の攻略の為、提案された作戦が。
基地には現在、使用されてない狭い坑道が存在するので。
通常のMSでは通行不能だが、分離形態のインパルスで坑道を進行。
他が正面で陽動している隙に、裏まで周り挟撃する、というものだ。
遺棄されたので、真っ暗な廃坑の中を、接触しない様に飛行。
ニュートロンジャマーで、電波測量が行えず。
稼働中の基地の地下な為、赤外線も役に立たず。
坑道ならではの、不規則な風が吹き込む。
そんな悪条件だが、疑問がある。
もしそれが理由で困難なら。
インパルスのシルエット構想は、とっくに破綻している。
何せ戦場でリアルタイムに、合体を行うのだから。
ニュートロンジャマーが吹き荒れ。
そもそもジェットで飛ぶ、熱源の塊のチェストとレッグのフライヤー。
不規則な風どころか、攻撃や流れ弾が飛び交う。
そんなより酷い悪条件の中で、数センチでもズレたら。
大クラッシュ確実な空中換装を、ぶっつけ本番で行う以上。
廃坑道の中を、事前データ有で飛ぶ位、別に大変な訳がない。
というか空中制御は、OS側が面倒を見ている筈だ。
そうでないならシンは毎回の出撃で、アドリブ必須となる上。
まるで勝算のない作戦に、投入させられた事になる。
●シン:ステラの不思議
撃墜した敵MSのパイロットが、心通わせた少女だったと知ったシンは。
治療の為に艦内に連れ込み、医務室へ直行する。
「敵兵の艦内への搬送など誰が許可しました?」
「貴方のやったことは軍法第二条四項に違反!十一条六項に抵触!とてつもなく馬鹿げた重大な軍規違反なのよ?これで艦内に甚大な被害が出ていたらどうするつもりだったの!?」
後から艦長に詰められるシンだが、一応言い分ぐらいは成り立つ。
国際法上、負傷兵の救護は義務だ。
この時のステラは、頭部から出血し、うわ言を繰り返す状態だった。
軍医から「戦闘での外傷もかなりのもの」と言及されていて、緊急性が高かったと見做せる。
では、シンが全く無罪かというと、もちろんそんな事はない。
艦内、それも医務室となると、かなり機密性が高い。
そんなところに、敵兵をいきなり連れ込むなんて暴挙だ。
第一、臨検を済ませてないので、詐病や危険物の持ち込みもあり得た。
本来ならMSハンガー辺りで、許可を取り安全を確認した上で、治療に当たるべきだ。
冒頭に記した艦長の叱責には、あの狂犬めいた態度の目立つシンも。
不服そうながらも、反省の弁を述べていた程だ。
ちなみにこの質疑でシンが、ステラの事を戦争被害者の民間人と認識していたのがわかる。
MSのコクピットにいたのだから、理屈的にそれはもうありえないのだが。
どうも顔見知りの負傷という事で、混乱したまま咄嗟にやってしまったらしい。
※シンは戦争で家族を失った原体験の関係で、命に対してかなり過敏に反応してしまう
最終的にシンは、軍医の当直や歩哨達に暴行。
ステラを連れ出しMSに乗り、敵の元へ返してしまう。
その結果ステラは再びMSに乗せられて、都市に大被害を出した後死亡した。
●シン:国際法の不思議
情状酌量の余地はあっても、シンがだいぶ悪い。
……と、ここまでなら言えるのだが、先の説明は少し端折った部分がある。
ステラの人権が、明らかに無視されているのだ。
改造兵士であり専用の機械による、調整を必須としている都合上。
日に日に弱っていき遂には、延命措置の中断が検討されるのを、シンは偶然聞いてしまう。
結果ステラの延命は続けられるものの、その生かされている理由が、人道的な救護ではなく。
生きた検体として使用する為だと、艦長の口から告げられてしまう。
軍医も見舞いに来るシンの事を「なんであんなのに思い入れるんだか」と言い放ち、ステラを人間扱いしていない。
そもそも改造兵士が人間でないなら、遺伝子調整されたコーディネイターにも返ってくる。
レイの出生の秘密的にも、かなりデリケートな問題だ。
「どんな命でも、生きられるのなら生きたいだろう」
実際レイはシンの行動を察知して、自発的にステラの連れ出しに協力している。
※シンに借りを作る為の打算もあるとされるが、それはレイの本心である事の否定にならない
言うまでもないが、捕虜の虐待は国際法違反だ。
もし改造兵士が、戦略兵器級の影響力を持つなら。
ザフトの安全保障から来る、緊急避難的な措置として。
必要悪だと言えたが、そこまで緊急性がある様に見えない。
ここまで行くとおかしいのは、ザフト軍の規律の方になってくる。
当の上官である艦長が、積極的に加害に及ぼうとする状況で。
シンがステラを救おうとするなら、これ以外に方法がなかった。
国際法遵守と人道面において、シンの行動は賞賛されるべきものだし。
緊急性・必要性のない指示によって、戦争犯罪に加担させられそうになった以上。
不法な命令に対する拒絶という、正当な権利の行使は当然ともいえる。
「だからって、貴方のやったことが認められるわけではないわ。事実彼女は連合のエクステンデッドで、私達は彼女をジブラルタルへ連れて行くようにと司令部から命令を受けていたのよ?個人の勝手な思惑でそれに背くことは許されません!」
「地球軍だって酷いけど艦長達だって同じ」
というかあれだけ軍法を、スラスラと諳んじていた艦長が。
敵捕虜の検体扱いに、何の疑問も抱いていなかった以上。
国際法や戦時条約の類は、種世界で機能していない様だ。
※例:種で登場した時点で形骸化していたコルシカ条約
シンの罪状は、軍資産たるMSの私的利用が主で。
それ自体にも情状酌量の余地が、強く認められる。
●シン:結果論の不思議
連合に引き渡した条件は、戦いから遠ざける事の確約だった。
しかしステラは薬漬けにされ、多くの犠牲者を出し本人も死亡した。
連合を信じたシンが、甘いと責めるのは無理筋だ。
治療手段が連合にしかない為、他に方法はなかった。
悪いのはもちろん、約束を反故にした連合側であって。
シンがステラを返したせい、はただの結果論でしかない。
そもそも未来の可能性で、糾弾する事を認めてしまったら。
敵国の人間は将来的に、兵士となる可能性があるから、民間人を殺してもいい。
そんなジェノサイドの、擁護が成り立ってしまう。
それこそ本物のディストピア到来だ。
文明人の理屈ではない。
ステラの検体化についても、同様といえる。
改造兵士が戦略兵器級の、影響力があるなら。
安全保障の観点から緊急避難的に必要だった、と強弁も成り立つが。
劇中で確認できる能力は、そこまで劇的ではない。
この技術の応用が将来的に、連合兵士の能力平均を向上させる。
そんな懸念があったのだとしても、それを認めてしまえば。
それこそブルーコスモス系の、コーディネイター排除論を否定できなくなる。
●シン:劇場版の不思議
キラさんキラさんキラさん。
ワンコの様にキラを慕うシンが、劇場版では見られる。
だが少し待ってほしい。
何でそんな事になるんだと。
家族が死んだ戦闘の当事者で。
目の前でステラを殺して。
信じた未来を打ち砕いた存在だ。
シンが大人になって、キラにも事情があったと。
水に流した、までならいいが。
慕って付き従う、はおかしいだろ。
そう思って見ていると。
微妙に様子がおかしい。
開幕のアグネスの煽りにも、何も言い返さない。
シンのイメージなら、即食って掛かるか。
もしくは大人になったのなら、軽く流すところだろう。
しかしどちらでもなく、微妙な表情をするだけ。
それも最初は顎を引き、口を歪めるという、不服の表情なのはともかく。
直後に目を見開いて仰け反るという、不可解なリアクションをとる。
それ、驚いた時のリアクションじゃないか?
もっと不可解なのは、キラとアスランの喧嘩の仲裁に入った時だ。
この時の描写をよく見たら、間に入って斜線を遮ったからではなく。
キラが横に立ったシンに、明確に2発入れてる。
普通に考えて、慕っている相手だろうが何だろうが。
善意の介入なのに、落ち度もなく一方的に殴られて。
軽く流せる人間なんて、どこにも存在しない。
更には一言だって、謝りはしない。
コンパスでは私的な暴力が、常態化しているのかと、疑う様な光景だ。
流石に殴られた時は「ちくしょー!」と叫んで、仲間に止められていたが。
行動方針が決定した時には、もう笑顔になっている。
そしてその謎は、アコードとの戦いで明らかになる。
再びデスティニーに乗った事で、八面六臂の大活躍をするシンに。
アコードは得意の、精神干渉を実行するが。
シンの心からは、何も読み取る事ができない。
「思考が見えない!? コイツ考えていないのか!?」
最終手段として、キラすら打ち破った切り札。
トラウマを刺激して、前後不覚に陥らせようと、精神に入り込んだら。
中には悪霊化した巨大なステラが巣食っていて、侵入した相手を待ち構えていた。
「コイツの闇は深すぎる!」
……これ、シンの精神、異常を来してないか?
どうやらキラによって、大切なモノを奪われ続けたシンは。
心を閉ざして、自分を守る様になったらしい。
アコードが直接心を覗いた結果なので、筆者の邪推ではないだろう。
劇中の不可解な反応の数々は。
リアクションを予め、機械的に決めているのかもしれない。
キラを慕っている様に反応し、彼を否定されたらとりあえず怒る。
アグネスにも怒ろうとしたが、仲間でもあるので、適切な反応が分からなかった。
殴られるというプリミティブな怒りは、直ぐに沈静化する程度に情緒が退化している。
そう思うと何より泣けるのが、ルナの前だと元気な事だ。
ここまでの症状だと、それは虚勢とか空元気というものだろう。
考えて見れば当然だ。
家族、ステラ、未来、親友のレイを失い。
シンに残ったものは、もうルナしかないんだから。
種死劇中では、ステラを助けようしていたが。
半狂乱になって暴れるので、口から血が出る程殴られているが、それでも見放さない。
最終的に自らの立場が悪くなるのも顧みず、ステラの治療の為に逃した程だ。
インド洋の基地で、現地住民を逃すのもそうだが。
シンは本質的には、心優しい少年だ。
そもそも劇中で、狂犬的な振る舞いだったのも。
身寄りがなく、庇護を受けられない存在としては、妥当な防衛反応ではある。
※因みにオーブに居た頃は、文学少年だったらしい
劇中でルナと絡むと、鼻に付く位におどけているが。
これも心配をかけまいと、そういう反応を作っていると思えば。
その行動にも、理解が及ぶ様になる。
そんなシンにとって。
唯一の救いと言えるのは。
ステラの存在だろう。
心の中に現れたステラが、霊的な本人なのか、シンのイメージなのかはともかく。
前者なら、シンの献身は間違いなく伝わっていたし。
後者なら、ステラに尽くしたと本心から思えているのがわかる。
もしかして、シンはアニメ史上の主人公で。
テッカマンブレードより、酷い目に遭った。
非常に稀有な存在ではなかろうか。




