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5.初恋とニ度目の恋

凄いわ、さすが公爵家のお屋敷ね。

あまりに立派過ぎで、お家に帰りたくなって来ました。

本当にこの家の女主人になるの?やっぱり無理じゃないかしら。


「お帰りなさいませ、旦那様」

「彼女が私の伴侶となるミモザだ。

ミモザ、こいつは執事だが覚える必要はない」


これは紹介と言えるのでしょうか。いえ、言えません。


「私は貴方の家を守って下さっている使用人達に挨拶をすることが許されないのでしょうか」

「違うんだ!仮令こんな老人であっても君に名前を呼んで欲しくなくて!」

「ふふ、そんな軽口を言えてしまう程仲がよろしいのですね?意地悪をしないで紹介して下さいませ」


きっと子供の頃から仕えてくれているのでしょう。

フィザリス様の失礼な物言いにも臆さず笑っておられますもの。


「旦那様の負けでございますね?」

「……より多く愛した方が負けなんだ」


より多くというか1対9くらいに差がありますけど。ちなみに1は顔の良さです。家柄の良さ等は彼の性急過ぎる行いで相殺されております。


「ミモザ・クレイトンです。これからよろしくお願いしますね」

「ロテュスと申します。旦那様がお馬鹿なことを仕出かしたらすぐにお教え下さい。大奥様に言い付けますので」

「心強いですわ。でも、大丈夫です。フィザリス様は私を大切にして下さっておりますから」


ですよね?無体な真似はしないで下さいよ?


「もちろんだとも!」


………軽いわね。何だか不安だわ。


「さあ、部屋に行こう。お前は付いて来なくていいぞ」

「なりません。いくら婚約者とはいえ、未婚の男女を二人きりにはさせられません」


言ってやって下さい。さっきまで思いっきり二人きりでしたから!


私の微笑みに何かを悟ったのでしょう。


「……旦那様。なぜクレイトン様お一人しかいらしてないのですか?お付きの方は?」

「結婚するのだ。構わんだろう」

「構います!そういうことをなさると旦那様では無く、ご令嬢に傷が付くのですよ!?」


まあ、とっても常識人です。甘やかされて育ったわけではありませんのね?


「私は今すぐ婚姻届を出してもいい。なんなら今から「フィザリス様、私のお部屋に行くのではなかったのですか?諍いは苦手ですわ」


結婚話を蒸し返されるのは困ります。

スッとロテュスに視線を向ければ、言いたいことが分かったのか頭を下げて控えてくれました。


「ミモザ、すまなかった」

「大丈夫ですわ。案内して下さる?」

「ああ、行こうか」


当たり前ですが、外観だけでなく、内装も大変ご立派で。絵やら壺やらお値段を聞くのが怖いくらい素敵なものが品良く飾られております。


「フィザリス様はずっと王都にいらっしゃるのですか?」

「そうだな、領地にはあまり戻っていない。あちらは今は両親が住んでいるんだ」

「では、こちらにはお一人で?」

「一人といっても日中は王宮にいることが殆どだし、これからはミモザが共にいてくれる」


ですから1年後ですよ?せっかちさんには困ったものです。


「私は王都を出たことがないのです」

「では、今度旅行に行こうか」

「新婚旅行のことですね?楽しみですわ」

「……婚前旅行でもいいのだが」

「駄目ですよ、はしたない」

「駄目なのか!?」

「フィザリス様?すべてを先取りしてしまったら楽しみが減ってしまうでしょう?

お願いしたではありませんか。ゆっくりと恋をしましょう、と。

フィザリス様は女性とのお付き合いはたくさんされていて、色事含め慣れっこかもしれませんが?」

「なっ!慣れてなどいない!」

「だって、私は手を繋ぐだけでもドキドキと致しますのに、フィザリス様はどんどんと先に進もうとするでしょう?よほど女性に慣れておられるのだなと思っておりました」


これは本心です。だって私はすべてが初めてです。でも、二人も妻がいたフィザリス様は、アレもコレもすべて経験済みなのだと思うとちょっと面白くありません。


「……ミモザが……嫉妬?」


嬉しそうになさらないで。ちょっと違うから。

貴方はすべて経験済みだからと、初々しいあれこれをすっ飛ばして、即、色事に持ち込もうとするなと言いたいのですよ?


「ちゃんと私の初めてに付き合って下さいな。

お手紙嬉しかったです。こうしてお屋敷に招いて頂けたことだって。

でも、ご両親や使用人の皆にも挨拶出来ないのは寂しいですし、少し不安にもなります。

3回目だからと端折らないで。面倒がらず、ちゃんと初めの一歩から共に進んで欲しいです」


正直に言い過ぎかしら。でも、あまりに違う私達だもの。どれだけ考え方が違って、どれだけ立場が違うのかをまず理解しないと歩み寄ることも出来ません。


「……どうしよう」

「何がです?」

「より一層ミモザのことが好きになってしまった」


…………ん?


「私は気付かぬうちになんと失礼な真似をしていたのか。それなのに君は怒ることなく、こうして優しく諭してくれるなんて……」


え、そんなキラキラした目で見つめないで?

どうしてそんなに貴方はチョロいの?チョロチョロのチョロ子さんだわ。


「ミモザ。私は君が初恋だった。そして今、君に2度目の恋をしてしまったんだ」


まあ、なんと夢見がちな台詞なのでしょう。


「……ありがとうございます?」


それで私の気持ちは伝わったの?かしら?







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