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束縛強めの溺愛公爵とのんびり令嬢の恋愛(調教)物語  作者: ましろ


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3/18

3.お迎えの馬車は危険がいっぱい

本日はドキドキお宅訪問です。


迎えに来て下さった公爵家の馬車は本当に立派で……と喜んでいたら、まさかフィザリス様が登場されて思わず固まってしまいました。


あら?馬車を寄越すとは書いてありましたが、フィザリス様がいらっしゃるとは書いてありませんでしたよね?


「ミモザ!今日の君はまるで春の妖精のような愛らしさだ!」


どこかの劇団員かしら。と思えるほどのオーバーアクションですが、褒めていただけるのは嬉しいことです。


「ありがとうございます。フィザリス様もとてもお素敵ですわ」


これはお世辞では無く本当に格好いいのです。

この方はお顔に救われているわ。これで残念なお顔立ちでしたら大変なことになっていたと思います。

お芝居の様に大きな身振りで愛を語る残念さん。でもそれはそれで面白いかもしれません。


「どうした?楽しそうだね」

「素敵な1日になりそうだと思って」


つい、誤魔化すようにニッコリと微笑むと。


「……可愛い。今すぐ食べてしまいた「お父様!行って参りますね!」


最後までは言わせませんよ。勝手に捕食しようとなさらないで?

笑顔一つで食欲を刺激されるだなんて、チョロいというか怖いというか。私は無事に帰れるのでしょうか。


「…………気を付けて行っておいで。

公爵、どうか娘を(無事に帰れるよう)お願いします」

「もちろんです。私がしっかりと(この腕に抱き締めて)お守り致します」


何となく通じ合っていない気がしますが仕方がありません。


「ミモザ、手を」

「ありがとうございます」


馬車に乗る為のエスコートですわね?


そっと手を乗せる。まあ、大きな手ですわ。

と、うっかり気を抜いた私が悪かったのでしょうか。


ふわりっ


まあ、不思議。体が浮きました。


では無く。横抱きにされてしまいました。


「……フィザリス様?」

「では、子爵。ミモザは受け取った」


いや、いやいやいやいや。どこの人攫いですか?


人ひとり抱えているとは思えない身軽さで馬車に乗り込み、全員が呆然としているうちに馬車は走り出してしまいました。

私はそのままお膝の上。近い。近過ぎます。

お腹のあたりをがっしりホールドされていて逃げられそうにありません。


「フィザリス様、なぜこの様な体勢なのでしょうか?」

「馬車は揺れますのでどうぞ安心して身を任せて下さい」


………どの辺りに安心が?


束縛とはこの様なことを言うのですか。本当に腕の中に閉じ込められたようです。

侍女は置いてきぼりで狭い空間に二人きり。

会うのが2回目で抱き上げられお膝に乗せられるとは思いもしませんでした。


「ああ……ミモザはなんて柔らかくていい香りなんだ」


嗅がないで。それに柔らかいってどこのこと?

密着しているのは腹部、臀部、大腿部。せめて腹部では無いと思いたい。

下ろして欲しいと切実に願っておりますが、嫌悪感はないのでよかったです。政略(?)結婚とはいえ、接触に不快さがあるお方とではやはり辛いですもの。

愛はないけど不快さもない。少しホッとしました。


「フィザリス様、恥ずかしいですわ」

「なぜ?夫婦になると誓ったのだ。何ら恥じることは無いだろう?」


誓うのは一年後ですよね?今はまだ顔見知り程度の仲ですよ。いくらお顔が良くても……って、ギュッとしないで!


束縛というよりただの変態な気もするけど、好きならば触れたいと思うのは自然なことかしら。

さて、どうしましょうか。強く拒絶すると(かたく)なになりそうですし。


「フィザリス様、お手に触れても良いですか?」

「……私のか」


まさか触れたいと言われるとは思わなかったようです。

ほら、突然こういうことをされるのは驚くことだと分かったでしょう?


「安定しないので隣に移りますね?」


支える手を握りながら、ソッと隣に移動する。


「あ」


残念そうな声を出してはいけません。

私達は会うのは二度目。節度ある行動を求めますわ。


「フィザリス様の手は大きいですね。ほら、私とこんなにも違いますわ」


手のひらを重ね合わせると、関節一つ分くらいサイズが違うので驚きです。これに掴まれたら脱出は不可能ですわね。気を付けねば。


「ミモザ、なんと可愛らしいことをするのだっ」


重ねていた手をギュッと握られました。所謂恋人繋ぎです。気を付けねばと思ったそばから手を握り込まれてしまいましたね。やはり脱出は無理なのかしら。


「もう少し優しく握って下さいませ」

「ああ、すまない。貴方の手があまりにも滑らかで、つい(たぎ)ってしまった」

「まあ」


…滾る?お湯は沸いて無いし、水が逆巻く様子も無いけれど?


水辺でもあるのかと窓から外を覗くと、春の麗らかな日差しを浴びた木々の緑が色鮮やかに流れて行きます。


「綺麗な景色ですわね」

「貴方の方が綺麗ですよ」

「あら。自然の美しさに敵うものなどありませんわ」

「私にとってはミモザが何よりも一番です」

「感性が合いませんね?」

「なっ!?」


何故かショックだったみたいですが、それでも手を放しては貰えませんでした。




【補足】


(たぎ)

1 水がさかまいて激しく流れる。

2 煮えたつ。

3 激する気持ちが盛んにわきおこる。


ミモザの知っている意味は1と2。

フィザリスが使っているのは3です。




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― 新着の感想 ―
感性が会いませんわね ここでそう返せるミモザ様の感性は確かに特異ではあります。
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