15.似た者同士
「ごめんなさい、その日はお茶会ですわ」
「また!?まさかまたリラ夫人か?」
うふふ、私にもやっと友人というものが出来ました。
リラ様は私より5つ年上の侯爵令息夫人です。
美人でユーモアのある、何よりも私を理解して下さる得難い方で、私はもうメロメロなの。
「私が公爵家に嫁いでも困ることが無いようにと、ご夫人やご令嬢を紹介して下さるのです。
感謝してもしきれませんわ」
これは本当です。子爵令嬢でしかなく、更に女学院にも通ったことのない私は高位の令嬢達への伝手など皆無でした。
ですが、王宮での新旧嫁バトル(私はまだ婚約者ですが)を見ていたらしいリラ様から招待状が届き、そこからすっかりと仲良しになって今に至ります。
「……ミモザは私のものなのに」
あらあら。本当に悔しそうですわね。
「では、フィザリス様がお迎えに来て下さいますか?」
「迎え……」
「はい。お茶会の場で私を攫って下さいませ」
「い、いいのか!?」
「ただし、角が立たないようロマンティックにですわよ?」
「…10分」
え、開始10分で連れ去る気ですか。流石に早過ぎますよね。
「2時間後で」
「30分!」
「1時間半」
「1時間!これ以上は譲れないぞ」
「承知しました。お待ちしております」
「というわけで、本日は早めにお暇することになりますの」
「あら、私から可愛いミモザを奪いに来るの?返り討ちにしてもいいかしら?」
「羨ましい。ミモザ様は本当に愛されているのですね」
「略奪愛なの?……滾るわ~」
本日のお茶会はリラ様のご友人で伯爵夫人のグリスィーヌ様と侯爵令息夫人のヴィオレット様が参加されています。
「ヴィオレット様、滾るとはお湯が沸いたり水が逆巻く以外の意味もあるのですか?」
「うふふっ、ミモザさんは本当に可愛らしいわ。滾ると言ったのは公爵様かしら」
「はい。私の手を握った時に」
「あはは!聞きました?手を握ったくらいであの公爵が興奮したみたいですわよ!」
「リラ様、はしたない笑い方はお止めなさい」
なるほど。感情が高まることをそう言うのですね。
「では、公爵様の公爵様とは誰のことかもお分かりになりますか?」
「アハハハハハハハッ!!」
「リラ様っ!」
そんなにもおかしなことを聞いてしまったのかしら?
私のせいでリラ様がグリスィーヌ様に叱られてばかりいます。
「ミモザさん、その言い方は私達以外には言っては駄目よぉ?大変なことになっちゃうから」
「いや、そこは敢えてミモザが直接公爵に聞くべきでしょう!『公爵の公爵は元気になるのですか?』って!」
ペシッ。
とうとうグリスィーヌ様から、リラ様のおでこにピシャリと平手が入りました。
「リラ様はいつまでもやんちゃで可愛らしいですが、ミモザ様の教育上よろしくない発言はお止めなさい」
「申し訳ありません。でも、あまりにもおかしくて!」
駄目です。どうもフィザリス様はリラ様の笑いのツボを刺激しやすいらしく、時折こうして笑いが収まらなくなるのです。
「でも、ミモザさんが楽しそうでよかったわぁ。公爵様の束縛愛は一時期有名だったもの」
「束縛愛ですか」
否定したいような出来ないような。
「大丈夫よ。だってこの子ったらあの公爵を手のひらでコロコロ転がしてるもの。あまりの大物っぷりに、思わず招待状を出してしまったのよね」
「酷いですわ、リラ様。私はいつでも必死ですのに」
如何に程良く愛情の暴走を抑えるのか。これが中々に難儀で楽しいけど、一歩間違えると軟禁コースです。お遊びではなく、いつでも真剣勝負ですのに。
「そうね。だからこうして交友関係を広げているのでしょう?」
そうです。もしも軟禁されても家を出られるように、知り合いを増やしたいと思っていたところに招待状が届いて本当に嬉しかったんですよ。
「これからも定期的にお茶会や夜会に招待するから安心なさい。いずれは貴方も公爵家で開くのよ?流行の取り入れ方などもあるから、今のうちにそういった事も学びなさいな」
「ありがとうございます。本当に助かりますわ」
「ちゃ~んと見返りは貰っているから大丈夫よ!もう、公爵の話題で私はもう楽しくて楽しくて」
「そうよねぇ。なかなか溺愛の末の暴走なんて見る機会がないからありがたいわ~」
楽しいことが大好きなリラ様と、おっとりしているようで似たりよったりのヴィオレット様。そんなお二人を諌めつつも、恋愛物語が大好きなグリスィーヌ様は私とフィザリス様の話に興味津々なのです。
「若奥様、予定にないお客様がお見えですがいかが致しましょう」
あら?まだ1時間経っていないと思うのですけど。
「堪え性のない男だこと。仕方がないわね、お通しして」
現れたのはやはりフィザリス様でした。
それも何だかとっても素敵な装いで、手にはピンクの薔薇の花束が。
「ミモザ、会いたかった」
嬉しそうに真っ直ぐ私に向かって来ますが、ここは侯爵邸。令息夫人であるリラ様に先に挨拶するべきでは?
「君に似合うと思って」
まさかの花束は私への物ですか。お詫びの品ではなかったのですね?
「嬉しいですわ。とっても綺麗です」
香りもいいし、定番の真っ赤な薔薇では無いので、本当に私に似合うと思って選んで下さったのでしょう。
少し顔を寄せて香りを楽しみ、お礼を伝えます。
「あ、皆様はご存知だと思いますが、私の婚約者のフィザリス様です。
フィザリス様、こちらの皆様は私の友人になって下さったリラ様、グリスィーヌ様、ヴィオレット様ですわ」
間違えました。家名を言ってませんね。
「《《私の》》ミモザと仲良くしてくれてありがとうございます」
「お気になさらないで?ミモザは《《可愛い妹》》分ですの。これからも《《私が》》大切に大切に守りますから」
あら、仲良しさん?そういえば、リラ様のことをリラ夫人と呼んでいたわね。もともとお知り合いなのかしら。
「そのように言っていただけて嬉しいですが、お二人が仲良し過ぎると妬けてしまいますわ」
「何を言ってる!?」
「そうよ!今のは貴方を巡っての牽制よ!」
「まあ、お二人とも私を大切に思って下さるのですか?こんなに嬉しいことはありませんわ。
お二人がいれば怖いものなどありませんわね」
「当然だ!」「当たり前でしょう!」
「ふふっ、私もお二人が大好きですわ」
素敵な婚約者と友人がいるなんて、とっても幸せなことですわね。その二人が仲良しなら喜ばなくては。
「うわぁ、ミモザさんの誑しっぷりを見てしまったわぁ」
「天然で操縦している感じが凄いわ」
「リラさんは公爵様を笑ってたけど、暴走気味で愛情過多なところは公爵様と似てるわよねぇ」
何やらひそひそとヴィオレット様とグリスィーヌ様がお話ししていますが何かしら。
本日から1日2回(6時、18時頃)の投稿に変更させていただきます。
ご連絡が遅くなり申し訳ありません。
こんなですが、続きをお読み頂けると嬉しいです。




