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束縛強めの溺愛公爵とのんびり令嬢の恋愛(調教)物語  作者: ましろ


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13.婚約者の特権

会場に入った途端、たくさんの視線が突き刺さりました。


「フィザリス様は2度も妻に逃げられましたのに、実は人気があるのですね」


心の中の呟きのはずが、つい、緊張のあまり口から溢れ出てしまいました。


「いや。君を狙う視線が多過ぎる。このまま回れ右をして帰ろう。顔を出したからもういいだろう?」

「まだ3歩ほどしか歩いておりませんわ。さすがに早過ぎだと思います。

それに、私を狙うものなどおりませんよ」


私を狙うとしたら、貴方という優良物件を手に入れ損ねたご令嬢(暗殺者)くらいです。


「ミモザは純粋だから分からないかもしれないが、男は皆狼なんだ。上辺の笑顔に騙されてはいけないよ」


え?貴方のおかげでとっくに履修済ですけど。


「あらまあ。フィザリス様は今まで何人の女性を食べてしまったと仰っているのかしら」

「ぐ…っ、済まない、こんな汚れた男で……」


いえ。魔法使いとの婚姻はある意味怖いので構いません。家柄も顔も良くて30歳近くまで未経験だったら、一体どんな問題を抱えているのだろうと心配になるところでした。


「でも、私を最後にして下さいね?」

「もちろんだ!もし、万が一子供を授かれなかったとしても養子を貰えばいいだけだ。

君以外の女性を愛することも触れることもないと誓うよ」


そんな事を言っていいのかしら。もし、娘が生まれたらどうするのでしょう。

ん~、とりあえず面白そうだからこのまま受け入れておきましょうか。


「嬉しいです。信じていいのですね?」

「もちろんだ!」


拝啓、未来の娘へ。貴方の父は妻への愛のあまり貴方に触れる権利を放棄してしまいました。

後々泣いて詫びると思いますのでご宥恕下さいませ。


「だからミモザも他の男を視界に入れないでくれ。二度と屋敷から出したくなくなる」


これはまた難しいことを仰るわ。人の視界は存外に広いのですが、どうしましょうか。


「ごめんなさい。つい、私のフィザリス様が一番素敵だと他の殿方と比べてしまいました」

「わ、私のと言ったか!?」

「はい。フィザリス様はミモザのものでしょう?」


本当にこの方はチョロくて可愛い。

私のモノ宣言は、人によっては嫌悪される言葉なのですけどね。だって人は物ではありませんから。


「……帰ろう、ミモザ。早く二人きりになりたい」

「私、貴方とのダンスを楽しみにしておりましたの。駄目ですか?」

「だ、だが!」

「フィザリス様、私と3曲踊って下さいませ」


3曲踊るのは婚約者の特権です。これでも本当に楽しみにしていたのですけど。


「小悪魔ミモザが可愛過ぎる……踊ろう、君が望むなら10曲でも踊ってみせよう」


それは私の体力が持たないので無理です。


「ミモザ嬢、私と踊って頂けますか?」

「はい!」


音楽に合わせて動き出す。

さすがはフィザリス様。とってもお上手で踊りやすいです。

私を支える大きな手に、いつの間にか安心感を覚えるようになっている自分に笑ってしまいます。

私はどうやらフィザリス様を信じているみたい。


「楽しい?」

「え?」

「だって笑ってる」

「ええ、楽しくて嬉しくて幸せだなって」


クッと、背中に回されていた手に力が入り、私との距離が少し近くなりました。


「………これ以上誘惑しないでくれ」


私を見つめる瞳に熱が篭もる。

ごめんね?貴方のそのお顔が好きなんです。


「本心ですわ」

「……踊り終わったら帰ろう。公爵邸に」

「ほら。攫うのはやっぱり貴方だわ」

「…うん。ごめん、大切にするから愛させて」

「泣くかもしれませんよ」

「泣いても止めてあげられないかもしれないが許してくれ」


うーん、許せるかしら。程度によると思うのですけど。

ここで『貴方になら何をされてもいいわ』と言えたら素敵なのかもしれませんが、私には無理ですね。


「婚約破棄したくなっても許して下さるなら」

「それは駄目だ!」

「ではフィザリス様もよ?だってまだ婚約者ですわ。初夜という花嫁にとって一世一代の大舞台をぞんざいに扱わないで下さいませ」

「……初夜」

「一生で一度きりの、貴方に捧げる私の純潔ですわ」

「くっ、何と破壊力のある言葉だ……」


よし、勝ったわ。今日も勝ち越しです。


3曲踊り終わり、フィザリス様は体力ではなく心的ダメージで少しだけよろけております。


「……何か飲み物を取ってくるから待っていてくれ」

「嫌です。片時も離れはしないと約束したではありませんか」


キュッと腕に縋り付き懇願する。

だってこれは絶対に死亡フラグです。貴方がほんの少し離れた隙に地獄へ連れ去られるのが目に見えますわ!


「ミモザ……可愛いが過ぎて辛いのだが」

「だめですか?」


身長差がある為自然に上目遣いになるのはお許しを。


「駄目じゃない。駄目じゃないがお持ち帰りが駄目なのが辛い……」


そう言いながらも、行こうかと共に移動して下さるフィザリス様は本当にお優しいです。


飲み物を一口飲み、ホッとしたその時、


「フィザリス、久しぶりね」


ほーら来た。フィザリス様を呼び捨てにして私を見下そうと自信たっぷりのご婦人がやって来てしまいました。

離れなくて大正解です。






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