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「小渕さん、仕事はどうですか?何かお困りのことなどありませんか?」
転職してひと月になるところで、派遣会社の担当者との面談があった。
「特には・・・皆さん良くしてくださるし、仕事も前職と変わりありませんから。」
「そうですか、よかった。何かあったら、いつでも連絡してください。ご存じと思いますが、給与は末締めですので、タイムシートを今月最終日に・・・」
雅也の給料日と私の給料日には仕事帰りに待ち合わせて外食した。雅也は食べたことのないものに挑戦するのが好きで、エチオピア料理とかペルシャ料理とか、いつも聞いたことのない店に連れて行かれた。私が雅也を連れて行った麻布のフレンチレストランは、素敵なお店だったなぁ。こんなところで結婚式とか披露宴とかできたらと想像していた。
「・・・小渕さん。」
「あっ、はい。」
「必ずFZ製薬様の承認を取ってからPDFにして、私までメールで送ってください。」
「はい、必ず・・わかりました。」
私は担当者の話も上の空に聞いていたのだろうか。いい加減にしないと仕事でミスしそうだ。気を付けよう。
自分のデスクに戻ると渡瀬さんが待っていた。経理の人だけじゃなくて、フロアにいる全員がヘッドセットを付けてパソコンを注視している。
「派遣会社のミーティングは終わった?」
「はい。」
「これから四半期の報告があるから、ヘッドセットつけてWeb会議開いて。メールでリンクが届いているでしょ。」
私は慌ててメールを探した。全社員向けに送られているメールからリンクを開いてセッティングする。