表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

1


『この日を覚えていますか?』

 

 Google Photosグーグルフォトが聞いてくる。


『あれから1年』

『あれから5年』


 一体、私に何を思い出させたいのか、何の前触れもなくGoogle Photosが聞いてくる。これって、5年前にイタリアに行った時だ。ジェラードを食べている私を雅也が笑わせて撮った変な顔の写真だ。雅也はココナッツのアイスしか食べなかったなぁ・・・もう5年も前になるのか。5年前のちょうど今日ってこと。だから何だっていうのよ。


 山手線が新橋に着いた。今日が初日だから気を引き締めないといけない。38になって転職もきつい。今更新人だなんて。SL広場から歩いて7分なら許容範囲だし、製薬会社は初めてだけど、経理だから業界はどこでもいい。正社員ではないから今後のキャリアに響くけど、派遣社員で時給2200円なら前職より給料が少し上がる。


 自社ビルではないらしいけど、大きくて新しいオフィスビルだ。私は今日からここで働く。アメリカのFZ製薬の日本支社だ。本当は次の仕事まで少し休もうかと思ったけど、ちょうど四半期決算の時期で人手がないからと言われて給料もいいから受けてしまった。実際、働いていたほうが気が紛れるからいいかもしれない。


 私は男と別れたばかりだ。いや、もう半年近くなるか。6年付き合って、結婚も考えていた。結局それは私だけの考えだったけど。古川雅也は逃げてった。今頃、他の女とうまくやっているんだろう。あぁ、もう考えない!考えたくない、あんな奴のこと。

 

 広い一階ロビーの奥にあるエレベーターホールから、髪の毛を一つに縛った女の人が、私を目掛けて小走りにやってくる。渡瀬さんだ。私の直属の上司になる。


「小渕さん、おはよう。」

「おはようございます。」


 化粧っけがなくて素朴な印象の渡瀬さんに、私は初対面の時から気を許していた。


「今日からよろしくね。じゃあオフィスに行きましょう。みんなを紹介するわ。」

「はい。」


 私はにっこり微笑んで後について行った。22階でエレベーターが開くと、だだっ広いフロアに、何百人もの人たちが座って仕事している。こんなに人がいるのに静かだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ