5
母親の話では、俺が小さな頃はよくレコードをかけていたらしい。父親は俺を抱っこしながら楽しんでいた。抱っこをされながら踊っていると、俺は喜び、眠りにつく。
俺が音楽に興味を持つようになったのは、至極自然な事だったが、音楽に興味を持った事に対する両親の無関心さには驚いた。
最初は許可を得てから回していた。楽器を触る時も同じだ。父親がいる時にしか触れなかった。それが次第に、前もっての許可制になり、いつの日か事後承諾になっていた。そして最終的には、何も言わずに勝手に使用している。今では完全に俺の私物と化している。
音楽を聴いている時が最高に幸せだ。それはきっと、そこに両親の存在を感じていたからだ。実際にレコードを聴いている時に、両親は側にいない事が多かったが、何故だかいつでも側に二人を感じる事が出来る。それは今でも変わっていない。
俺は間違いなく、父親を愛している。
野球に興味を持ったのは、間違いなく父親からの影響だった。父親は野球が大好きで、自らも若い頃には選手としてグランドを走っていた。当然、俺が目指しているロックナインではなく、普通の野球選手としてだ。
選手としての父親を、俺は良く知らない。町内会のソフトボールの試合は見た事がある。バッティングセンターでもその腕前を拝見している。過去にやっていた事は感じられた。
俺はよく野球を観ていた。テレビではほぼ毎日、野球場でも月に何度か観戦していた。
父親はスポーツ全般が大好きだった。テレビを見る時は大抵がスポーツ番組だ。ニュースでもスポーツがメインで、新聞もスポーツ紙を取っていた。
父親が観ていたスポーツの中ではスキージャンプとマラソンが好みだった。実際にやりたいというより、見る事が楽しいスポーツだと思った。スポーツって不思議だ。見るだけで満足なのもあれば、やって楽しいと思うものもあるし観ているだけじゃ物足りないものもある。