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ロックナインはこのショウの名前でもあり、メンバーの総称でもある。俺はロックナインのナンバーワン。九人揃わなければ、ロンクナインとは呼べない。
野球は当然として、音楽に九人も必要かって言う奴は多い。俺としては、人数なんてどうでもいい。その気になれば一人でも問題ない。ギターを抱え、足でリズムを刻む。バスドラやハイハットを鳴らす事は可能だ。ハーモニカを掻き鳴らし、ピアノの鍵盤を弾く事も出来る。やる気や気持ちがあれば人数なんて関係ない。アカペラにもカッコいい奴はいる。ただ・・・・ 俺は一人じゃ嫌ってだけ。正確に言えば、寂しい。大勢でガヤガヤ楽しんでいる気持ちを表現するのが俺の音楽だ。
とは言えまだ一人。これまでに誰かと音楽した事は一度もない。一人きり家で曲作りはしている。ドラムを叩く事もある。ギターもベースも弾く。サックスは練習中。ピアノも好きだし、ハーモニカも好きだ。タンバリンでもカスタネットでも、あらゆる楽器が好きで堪らない。ハンドクラップやタップも音楽だ。雨音にうっとりする事もある。俺の人生は、母親の胎内にいた時から音楽に包まれている。音楽のない人生は考えられない。
家には多くの楽器がある。レコードやらの音源も一杯だ。両親が音楽好きだった。特に父親は演奏の仕方も分からない楽器を衝動的に買い求めていた。レコードについてもジャケットだけを見て買った物が多い。俺はそんな環境の中、自由に音を楽しんで過ごしてきた。
両親に対する不満なんて少しもない。音楽を与えてくれただけで俺の人生は幸せだ。まだ十数年しか生きていないが、自分の人生を知るには充分な期間だと思っている。
俺には音楽がある。
俺は幸せ。
両親は、家では音楽をあまり聞かない。演奏している姿も、記憶の中では見た事がない。二人が音楽好きである事に間違いはない。俺が生まれる前からのコレクションが多大だが、生まれてからも買い足していた。母親の話では、父親のライヴを観に行った事があるらしい。