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中校生になってから音尾君との会話は極端に減った。特に学校内では意識的に避けられていた。音楽の話がしたくて近寄ると、逃げるようにその場からいなくなる。最初はただの偶然だと思っていた。カッコいいCDを見つけたから貸そうと思い教室に出向くと、私の顔を見た瞬間に消えてしまう。そうなってしまうともう、探し出すのは不可能だった。
避けられていると知りながらも音尾君に付き纏っていた自分が今では恥ずかしいけれど、理由はちゃんとある。人間的にどうのこうのは別として、音楽家としての音尾君は尊敬出来る。それだけは間違っていないと確信している。
音楽の話をしている時の音尾君は輝いているし、その姿勢は尊敬が出来る。
どうしてだろう? 普段とのギャップに萌えない事が不思議だ。
同じ高校を選んだのは偶然に過ぎない。私が密かに片想いを寄せているっていうのは幻想だ。同級生にはよくそんな指摘をされるけれど、いい迷惑。音尾君の方も私に惚れているって噂まで広がってしまった。確かに音尾君の頭脳レベルでは受からない高校ではあったけれど、私の為に努力したとは思えない。というか、音尾君の志望動機には心当たりがある。私達が通う高校は、音尾君が憧れるバンドマンの母校なんだ。
実は私もそそうだったりする。
音尾君を嫌いな理由がつまらないって事は承知しているけれど、人間関係の構築なんてそんなものだし、だからと言って一生無視をするつもりも殺すつもりも全くない。ただ少し距離を置いているに過ぎない。