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三番ファースト、永井優美、主にベース担当。
あの二人が嫌い。
それぞれの性格は最悪で、二人きりでは話をしたくない。
けれど二人が揃って一緒にいる時は何故だかいつもと空気が違う。いい雰囲気だ。恋人同士って感じじゃないけれど、かなり近い。兄弟? それも双子っていう雰囲気が出ている。
まさかスタジオで出会うとは驚いた。二人がバンドを組んでいるなんて知らなかった。音尾君がドラムを叩いてる事は知っていた。速井君がヴォーカル? イメージと違う。しかも野球好きっていうのは冗談としか思えない。速井君にスポーツは似合わない。いつでも本を読んでいる。歩きながらでも読んでいるイメージがある。
二人の事が嫌いなのには、きちんとした理由がある。あの二人は、揃って私を小馬鹿にした。
音尾君とは小学校から一緒で、家に遊びに行った事も来た事もある。好きっていう感情はないけれど、友達だとは思っていた。私がベースを始めたきっかけの人でもある。
けれどあいつは、いつも私を裏切る。
遠足のグループに誘ったら、女子とは組みたくないと言われた。
クラブ活動を何にするのか聞いたら、お前には関係ないと言われた。
親同士の仲が良く、一緒に旅行に行く事も何度かあった。けれど毎回帰り際にこう言われる。学校では言うなよ。
お前は手が長いからベースが向いてるんじゃない? そう言ったのは音尾君だ。小さな頃から音楽好きだった音尾君を見ていて、私も音楽に興味を持った。音尾君の家には様々な楽器がある。私が何か楽器を勉強したいと言うと、迷いもなくそう言ってくれた。
一緒にバンドを組もうと私が言うと、それは無理だと言われた。どうしてなのかを聞いても答えてくれない。音楽は一人でやるより大勢の方が楽しいぞと言ったのは音尾君の癖に。
音尾君は中学でバンドを組み始めた。同級生とではなく、お兄さんの知り合いを紹介してもらった。音尾君のお兄さんはカッコいい。見た目だけじゃない。兄弟とは思えない程優しい。