受贈者 〜じゅぞうしゃ〜
プロローグ 〜受贈者〜
「gifted」という言葉がある。この言葉は、幼少期から並外れた集中力や記憶力の高さをもつ者。反復練習をせずとも運動技能や知識などを習得できる者。世間からは、「天才」と呼ばれる者達のことを指す。
神に選ばれし存在。凡人とはかけ離れし存在。天から何物をも送られた「受贈者」であるといえる。
古代社会では集団に反する特徴を持つものを排斥することで、自身らの安全を守ろうとする意識があったという。つまりこれは人間の「本能」であると言える。
「本能」であるならば仕方がない。排斥された人間はそう割り切れるだろうか。否である。
排斥された人間は、排斥された人間達で徒党を組み、自身らを差別した集団に対して敵対行動を取るようになった。これもまた「本能」である。
そうしてできた2種類の集団。つまりは周りと同じ特性を「持つ」者と「持たない」者の集団は、互いに交わることなく発展を続けて行った。
そのまま時を重ね続け、唯一神ギバルの生誕から3256年が過ぎた年の事だ。唯一神ギバルが消滅した。
唯一神ギバルは生前、自身の魂に宿る才能、知識、能力の全てを人族に贈与しようと考えた。自身の魂を宿した人族を創り出す事で、新たな神を創造しようと考えたのだ。
ところが人族には問題点があった。2つの大きな集団が互いを睨みつけ合い、冷戦状態が3000年近く経っていることである。
唯一神ギバルは片方の集団に能力を贈与することは、両者の均衡を崩壊させると考え、自らの能力を二分し、双方の人族の胎児に宿した。
直後、唯一神ギバルは消滅した。
唯一神ギバルの消滅から約10ヶ月が経った頃。双方の集団に赤子が誕生した。ある師走の夜。月は新月だったと言われている。
一説によると、赤子は生誕と同時に口を開き言葉を発したという。発した言葉には諸説あるが、最も有力な説は単語を一言だけ呟いたというものである。
「受贈者」 と。