第一話 二十試噴進迎撃機 「流花」 上
本土防空…それは1942年のドーリットル空襲などからはじまった米爆撃機による本土爆撃を迎撃し、日本の空を守ることである…だがしかし迎撃機の開発は遅れに遅れ、陸軍の二式複戦屠龍は配備は1942年と他と比べ早いものの、(筆者も思うに)襲撃機に近く戦爆連合に対しあまり効果的でなかったし、零戦や紫電などは高高度性能が不足しており、雷電は大戦後期、震電やジェット機に至っては大戦末期も良いところに初飛行である。だか今回からのシリーズは私の独断と偏見と全体的なもしもが多分に含まれている。そこを踏まえて読んで頂きたい。
第一話 上
「こいつが…!」
花本海軍少佐は、テストパイロットとしての任を受けて、霞ヶ浦海軍試作機統合試験場、秘匿名称「霞飛び」の新設格納庫へと来ていた。目の前にあるのはドイツのエンジンを元にして開発されたネ330、その圧縮比を1割上げたネ330乙を載せ、機首に五式三十ミリ固定機銃乙型を4門、その乙型を全長3600ミリに延長、初速920m/s、毎分600発の超高性能を叩き出した乙型改長一を搭載している。最高速度は計算では880km/hも出ると事前に渡された資料には記載されている。
「美しいな…こいつは…」
「そうだろう、花本。」
「…っ!」
花本はその声の主が誰かわかった。
空技廠噴進機部門主任、鈴本中佐である。花本とは幼い頃からの顔見知りである。
「鈴本中佐、花本、先程着任しましたっ!お元気そうでなによりです!」
「まだまだ若いもんには負けられんわ。あぁいい、今は楽にしてくれ、俺も気が楽だ。」
「それにしてもこれはすごいですね…」
花本は目の前の機体をまじまじと眺める…。
「先尾翼、主翼、尾翼、この三翼と自動空戦フラップからなる高機動性と水銀柱を用いた新型の自動機体安定装置ならなる安定性…今までの課題であった機動性と安定性の両立…」
「あぁそうだ。三翼全てに自動空戦フラップと自動機体安定装置を接続可能だ。もちろん、全部マニュアルでだって構わないぞ?」
「それをできる技量のパイロットはもう少ないですよ…それとも鈴本さん、僕の立ち位置奪うんですか?嫌ですよ?」
「あー、やっぱこーゆーのは若いもんに任せんとな!」
2人の豪快な笑いが格納庫に響いた。
少し時が経ち夜…
「では流花班への花本の着任を祝い、乾杯!」
『乾杯!』
皆で1つの大きな机を囲み杯を掲げた。
皆で楽しく喋っているなか、花本、鈴本は少し夜風にあたりに行っていた。
「静かなものですね…厚木にいた頃は雷電で頑張ってB-29とダンスしていましたよ…私はダンスをするにも美しい女性とで無いと燃えません。」
「それにしちゃあ1日で4機落とした日もあったとか?」
「彼ら、広い機体表面に美女を連れてるんですよ。全く羨ましいもんです。」
「…なぁ、花本。お前はあの機体、どう思う、流花でなら簡単に落とせるか?」
「乗ってみないとそこはわかりませんが、少なくとも雷電よりかはダンスが単純になるとは。」
「…もしも、もしもだがな…流花の試験中、B-29が近くに来たら…お前はどうする?」
「そう…ですね、私は多分、弾と燃料があり、機体に異常がなければ、B-29専属の磁石のように真っ直ぐと向かいます。それで守れる何かがあるはずですから」
その言葉に鈴本は「そうか…」と一言呟くのみであった。
ー翌日ー
10:00
「これより、流花の離着陸試験を行う。各員、最終点検急げ!」
「本日は風が強いです、燃料を増やし、滞空時間を長くできるようにしていただけますか!」
「花本、機体についてはお前が判断しろ!」
「了解です!君っ!すまないが10L程多く燃料をいれておいてくれ!機体を安定させる時間を多く取る為、エンジンを稼働させる時間が長引きそうだ!」
「了解いたしましたっ!」
整備兵のはっきりした声がとても大きく聞こえた。
そして花本が操縦席へからだをねじ込む。
「各整備班っ!作業終わり次第花本へ報告しろっ!」
「武装整備班、万が一の為、給弾作業まで完了しました!」
「操縦系統、異常無し!」
「発動機異常無し、機体への固定完了しました!」
すべての作業の完了を聞いて花本は笑みをその強張った顔に浮かべた。
「花本、お前ならできる、行ってこい!」
「ハッ!…キャノピー密閉、自動与圧装置作動、高度計に接続、機内操作完了!」
鈴本に完了したとハンドサインを送る。
「無線:花本、お前のタイミングで良い、発動機を回せ。」
「鈴本さん、ありがとうございます、この機体は座り心地まで良いのですね。…」
すぅっと息をすって腹の底からこう言った。
「ネ330乙発動機、始動!」
…ネ330乙から低くい唸り声が響く。
「…よし、やってみるか」
地上運転制限いっぱいまで一気にスロットルを倒す。
ヒィィ…と甲高い音が背中から伝わってくる。
「地上運転問題なし、滑走路に障害物無し、主輪固定機解除、フラップ下げ。」
機体が加速していく。
流花計画班の皆が帽振れで送ってくれる。そんな皆が見えなくなり、機体の接地感も薄くなってきた。
そしてこの日、流花は初飛行に成功した。
第一話 上 完
読んでくださりありがとうございます。
機体の解説、挿絵は下で入れられるようにします。m(_ _)m
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