驚きの戦艦
巨大な潜水艦が砂海から浮上してきた。
潜水艦が浮上し終えると、入口が開く。
開くと同時に一人のおばあさんが佇んでいた。
「おかえりなさいませ、若」
「ばあや、お客人達を丁重にもてなしてくれ」
「かしこまりました。 医療班、そちらの女性を直ちに診療所へお連れしてください」
「はい! 聞こえたか! 直ちに取り掛かれ!!」
「「「「「はい!!!」」」」」
大勢の人達がクラナを担架に運び、潜水艦へと入っていった。
「失礼いたします」
「あ、はい!」
俺の横にはいつの間にかおばあさんが立っていた。
先程まで入り口の近くにいたのに、いつの間に俺の横にいたんだ?
「私めは、ローガン様にお仕えさせていただいております。 執事長のサラと申します」
「あ、自分は迅人と言います」
「迅人様。 迅人様もお怪我をされております。 お連れの方と御一緒に診療所へご案内いたしますので、私の後に付いて来ていただけますか?」
「あ、俺は大丈夫なのでお気になさらないでください」
「そうはいきません。 体中ボロボロではありませんか。 特異体質だとしても、そのままの状態は良くはありません。 それに、若から、丁重にもてなせとご命令がありましたので、もし、若に迅人様をそのままの状態で放置していたと耳に入った場合、我々全員が処罰を受けなくては―――」
「行きます! 行きます!」
「では、こちらになりますので、付いてきてください」
サラさんのプレッシャーに負け、後を付いて行く。
中に入ると、これまたとんでもない光景が俺を驚かせた。
船内に入ると、もの凄い人達が動き回っていた事と、おやっさんの船みたいに豪華客船みたいな内装だった。
「船内は特殊なアーティファクトを使用しており、この様に様々な分野の施設が存在し、多くの人間が生活をしております」
「すごいですね」
「ふふふ。 ここではそう驚いていただける方は数年ぶりですので、私としても大変嬉しい反応でございます」
「あ、いや、お恥ずかしい」
「いえいえ。 それではこちらが診療所となります」
「え、これが病院⁈」
俺が想像していた診療所とは違い、とんでもなく大きく、立派な診療所がそこにはあった。
「これはもう病院だろ……」
外からじゃこんな立派な病院があるとは思いもしない。
受付もしっかりとあり、そして患者に見合った様々な診療科も完備され、ちゃんと流れができている。
「ささ、迅人様。 こちらへお越しください」
「あ、はい!」
さっきから俺は驚いてばかりである。
「お連れの方はそちらのカプセル治療室で体を癒していると思われます」
「カプセル?」
「はい。 では迅人様はこちらで治療を受けてください」
「あ、わかりました」
俺は診療を受け、すぐに処置を終えた。
「こんなに早く終えられるとは思わなかったな」
「ここには最先端の医療技術を完備しております。 そして、常日頃から船員は研修を重ねており、その分野に特化した者達を配置しているおかげで、待ち時間は無く、流れがスムーズなのです」
「ここだけではないですよね」
「その通りでございます。 先ほども申しましたが、船員たちは常日頃から研修を重ね、そして育成にも力を入れております。 それゆえ、我々だけではなく、この船であるエンデヴァーも日々大きくなっております」
「それはここに住む人達が増えているって事ですよね」
「左様でございます」
「でも、なぜ船の中でこの様な生活をされているんですか?」
「それは……我々が犯罪者の烙印を押された者達だからです」
「犯罪者……ですか?」
「先程までと違い、驚かないのですね?」
「え、まぁ、少しは驚いてはいますけど、この光景を見たら、どうせ罪を擦り付けられたんだろうって考えがつきますよ」
「ほほぅ……若が助けに入るだけの事はありますね」
「え、何か言いましたか?」
「いいえ、何も」
サラさんは俺を見て笑みを見せる。
その笑みは嬉しそうに見えた。
「さて、お連れの方はまだ治療がまだ済んでおりません。 迅人様にはこの後、若にお会いいただきます」
「あ、わかりました」
先程と同様に、サラさんの後を付いて行くと、重厚そうな扉の前で立ち止まる。
「若。 迅人様をお連れ致しました」
「入れ」
扉が開くと、ここは見た所、操縦室であろう事がすぐに分かった。
そして、一番の特等席、全体を見渡せる場所にローガンが堂々と座っており、その横には、短髪、灰色の髪色で、ローガンと瞳の色は似ていて、右目に眼帯をしたこれまたローガンに負けず劣らずのイケメンが立っていた。
「迅人よ……ちゃんと治療は受けたか?」
「あ、はい! 親切丁寧に、診ていただきました」
「それならいい。 ばあやもご苦労だった」
「いえいえ。 それでは私めは他に仕事がございますので、失礼いたします」
「サラさん、ありがとうございました」
「フフッ」
サラさんは俺に笑みを見せながら、手を振りこの場からいなくなる。
扉が閉まると、ローガンと横にいた人と一緒に下へ降りてきた。
「先程、迅人の連れであるクラナ君は、命に別状はないと報告を受けている。 ただ、過剰に力を使用した事により、目覚めるまでもう少し待つようだ」
「クラナを助けていただきありがとうございます」
「気にするな。 それと、迅人が乗っていた機兵はこちらで回収し、ドックにて修理をしている」
「あ、ほんとですか⁈ そこまでしてもらう訳には――」
「わかっている。 あの機兵のメカニックは彼女、なんだろう」
「あ、はい。 あ、いえ、まだ決まりというわけじゃ……」
「医療班から、うわ言の様に、『僕がアジーンを見るんだ』と言っていたと聞いた」
「あ、そんな事を言っていたんですか?」
「あぁ。 だから、あの機兵を修理はするが、それは彼女が目を覚ますまでの仮修繕としとくよう伝えてある」
「お気遣いいただいて、ありがとうございます」
「気にするな」
会って間もないというのに、この人の器の大きさは計り知れないと思わされた。
俺の中でローガンがうなぎ上りである。
「さて、若、俺の事をそろそろ紹介してもらえないかねぇ?」
「あぁ、すまない。 この男は、俺の右腕であるロイドだ」
「どうも! 俺はロイドだ! よろしくな」
「あ、自分は迅人といいます。 こちらこそよろしくお願いします。 ロイドさん」
「さん付けはいらんぜ迅人よ! 俺の事は気楽にロイドと呼んでくれや」
この人もローガンと同様に気持ちの良い笑みを見せてくれて、とても気さくな人なんだと伺えた。
「さて、迅人。 さっそくで悪いが、今後はどうするのか決まっているのか?」
「あ、はい。俺の仲間と合流しなければいけなくて」
「場所は?」
「|無限に巡る場所』という所なんですが?」
俺がそう言うと、二人の表情が険しくなる。
「なぜその様な場所に行くのだ?」
「え、っと……俺が行くと決めた訳ではなくてですね~。 俺の師匠がそこで修業をすると言い出しましてぇ……」
「ほぅ……その師匠の名を教えてもらえるか?」
「あ、はい。 元第一騎兵隊・隊長であるオレオールと言うんですが―――」
「なんだとッ⁈」
「ぶあ―――ッはっはっはああ! こりゃあ面白れぇ!」
「えっ、えっ⁈」
ローガンは叫び、ロイドは大笑い。
俺は二人の反応に戸惑いまくっていた。
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