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ブラックボックス

「あちゃ~。 これはもう無理だねぇ」

「や、やっぱり?」

「無理させ過ぎちゃったねぇ……」

「ですよねぇ……すいません……」


先程の戦いで、アジーンの右手の拳は、モンスターの懐に打ち込んだ事で、粉々に砕けてしまった。


「とりあえず、急ごしらえになっちゃうけど、できるだけメンテナンスしてみるね」

「よろしくお願いします」


クラナはそう言うと作業を開始する。

あんな事があったというのにクラナは鼻歌を歌いながら、アジーンを修復していく。

クラナの図太い精神力に助けられている俺は、改めて、クラナの凄さを身にしめていた。

そして、視線をクラナから、アジーンへと移す。


「お前は一体何なんだ?」


俺はアジーンに助けられた。

コックピットには誰も乗っていないのにも関わらず、動き出し、俺をモンスターから助けてくれた。

クラナにも聞いたが、自動で動き出す機兵はいるとは言っていた。

だが、それはとてつもなく稀な事で、その機兵はただの機兵ではないそうだ。

その機兵は機兵でも「魔導機兵(マテリアル・ギア)」ではない……その名も『古代機兵(エンシェント・ギア)』というのだ。

なら、アジーンはクラナの言う『古代機兵』なのか?

俺がそうクラナに聞くと、クラナは満面の笑みを見せこう言い放った。


「……わかんない」


そう……言われたら、何にも言えん。


ただ、クラナはこう言い続けた。


「『魔導機兵』の『魔導駆核(マテリアルコア)』は、人間が作り上げた物。 しかも『魔導駆核』は様々な種族が集まり出来た奇跡的にできた産物。 今では作る事が可能になったんだけど、僕は小さな頃からおじいちゃんの作業を傍でずっと見られていたおかげで、『古代機兵』の核……『古代駆核(エンシェントコア)』を見たことがあって、その子は私を受け入れてくれてて、色々とお話ができたんだけど、この子は……口数が少ない上に秘密主義? 悪い子ではないと思うんだけど、ま、そんな僕だから……そんな僕でも、この子は『古代機兵』だと自信を持っては言えない……この子は分からない事だらけ……うまく言えなくてごめんね」


そう言ったクラナは少し寂しげな顔をしていた。


クラナはアジーンの核を見たが、見たことがない形をした核だったみたいだ。

さらに深堀しようとしたが、弾かれたと言っていた。

弾かれたとはどういった事何と聞いた所、クラナの力である『細胞分子の修復(ナノ・メイク)』を使い、アジーンの核を覗き込もうとした時、核が守られており、無理に覗き込もうとした瞬間、強力な力に弾かれたと言っていた。

クラナ曰く、アジーンの核は高度な技術が使われている上に、様々な場所にブラックボックスが多く存在しており、謎が多いとなり、分からないと表現をしたそうだ。


「分からない事だらけか……まるで俺みたいだな」


俺自身、自分の力を理解できないでいる。


『順応』


ラグナさんの知識を得たとはいえ、俺が見れる知識は全てではない。

ラグナさんの知識には権限があり、俺が見れる知識は多くはない。

だが、俺が強くなれば見れる様になっており、現時点で、俺の力である『順応』に対し、分かった事は、様々な環境に順応し、戦いの最中、時間が経つにつれ、相手に順応していく……という。

分かったと言っていいモノなのかと言われたら、う~ん……と考え込んでしまう。

最初から分かっている事は、様々な環境に順応していく事はラグナさんの知識を見ずとも分かっていた。

だが、その後の、戦いの最中、時間が経つにつれ、相手に順応していくとは?

そのままの意味を理解すればいいのか?

曖昧なので、その先を見ようとしたが、権限に邪魔をされ見せてはくれなかった。

だが、オレオールさんとの修行で分かった事があった。

それは相手と殺り合っていると、その相手に順応し、相手の力に合わせられる様になる?のではないかと思い始めたのだ!

だが、そんな世の中甘くはない……

やっと相手に順応してきたと思えば、相手がさらに出力を上げれば、また順応するまでに時間がかかるのだ。

また相手に順応するそれまではどうにかして耐え忍ばなければいけない時間が起きる。

相手はそんなのお構いなしに殺りにきている訳で……気持ちが折れかけていた時があったんだが、そんな気持ちを吹き飛ばす出来事があった!

なんと、俺自身が強くなれば、順応のスピードが上がっていく事にも気付いたのだ。

『順応』が順応に順応しようと働きかけている事がわかったのだ!

俺はそれを分かった時、嬉しかった。

努力は必ずしも報われるとは限らない……けど、折れずに、努力をしていたら、自分自身の力も努力しているという事がわかり、俺は一人じゃないって気付かされた。

それと同時に、オレオールさんには、俺の力の事は隠しとこうと、絶対に言わない様にしようって決めたんだ。

だってあの人、順応する毎に、出力を上げまくるんだもん。

俺の体がもたんもたん!


「でも、絶対に気付いてるんだろうなぁ……」


突然背筋に悪寒が走る。

だって、オレオールさんと修行している最中、やっと順応してきたと思うと、ものスッゴイ怖い笑みを見せて、やっと順応しきったのに、さらに出力を上げる恐ろしい人なんだぜ……

でも、そのおかげもあり、俺も、『順応』も力を付けてさせてもらっている。

文句は言えん。


「あああ――ん、もうッ!! また弾かれたあああ――!!」


どうやら、クラナは再度アタックして、またアジーンに弾かれたみたいだ。


「もうっ! ぜぇぇったいに入ってみせるんだからっ!! けど、今はもう時間が無いから、い・ま・は・ここまでにしといてあげるッ!!」


頬を膨らませ、どこかのお笑い芸人みたいな言葉を発しているクラナがかわいく見えた。


目を留めていただき、ありがとうございました。

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「Fly Daddy Again」・「万遊の写狩」も掲載しております。

よろしければお読みください。

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