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「私はこのままではよくないと思い、人間が寄り付かない所に身を潜めた……だが、月日が経ち、私のもとに、かつて共に戦った仲間が現れた……私を殺すために」
そう……かつての仲間がラグナさんを葬りにやってきたのだ。
ラグナさんがいた世界の王やら政治家、貴族が動き、ラグナさんを殺すためにありとあらゆる方法で周りを抱き込み、ラグナさんを新たな魔王にしたてあげたのだ。
そして、ラグナさんに対抗できる勢力である、ラグナさんと共に戦った英雄に命令を下した……魔王ラグナを打ち滅ぼせと。
そして、自分の目の前に現れたかつての仲間達……自分を殺しに来た仲間達……もう殺るしかない……だが、ラグナさんは――
「私の前に現れたかつての仲間達は、私の前に現れ、対峙した瞬間皆泣きだしたのだ。 長い間、苦楽を共にしてきた仲間達は、私がそんな事をするわけがないと信じてくれっていたのだ。彼らは私の潔白を晴らすために、血眼になって動き回ってくれていた。私にはその気持ちがとても嬉しかった。やはり、人間はすばらしい……私は人間が好きなんだと再認識させてくれた。だが、全ての人間がそうではない……私が潔白だと動き回ってくれていた英雄、友たちを目障りだと思う者たちが、大事な家族を人質に取ったのだ。人質を返して欲しければ、私を殺せと! 殺さなければ……」
よく、テレビや漫画などでよくあるありきたりな展開だとは思う……そして、こういう時ヒーローが現れ助けてくれるかと思うが、まぁそう甘くはない。
ラグナさんの世界は俺達がいる世界よりも残酷で酷い! どちらも悲惨な結末の方が多いのだ。
それとラグナさんを殺したからといって、大事な家族が戻ってくることはない。
だって、今度はラグナさんを殺した英雄たちが目障りになってくる。
先程も言ったが、人間は脅威となり得る者がいると、それが気になり、排除しない限りずっ安息は訪れないと考える種族だ。
ラグナさんがいなくなれば、次の脅威は人類最強の者たち! そして、英雄たちが帰還次第、今度は大事な家族を殺されたくはなければ、おとなしく殺されろと言うにちがいない。
英雄たちを殺した後、口封じのため家族を殺し、自分たちの都合の言いように書き換えるのだ……真実を。
それが分かっていたラグナさんはある行動に出る。
「私は共に戦った仲間以外の時を停止させる魔法を発動し、人質に取られている仲間の家族を救出! そして……この計画に加担をしている者の排除を敢行した」
ラグナさんの表情が曇るのがわかった。
本当はこんな事はしたくはなかったのだ。
ラグナさんは人間が好きだと言っていた。
だからこそ、自身を疎ましく思っている者であろうと、殺さず、自身は身を引いたのだ。
いつか改心してくれると思って……のにも関わらず、ラグナさんを疎ましく思う者達の手は留まることなく関係のない者にまで悪の手を伸ばした。
これはもう一線を越えてしまった……ラグナさんはもう救いようがないと判断したのだ。
そして、膿を出し切らなければ、またそこから膿が発生する。
ラグナさん、そして、共に戦った仲間達は王都を奪還し、膿……王都に蔓延る悪を粛清したのだ。
そして、英雄たちは民衆に真実を伝え、ここに新たな王が誕生したのだ。
めでたしめでたしで終わると思ったでしょうがまだ続きがある。
今回ラグナさんが使った大掛かりな魔法には代償が無いわけではなかったのだ。
「私が発動した時空停止魔法には使用した者を弱体化がさせてしまうという欠点があった。ましてや、動ける者を選別もしてしまった事で、極度な弱体化が私を襲った。普段の私なら大概の事では死なないのだが、使用した代償に対しどうしようもできなかった。それを見かねた友たちは厳重な警備を敷き、私が回復をするまで面倒を見ると言ってきた。だが、私はその言葉に甘えるわけにはいかないとは言ったが、弱体化している私を友たちは力技で厳重に警備されている部屋へと押し込んだのだ。しかし、皆私を心配してくれているのが分かり、嬉しくもあった……だから弱体化が解除されるまで世話になろうと思ったのだ。そして、ある程度回復したところで身を引こうとも……だが、私が弱体化しているその時を虎視眈々と狙う者がいた」