hidden energy
「OK! 到着だ」
「ここがそうなの?」
「あぁ。 間違いない」
ざっと周囲を見渡しても代り映えの無い場所である。
だが、少し歩いて行くと俺が興味を持った理由が現れる。
「こ、これって……」
「あぁ……そうさ。 機兵だ」
俺の眼前には砂埃を被り、胸に槍で貫かれ、壁に持たれかかっている機兵がいたのだ。
俺とクラナは機兵の近くまで歩み寄る。
「アジーン」
「え、今何か言った?」
「え、俺何か言っていたか?」
「うん。 アジーンって」
「俺が?」
クラナに言われ、思い返してみても『アジーン』と口にした覚えがない。
クラナは綺麗な瞳で俺を見つめている。
「悪い悪い。 とうとうボケだしたのかも」
「もうっ! そうやって誤魔化すんだから~!」
「あはは。 しっかし、こんな所に機兵が眠っているなんてなぁ……」
「ホントだねぇ……ねぇ、ちょっと見てもいいかな?」
「いいけど、何でだい?」
「もしかしたら動かせるかもしれない」
「いやいや、それはないだろ? 見るからに何千年もここに居た様な姿を見たら――」
「僕にはできるよ」
「な、なんだって?」
「『細胞分子の修飾』」
青白く輝きだすクラナ。
クラナは両手を機兵の方へと向けると、機兵も青白く輝きだす。
「ク、クラナ、これは⁈」
「僕の能力だよ。 今この機兵を動かせるか見てるとこ! あ、この機兵を動かせるかもしれない! 少し時間がかかるから、もうちょっと待っててね」
「あ、あぁ……わかった」
先程まで砂埃を被っていた機兵が徐々に元の色を取り戻していくのが見て取れる。
クラナにこんな能力があるとは思わなかった。
おやっさんはこの事を知っていたのだろうか?
いや、きっと知っていたに違いない。
なんせ、自分の孫を天才と呼んでいたのだから。
しかし、もし知っていたとしたら、この力を隠していたい理由も分かる気がする。
この力はあまりにも脅威になる。
とくに戦争が盛んな場所では……だ。
「俺はクラナの事を知らないんだよなぁ……」
そして、それと同時に俺の中で、クラナに対し疑問が生まれた。
「う~ん……これは困ったぞぉ」
「どうした?」
俺が色々と考えていると、クラナが顎に手を置き、あからさまに困っていた。
「あ、実は、僕のこの力は、今ある物をつくろう能力なんだけどね。 もうガタがきている物に関してはつくろうのに限界があるんだ」
「なるほど……今できる最低限の事しかできないと」
「そう。 今この機兵を見たら、4割ほどガタが来てる。 一応限界までつくろったんだけど、それは些細な問題。 今現状2つの問題があるんだ」
「問題の1つは誰がこの機兵を動かすかだろ?」
「正解。 この機兵は僕には動かせない。 じゃぁ残るは――」
「そこは問題ない」
「え、何で?」
「たぶん、いや……この機兵は俺が動かせる」
「それってもしかして……」
「あぁ。 勘だ」
「そうだと思った……けど、あながちこういった状況の勘って当たるんだよね」
「あはは……で、最後の問題は何なんだい?」
「あれなんだぁ……」
クラナは機兵がいる方に指を向ける。
いや、正確には機兵に刺さっている槍を指していた。
「あの槍がどうかしたのか?」
「あの槍を抜こうとしたんだけど、僕の力じゃビクともしなくて」
「ビクともしない?」
「うん。 ビクとも! 僕もある程度力はあると思うんだけど、この槍はもしかしたら呪いがかかっているかもしれない」
クラナはこう見えてもぅのっすごい力持ちである。
そんなクラナでさえ抜けないとなれば、呪いがかかっていると考えるのもおかしくはない。
「呪い……かぁ? この槍を抜かせないためにか?」
「たぶん、そうだと思う」
俺は機兵に視線を向ける。
だが、何故だか、この槍を俺は抜ける確信があった。
「槍を抜いたら、この機兵は動くのかい?」
「うん。 幸いにもコアには届いていなかった。 ホンの数ミリズレてたら無理だったね」
「なるほど……運も味方している訳だ」
「あ、ちょっと⁈」
俺は機兵に刺さっている槍の上に飛び乗る。
「龍の喚起・始纏共鳴!! 『蒼龍の爪拳』・『蒼龍の震脚』!!!!」
2人を呼び出すと同時に、最高火力で槍を引き抜く!
ズルッ
「え、嘘でしょ⁈」」
クラナの驚きの声が響き渡る。
槍は徐々に機兵から引き抜かれていく。
先程クラナが言っていた事を思い出し、最高火力を出しつつ、慎重に槍を引き抜く。
コアを傷つけないように。
ガシャンッ!!!!
「ぬ、抜けた……ビクともしなかった槍が……迅人すっごいよっ!!」
はしゃぐクラナを見て、フと笑みを見せ、視線を抜けた槍へと向ける。
「重たいと思っていたが、持ってみたらすごく軽かった……クラナがビクともしないって言うから、うん? 何だ?」
「うわ、何⁈ あ、危ないッ⁈」
突如、槍が輝きだすと、大きな槍が縮んでいく。
そして、槍が俺目掛けて飛んできたのだ。
だが、俺の目の前で止まる槍。
その光景を見ると、取ってと言わんばかりにしか見えない。
俺はゆっくりと槍に手を伸ばし、手に取る。
「グン……グニル?」
握った瞬間、俺の頭の中に流れ込んできた言葉。
それがグングニル……この槍の名前だとすぐに理解した。
目を留めていただき、ありがとうございました。
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