怪しく輝く赤い月
激しく殴りつけられたモンスターは地上へと勢いよく墜ちていった。
そして、殴られた反動により、モンスターは鷲掴みにしていたクラナを上空へと放り投げた。
俺はすぐにクラナを優しくキャッチし、安否を確かめる。
「スゥー、スゥー」
よかった。
息はしている。
ただ気絶をしているだけだ。
「数分もしたら意識は戻るな」
俺は優しく抱き抱え、船内へと移動しようとした時、クラナを攫ったモンスターの方に視線を移す。
あのモンスターは俺に殴られ、勢いよく地面に衝突していた。
けれど、何か腑に落ちない。
誰かに見られている気配がする。
この気配は下からじゃない。
俺はすぐに上を見る。
「なんだ……あれは?」
赤く怪しく輝く月に重なるように、上空高くに腕を組みながらこちらを見ている機兵がいた。
「何であんな所に機兵がいるんだ? くっ⁈ な、なんだ⁈」
急に頭にノイズが聞こえだす。
『まだ終わってはいないぞ』
俺の頭に聞こえたノイズと共に聞こえた不気味な声。
俺は頭を抱えていると、赤い月がさらに怪しく輝きだす。
「月がさらに輝きだした⁈ 何がどうなっているんだ? いや、そんな事より、早くクラナを安全な所に避難させないと」
俺がもう一度月を見ると、先程の輝きは収まっており、機兵もいなくなっていた。
気のせいだったのだろうか?
ズズズ―――
下を見ると、モンスターが落ちた場所が衝撃によってアリジゴクが発生していた。
モンスターは生きていたとしても地中深くへと引きずり込まれ、出てはこれないだろう。
周囲を見渡すと、モンスターの掃討にはあと数分で終わるであろう事が伺えるほど、数は少ない。
「大丈夫ですかああああああ――⁈」
穴が空いた場所からクルーのみんなが俺に声をかけていた。
「大丈夫で――す! 今そっちに向かいま――す!」
「あれ⁈ なんでクラナがそこにいるんだ⁈」
「あ、ほんとだ!!」
クルーのみんなが何故ここにクラナがいるんだと困惑と心配の声が交差する。
さて、どうやって説明をしようか――
シュルシュル――
「あ、危な―――い!!」
「え?」
俺の足に触手が勢いよく絡みつく。
「な、なんだこれ⁈」
触手の先を見るとアリジゴクの中から触手が伸びていた。
まさか――
『グワアアアアアアア――!!!!』
「モンスターだ!! アリジゴクの中からモンスターが現れたぞ!!」
俺が吹っ飛ばしたモンスターがアリジゴクから顔を出す。
先程まで、お前には触手何か無かっただろうが⁈
なぜ急に触手が生えだしたんだ⁈
俺がそんな事を考えていると、俺の足に絡まる触手が強く引っ張りだし始める。
両手はクラナを抱き抱えているため使えない。
触手が絡まっていない足で蹴るが、弾力が思った以上にあり、切る事ができない。
「このままじゃ、あのモンスターの様に、アリジゴクへとクラナまで引きずり込まれてしまう」
俺だけならアリジゴクに引きずり込まれても大丈夫だ。
だが、クラナはまで巻き込むわけにはいかん!
しかし、両手が塞がり、片足を触手が絡みついているせいで、バランスよく飛行ができない上に、火力が足りないせいで徐々にだが引き込まれている。
まだモンスターがアリジゴクから顔を出しているおかげでなんとか飛行できてはいるが、アリジゴクにモンスターまで吞まれたら、その勢いで一気に引き込まれてしまう。
なんとか打開策を考え――
「クラナ――!!」
突然大きな叫び声が響き渡る。
「デュノさんッ!!」
デュノさんが、モンスターの掃討を終え、俺達に気付き、もの凄い速さでこちらへ向かって来てくれたいた。
これはナイスタイミングだ!
「これで助か、うおっ⁈」
急に足がグンっと重くなる。
下を見るとモンスターがアリジゴクへと吸い込まれる方が早かった。
「ぬぅぅぅうううおおおっ⁈」
俺はバランスを保ちながら両足に火力を出し、デュノさんが来てくれるまで持ち堪える。
そして――
「デュノさんクラナをお願いしますっ!!」
デュノさんが来たと同時に、クラナをデュノさんがいる方へと投げる。
「クラナ大丈夫っ⁈」
よかった。
上手くキャッチしてくれた。
「坊やっ⁈」
「迅人殿ッ⁈」
オレオールさんと夜煌、二人の声が聞こえ、そちらに視線を向けると、今にも飛び込んできそうな形相をしていた。
ダメだ、二人が来ても間に合わない。
「来るなっ!! 俺は大丈夫だから、目的の場所で待っててくださいっ!!」
俺は二人に叫ぶことで、静止させる。
すると、俺の声が聞こえたのか、二人は笑顔で親指を立て、こちらに向けていた。
その姿を見た俺は、二人に信用してもらっている事に安堵を覚え、一瞬だが目を閉じる。
俺は引き寄せられる力が増した事を感じ、衝撃に備えるため、目を開ける。
だが、思いがけない光景が俺を混乱へと陥らせた。
「んんん―――⁈」
「なっ⁈」
瞳を開けると、両手を広げ、涙目のクラナが俺目掛け落ちてきていた。
何でクラナが落ちて来るんだよッ⁈
先程まで気を失っていたじゃないかっ⁈
上を見ると、先程までサムズアップしてくれていた二人から笑顔が消え、大きな口を開け、何かを言っているが何も聞こえない。
周りのクルー達は皆頭を抱えている素振りを見せている。
下に視線を向けるが、もう間に合わない。
俺は急いでクラナを抱き寄せる。
『グワアアアア―――!!!!』
モンスターの断末魔が聞こえる。
上を見ると、デュノさんがこちらへと腕を伸ばしている。
全てが光景がスローに見える。
けれども間に合わない。
俺とクラナはアリジゴクへと呑まれていったのであった……
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