ガルガンティア
ドゴーンッ⁈
外から強い衝撃音が響き渡っている。
外は既に戦闘が始まっている。
だが館内に戻ると戦闘による衝撃音は聞こえなくなる。
豪華客船に乗っている人々は何事もない様な表情で、各々楽しんでいた。
俺はその不思議な光景を見て、呆気に取られていると、俺の肩をポンッと叩かれたので、横を見るとオレオールさんがいた。
「坊や戻ってきたんだね」
「あ、はい。 おやっさんに戻る様言われたんで。 それで、避難場所はどこなんでしょうか?」
「坊やがいるこ・こ・が避難場所さね」
「こ、ここがですかっ⁈」
人々が大勢集まって、各々で楽しんでいるこの空間が避難場所だと?
「信じられないって顔だね」
「そりゃそうでしょうよ! あ、夜煌は⁈」
「夜煌ちゃんならお友達と一緒に部屋にでもいるんじゃないかい?」
「夜煌もこの状況なのに、何呑気に……オレオールさん、俺達もモンスター退治を手伝った方がいいんじゃ?」
「い~んや。 あたし達にできる事はないよ。 あたしたちが出過ぎた真似をしたら、逆にじいさんにこっぴどく叱られるよ。 むしろ、じいさんの船に出くわしたモンスター達が気の毒さね」
「たしかにおやっさんや、デュノさん、その他のクルーの皆さんも強そうでしたけど……本当にいいんですか?」
「慌てる事はないさ……そうか……坊やは知らなかったね」
「何をですか?」
「坊やは知らないだろうから、教えるけど」
「なんですか?」
「このじいさんの船はね、古代機兵なんだよ」
「こ、この船がですか⁈」
「あぁ、そうさね。 この豪華客船はじいさんの船でもあり、古代機兵でもあるのさ。 その名も『巨人』」
「ガ、ガルガンティア……こんな大きな船が古代機兵だなんて」
「そりゃ信じられないかもしれないがねぇ……こう周りが煌びやかだし、通常の機兵と比べたら大きさの規模も違う。 坊やの信じられないって気持ちも分かるけど、これが現実さね」
「俺はずっと古代機兵の中に居たって事ですよね……」
「そういう事になるさね」
「な、なんて事だ……」
「ぼ、坊や? 大丈夫か――」
「俺はずっと古代機兵の中に居たんだああああああ―――!!!」
「ぼ、坊やっ⁈」
「あ、すいません! 突然取り乱してしまいまして。 えへへ」
「あ、い、いや、坊やが嬉しそうならいいんだよ。 それじゃ、何も心配する事は無いから、じいさん達に任せときな。それじゃあたしは自分の部屋にいるから、何かあったら会いにきな」
「わかりました」
そう言い、オレオールさんは自分の部屋へと戻っていった。
あからさまに俺の行動に少し引き気味だったのが伺えたオレオールさん。
だってしょうがないじゃないか……まさか自分があの古代機兵の中に居たなんて思いもしなかったし、昔からの憧れだったんだからさぁ。
でも、次からは人前であの様な事は控えよう……できるかな?
「しっかし、この船が古代機兵だとは……ねぇ」
俺は外がどうなっているのか気になり、見に行く事にした。
「うわっ! すごいな」
外を見ると、数多くの機兵が大中小様々な大きさのモンスターを掃討していた。
クルーのみんなが操縦しているだろう機兵の、一糸乱れぬ華麗な動きに目を奪われてしまった俺は、その動きをくいる様に、いつか自分も機兵を持つ時の為に、目に焼き付けていた。
とくに目を奪われたのが、外装が黄色と黒の機兵だ。
「デュノさん半端ねぇ……」
あの機兵はデュノさんが操縦している機兵である。
とにかく半端ないスピードに対し、正確な攻撃に加え、周りのクルー達にも目を配りながらサポートも怠らないその行動に感動していた。
「一度でいいから見てみたいとは思ってはいたけど、まさかそのチャンスが訪れるとは……不謹慎だとは思うけど、嬉しいなぁ……」
瞬く間にモンスターの群れは数を減らしていく。
このままいけば、古代機兵・ガルガンティアの出番は無さそうだ。
それはそれで残念ではあるけど、致し方がない。
「しっかし、モンスターの攻撃を喰らっても、この船の外装はビクともしないんだな……これも
古代機兵の成せる事なんだろうけど……うん? あれ? クラナが何でここにいるんだ?」
おやっさんが指定したはずの避難場所に居るはずのクラナがこんなとこになんでいるのか不思議に思ったが、すぐにその疑問は消える。
通路の先にいるクラナは俺に気付いていない。
それに対し俺は、大きく手を振っていると、俺に気付いたクラナは暗い表情から明るい表情へと変わる。
クラナは俺の方へと駆け足で近づいて来る。
俺も徐々にクラナとの距離を詰める。
バアアア―――ンッ⁈
突如爆発音が船内に響き渡る。
爆発音はちょうど俺とクラナの中間辺りに起こり、黒煙が吹き上がり、その先には大きな穴が開いていた。
そして、黒煙の先には得体の知れない影が現れる。
その瞬間、俺は本能よりも先にクラナのいる方へと体が動き出していた。
「クラナ逃げろッ!!!」
「んんん―――⁈」
船内に開いた穴から巨大な腕が凄い速さでクラナを鷲掴み、そして、クラナは一瞬で船外へと消える。
黒煙が収まり、俺は急いで外を見る。
夜空に赤く怪しく輝く月……その月に重なるように、そこには巨大なモンスターが空に浮かんでいた。
そして、そのモンスターによって鷲掴みにされ、気絶しているクラナの姿があった。
その光景を見た俺は、体全身に怒りが込み上げてくるのを感じたが、抑える事はしなかった。
「龍の喚起・始纏共鳴!! 『蒼龍の爪拳』・『蒼龍の震脚』!!!!」
俺は瞬時に二人を呼び、モンスターが反応すらできない程の速さで、込み上げてきた怒りを拳に籠め、モンスターの頬を殴りつけていた。
目を留めていただき、ありがとうございました。
ブクマ、★★★★★で応援いただると、励みになります!
※誤字脱字報告、ありがとうございます。
とても感謝しています。




