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静けさは続かない

あれから数日が経ち、俺と夜煌はオレオールさんの厳しい修行に明け暮れていた。

だが苦しいはずなのだが、自分の成長が実感できている事もあり、さほど苦でもなかった。


「そう思っているのは迅人殿だけでありますからね」


そう愚痴っている夜煌だが、なんだかんだでオレオールさんとの修行に一生懸命食らいついている。

オレオールさんも夜煌のひたむきな姿勢に喜びを感じているに違いない。


「坊やだけかと思っていたけど、夜煌ちゃんもあたしをワクワクさせてくれるねぇ。 フフフ」


そう仰っていた。

最後のフフフと不敵な笑みを見た俺は夜煌にすこし同情した。


「さ~て、この豪華客船での生活も残す事後2日で終わるからね。 二人とも、やり残したことの無いようにね」


オレオールさんはそう言い残し、展望風呂へと消えていった。

そう、豪華客船での暮らしも残り2日と迫っていた。

2日後には目的地の1つである『ハーデン』に着く。

そこの環境は特別であるとオレオールさんは言い、修行をするには最適だとも言っていた。

ただ、そこは『ヴァンデル』が無い集落らしく、こうして長い時間をかけ移動していたのだ。


「それでは迅人殿、吾輩はここで仲良くなった皆さんと遊んでくるであります」

「お、おお、いってらっしゃい」


夜煌はこの豪華客船で居合わせた他種族と仲良くなっていた。

様々な種族と分け隔てなく仲良くなっていた夜煌を見ていると、これがあるべき姿なんだと思わせてくれた。

世界ではやはり、人種による差別が消える事なく残っている。

俺はそういった人種がどうのこうのといった事は気にした事がない。

だが、人間というのは如実にそういった差別が多い種族だと、他の世界でも言われている。

夜煌を見て、俺の気持ちはさらに強くなった。

人に優しく、時に厳しく、そして自分自身にはさらに追い討ちを掛けるか如く厳しくあろうと!


「さて、おやっさんのとこに行きましょうかね」


俺は踵を翻し、ドックへと向かった。


「ん――んっ⁈ んん――やあああ―――っ⁈」

「こ、これ、クラナやっ⁈ そ、それ以上そんな姿を見せたらじいちゃん、迅人を殺しちまう」

「おい、何孫の前で物騒な事を言ってるんだこのジジィは」

「ワーッハッハッハアア――!!」


俺はあと2日でお別れだと、ドックにいる皆さんに報告と、短い間でしたが、とてもお世話になった事の感謝を伝えた。

そしてら、クラナが弾丸の如く俺に突っ込んできたと思いきや、こうしてゴネにゴネまくり、おやっさんは血の涙を流しながら俺を殺そうとハンマーを持ち上げ、それを笑いながら止めに入るクルーの皆さん。

和気あいあいとしていたこの光景が、あと2日で終わってしま――


ビィー、ビィー、ビィーッ!!!



突然けたたましいサイレン音が鳴り響く。

先程まで和気あいあいとした雰囲気が一変し、みんなから笑顔が消え、一瞬で鋭い眼付へと変わる。


『モンスターの大群が接近中!! 直ちに総員迎撃の準備をし、駆逐せよ!!』


「おいっ!! 聞いたかッ⁈ オメエら直ちに準備しやがれぇ―――ッ!!!」

「「「「「「「おうっ!!!!!!」」」」」」」


おやっさんの呼びかけで、クルーたちから気迫の籠った返事が響き渡る。

クラナを見ると、クラナも現状に起こった事を理解したのか、クルーのみんなと同じ、真剣な顔つきに変わっていた。

こんな子どもがこの様な顔つきになるとは思ってもみなかった。

ほとんどの子どもは恐怖に陥る。

だが、クラナはそんな事を微塵も感じさせない。


「おいッ! 迅人!」

「あ、はいッ⁈」


クラナを見ていたら、横からおやっさんから声がかかる。


「いつまでクラナを見つめちょるんじゃッ⁈ その目ん玉ほじくり返すぞッ!!」

「この状況で何を言ってんだこの孫を溺愛し過ぎのジジイッ!!」

「孫を溺愛してなぁ~にが悪いッ⁈」

「おやっしゃん、早く皆に指示を出してくだしゃい」


俺とおやっさんの間に入って、指示を仰ぐデュノさん。

さすがおやっさんの補佐官である。


「お、おうッ! クラナや、早く安全な場所に避難せい。 そして、迅人よ」

「あ、何ですか?」

「お前はモンスターに呑まれ――」


バコッ⁈


「はいはい。 今はふざけている場合じゃないんですから……ね」

「う、うむ……迅人は安全な場所に隠れちょれ」

「は、はぁ」


デュノさんから頭が凹むほどの一撃を喰らい、素に戻るおやっさん……デュノさん怒ると口調が変わるんだ……気を付けよう。


目を留めていただき、ありがとうございました。

ブクマ、★★★★★で応援いただると、励みになります!

※誤字脱字報告、ありがとうございます。

とても感謝しています。

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