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それがいい

「おい、ちょいこっちにこい」

「うん? なんだい?」


じぃさんに呼ばれるあたしは、じぃさんの顔から『お前だけこい』って感情を読み取る。

坊やの方を見ると、じぃさんの孫と仲良く話をしていた。

あたしは坊やに、じぃさんと話があるからと伝え、じぃさんがいる部屋へと入る。


「オレオール良かったのぅ……お前にまた弟子を取る勇気が湧くとは……待った甲斐があったと言うもんじゃな……」

「あははは……年甲斐もなく……まぁ、坊やに惹かれちまったんさね」

「そうか……その気持ち、分かる気がするわい。 迅人には何か人を惹きつける魅力がある」

「じぃさんにそう言われたら将来は安泰かね?」

「いや……そうもいかんかもしれん」

「どういう事だい?」


先程まで優しそうな顔をしていたじぃさんが眉間に皺を寄せ始める。

こんな顔をあたしは久々に見た。


「迅人は機兵(ギア)に無我夢中だったんじゃ……それに、わしも迅人を気に入った……じゃから、こっそりと迅人に合う機兵を見繕うと思ったんじゃ……そしたら……」

「そしたらどうしたってんだい?」

「迅人から機兵との数値が検出されなかった」

「そ、そんな訳ないだろうさね⁈ じぃさんとうとうボケちまったんじゃ――」

「んな訳なかろうが……あ奴にバレない様、何度も調べさせてもろうた……じゃが、迅人にマッチングしそうな機兵は現れなかったんじゃ」

「それがどれだけ稀な事か、じぃさんにだって分かってるだろう」

「あぁ……どれだけ小さな数値だとしても、数値が検出されないのはおかしい……そして、その者と機兵がマッチしない事も、現代ではありえんし、今では機兵は作ろうと思えば作れる時代じゃ……数値さえ検知でき、あとはその数値を参考に機兵を作れば100%の確率でマッチし、その者と機兵の間に絆が生まれ、共に人生を歩む相棒になる……じゃが、もし、『古代機兵(エンシェンント・ギア)』だった場合、そう簡単な話しではなくなる……オレオールよ、お主みたいにな」


そう言うとじぃさんの眼が鋭くなる。


「『古代機兵』の場合、現『機兵』とは全てが変わってくる。 お主の場合、ひょんな運の巡りによって、お主と、『ダンケルク』は出会い、そして、お主は『ダンケルク』に主として認められ、数多くの戦争を終わらせた」

「昔の事さね」

「お前にとってはバツの悪い話になるが、お前にとって、『機兵』探しはとても難が付く程難しかったからのぅ」

「あたしの場合は、数値がデカすぎて、あたしに合う『機兵』が見つからなかっただけさね」

「あの時もそうじゃが、今でもお主クラスの数値に見合う『機兵』は作れん。 それを考えると、迅人はお前以上に苦労が絶えんだろうのぅ」


じぃさんの話を聞くに、果たして数値が検知されなかった坊やに合う機兵が現れるだろうか?

あたしが知る中で、数値が検知されない者は初めてだ。


「けど、その方が良いのかもしれないね」

「お前ならそう言うと思っとったわい」


じぃさんはあたしから視線を坊やへと移す。

あたしも視線を坊やへと移す。

坊やはみんなと仲良く話している。

その姿を見たあたしは、このまま坊やに『機兵』は現れないで欲しいと思ってしまった。



♦♦



「待たせたね」

「いえ、そんな待っていませんでしたし、久々の再開なんですからもっと話していてもよかったですよ」


俺がそういうとクラナが俺の腕を引っ張る。


「あぁ、大丈夫だよ。 俺はまだここに居るからさ」


俺がそう言うとクラナは満面の笑みを見せる。


「坊やはじぃさんの孫に好かれてるようだし、あたしはそろそろ自分の部屋に戻ろうかね」

「え、いいんですか?」

「あぁ……積もる話もあるだろうが、あたしとじぃさんとの中だ……今じゃなくともいいんだよ」

「そういうもんですか?」

「長生きしてると、お互いが何を感じてるのか大体は感じ取るもんさね」

「あぁ……オレオールさんの能力でしたっけ?」

「言っとくけど、あたしの能力は戦いの中ででしか発揮はしない様に制限をかけてるんだよ」

「うえっ⁈ それを早く言ってくださいよ! ずっと頭の中を盗み見されてると思っていたんで、あったまの中をゴチャゴチャにしてずっとオレオールさん対策していたのに」

「器用な事をまぁ……この力は完璧な様で完璧ではない。 この力をフルで使いこなせていたら今頃天下を取ってるよ」

「使いこなせないんですか?」

「使いこなせないさ……だから制限をかけている事で、こうして元気でいられているんだ」

「元気?」

「制限を掛けずにいたら、あたしは今頃廃人になっているよ」

「は、廃人ですか?」

「そうさ。 無闇に人の頭の中を覗けば、膨大な情報が一気に頭に流れ込んでくる。 それに耐えられる人間はいない。 だからあたしは戦いの最中だけという制限をかけているのさ。 それでも過ぎた力さ……だから坊やのそのバカみたいな考えはもぅ必要……無いから安心しな」

「何ですか……その妙な間は?」

「気のせいさね。 さて、あたしは戻るからね~(笑)」


そう言うと踵を返し、部屋へと戻っていくオレオールさん。

今のはいったいどっちなんだ?

ちょっとの間なら人の考えを読み取れるんじゃないのか?

でも体に負担がかかるんだよな……どっちなんだ?


グイッ


「うん?」


俺がそんな事を考えていると、心配そうに見つめるクラナ。

そんなウルッた瞳で俺を見ないでくれ。

そんなかわいいクラナを見た俺の悩みは一瞬で消えたのであった。


目を留めていただき、ありがとうございました。

ブクマ、★★★★★で応援いただると、励みになります!

※誤字脱字報告、ありがとうございます。

とても感謝しています。

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