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record and memory

俺は死んだのか?


ここはどこだ?

瞼が重い……開かない……開けたくない。

この暗さがなぜだか心地良い。


「ほれ? 何をしておる。ここは其方の精神世界だ。死んではおらん」

「あれ? この声はラグナさん? すいません……瞼が重くて目が開けられませ――」

「ほれ! しゃっきとせんか!」

「いてっ⁈ な、なんですか急に⁈ 今叩きました⁈」



俺はラグナさんに叩かれ、重い瞼をカッと開ける事ができた。

目を開けると、先程とは打って変わり、神々しさが半端ないラグナさんがいた。


「仕方がなかろうに……其方がいつまでたっても寝ぼけておるからではないか」

「あ、乱暴に起こしていただきありがとうございました。おかげで一瞬で夢ではない事が分かりましたので」

「それはなによりだ」

「それで、俺は死んでないと言っていましたが、ならなぜ俺はここにいるんですか?」

「今から其方に私の膨大な知識をダウンロードするために、意識を切ったのだ」

「意識を切ったんですか? それじゃ俺は強制的に意識を切られたって事なんですね?」

「そういうことだ。其方は数分間私の力を抑え、ある程度順応したところで、私が意識を切った。今から私がすることは、意識がある状態で行うと、頭がパンクして、精神がおかしくなってしまうからな」

「強制的に意識を切ってもらってよかったです。それと、今からそのラグナさんの知識を俺にダウンロードするみたいですが、中止は――」

「できんな」

「でしょうね! その有無を言わさないところ、うちの親そっくりですよ! ある程度俺に耐性があってよかたですね!」

「其方の親はちゃんとした教育を子に施しておるのだな! 関心関心!」

「皮肉ですよ! ひぃ~にぃ~くっ! 皮肉!!」

「さて、それではいくぞ」

「あ、ま、待って⁈ な、なんだこれ⁈」


俺の頭に何か流れ込んでくる。

すごい膨大な量の記録。

そして、ラグナさんの記憶。

それらが俺の頭の中に流れ込んでくる。


「迅人よ。ここでも其方の力、【順応】を意識するのだ」

「そ、そうは言いますが⁈ こ、これはオエッ⁈ き、気持ち悪い⁈」


先程の痛みとは打って変わり、頭の中が高速でグルグルと回っている。

そして、ラグナさんの記憶を読み取っていて、その過酷だった日々を見る事になり、気持ちが折れそうになる。


「少し酷かもしれんな……だが迅人よ。ここを耐え抜かなければならん」


そう言ったラグナさんは俺の背中を大きな尻尾で起用に擦ってくれた。

その優しさが俺の折れそうな心を奮い立たせてくれた。





あれからどれぐらいの時間が過ぎたであろうか?

いつの間にか、あの苦しさを気にしなくなった。

まぁ、順応したってことでしょう。

だが、俺はとういうとそれどころではなかった……


「うむ。迅人よ、よく耐えたな! おいおい? 何を泣いておるのだ? もう苦しくはなかろうに?」

「うぅぅぅぅ……だって……ラグナさん……こんなの、こんなのあんまりだ!」


俺はラグナさんの記憶を見た。

そして、ラグナさんの祖絶な人生を知った時、俺はずっと泣いていた。

こんなの耐えられないよ……俺には……無理だ。


「其方は心優しいな」

「ラグナさん! これは優しさ云々! こんなの、こんなの――」

「迅人よ……仕方がないのだ。あの時はこれが最善――」

「これが最善? これは理不尽にも程がある! 俺は、俺だったら――」

「迅人よ……怒りは力になる。だがそれでは何も解決はせん」

「俺はラグナさんみたいにできた人格者ではありません! 俺は――」

「ありがとうな迅人よ……私のために怒ってくれて」

「ラ、ラグナさん……」


俺はラグナさんのその一言で怒りが収まってくる。

ラグナさんがなぜ、こんな所にいて、なぜ、無数の杭に刺されているのか?

俺はその理由を知って、人間の本質を知り、怒りで爆発した。

だが、当の本人は仕方がないと言うではないか……何でそんな事を言えるのか?

俺にはラグナさんの気持ちは分からない……けれど、それぞれの考え方は無数にある。

ラグナさんの気持ちを否定することは俺にはできなかった。


「私は人間と共に戦い、魔王を倒した。それまでは皆和気あいあいとしておった。だが、魔王を倒した後、脅威が消え去ると、人間は私を脅威として恐れ始めた」

「……」


俺は静かにラグナさんの話を聞くことに徹した。


「魔王を倒したことで、邪魔者がいなくなり、私が人間を滅ぼすために暗躍していると噂もされた……そんなつもりなどなかった。だが信じてはもらえなかった」


あちらの人間もこちらと同じで噂に流される傾向がある。

言葉には悪意が混ざると瞬く間に広まり、根も葉もない事まであったことになる。

そして、言葉で人を殺すこともできる凶器と化す。


「私はこのままではよくないと思い、人間が寄り付かない所に身を潜めた……だが、月日が経ち、私のもとに、かつて共に戦った仲間が現れた……私を殺すために」


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