表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/107

始纏

俺はオレオールさんと修行を開始して10日目に入っていた。

夜煌も入り、一緒に修行を付けてもらっている。

今は武器を使わず、ただひたすらに殺し合い、いや、手合わせをひたすらにやっている。


「はい、お疲れさん。 少し休憩を取るよ」

「ハァ、ハァ……やっと休憩であります」


夜煌は修行の辛さもありその場に倒れる。

夜煌は頭をこすりつけながら張って移動している。


オレオールさんはつい最近本当に第一騎兵隊を辞めた。

最初はジョークだと思っていたけど、本当に辞めたと実感したのは、話をし終えてからだ。

なんと、多くの隊長達がここに赴き、そして、こぞって同じ言葉を投げかけていくからだ。


『なぜ辞めるんだっ⁈』


そして、言い終えると、俺を睨みつける隊長達……

ヤバい状況に、さらに追い討ちを掛ける。


「そうだ! 坊やと皆腕試しをしたらいいさ」


この言葉を皮きりに、隊長達の殺る気を刺激してしまった……

そして、隊長たちは有無を言わせず腕試しを強要される俺……

俺は青ざめ、そして、オレオールさんは満面の笑みを見せていた。

あんた絶対にわざと言っただろう


「よく生き残ったよな……俺……」

「そりゃ~それだけ坊やが強くなっている証さね」

「Fクラスの俺がですよ……それでも部隊長達に勝てずとも、死ななかったのは自信にはなりますかね……」

「坊やは……いや、今のままでいいさ」

「何ですかそれ?」

「気にするだけ無駄さね。さあ! 休憩は終わりだよ!!」

「ほえっ⁈ もうでありますか⁈」

「あん? なんだって?」

「いつでもいけるであります!」

「若いってのは良い事さね!」


オレオールさんの殺気が籠った言葉は、全ての者を奮い立たせる。

ちなみに俺に向けられてはいないが、夜煌と同じ反応を見せる。


また殺し合い、いや、手合わせをひたすらとこなしていくのだが、これが今の俺にはハマっている!

実際、オレオールさんとの修行はキツイが、すごく身になっているのを感じているんだわ!

いや、ほんとオレオールさんは教えるのがとても上手なのだ。

だが、教えるだけではなく、自身で考えなければいけない事に関して、ちょっと壁にぶつかると自分自身で気付けるように導いてくれるのだ。

これは先生と教師は違うと言うが、オレオールさんはちゃんとこの2つを使いわけて導いてくれる。

学校の勉強はからっきしな俺だったけど、オレオール先生の授業は毎日が楽しい。

疑問に対してもちゃんと教えてくれるし、ちゃんと次の日になると前日の続きから教えてくれる。

学校の授業だと、続きからではなくすっ飛ばして教えるせいもあり、勉強についていけない事もあった。

結局ついていける者は塾に通い、そして家庭教師を雇い格差が広がって行く。

質問をしてもすぐあしらったり、テストになると習ってもいない問題が出題される始末。

極めつけはこうだ。


『君たちは黒板と教科書に書かれた事だけを書いているが、私が話している言葉の中からもテストの問題が出される事を頭に入れとくといい! この子を見なさい。 この子のノートは、黒板に書かれていない私の言葉もちゃんと書かれている。私がこう言わなくとも、こうしてノートに書く癖を付け、この子を見習いなさい』


それを聞いたのがテスト3日前に言われ、俺もそうだが、ほとんどの生徒は絶望してたね。

そのせいで覚えていた事が一気に消し飛んだ。

先生に称賛されていた子は裕福でいて、さらには秀才ときたもんだ。

先生のお気に入りの子で、さらには先生が受け持つ部活の生徒。

後から聞いた話だが、先生が受け持つ部活の生徒には話をしていたと聞き、学校は平等ではない場所だと悟った。

現に、テストの内容は黒板に書かれていない事や、教科書には載っていない箇所が出ていたよ。

だから俺は勉強嫌いになった。


「まぁ、言い訳にしかならないか」


その日にやった内容を、復習しても、次の日には続きからやる訳でもなく、すっ飛ばして授業を教えられていたら混乱するわ。


「今じゃそんな先生が校長をやっているんだから、世も末だわ」

「どうしたんだい、坊や?」

「何でもありません。 ただ、昔の理不尽を思い出していたんです」

「そうかい? その顔を見たら、よっぽどな理不尽を強いられていたんだね」

「ははは、顔に出ていましたか? 気を付けます」


しまいには、『先生、昨日やった所から5ページも進んでいます』って言った生徒がいたが、『お前達は先生の言われたページをめくればいいんだ』の一点張り。


そんなん言われたら勉強嫌いになるやろが!


「坊や……さっきよりも眉間に皺が寄っているけどどうしたのさ?」

「いや、オレオールさんの爪の垢を突っ込んでやりたい奴の顔を思い出しまして」

「それを言うなら爪の垢を煎じて飲むの間違いじゃないのかい?」

「そいつはいっそ煎じず、原形を保ったまま苦しませて飲ませるのが一番いいと思います。ですから間違ってはいません」


この10日間の修行で、俺には変化があった。

俺が操る蒼炎以外にも他の属性を操る事ができるようになった。

これも巌樹様がくれた【黄炎】のおかげであろう事は言うまでもない。


片鱗を見せ出したのは、オレオールさんとの手合わせ中の最後の方で、俺は意識を失った時、オレオールさんの話によると、俺がフォルムチェンジをしたと言っていた。

俺は意識を失っていたため、記憶はまったくない。

けど、思い当たるとしたら『蒼炎の鎧装』だ。

ヴェルが勝手に動き、フォルムチェンジをしたんだと感じた。

オレオールさんはフォルムチェンジをした俺を見て、黄色い炎を纏い、オレオールさんと引き分けたと言っていたが、まぁ、オレオールさんは最後の方で手を抜いてくれたんだと思う。

俺を悲しませない配慮だろう。

あれ以来、ヴェルは夢には出てこないし、試しにヴェルを使おうとしても変化しないのだ。

まぁ、今はできない事を嘆いていないで、今できる事に専念する事にした。


さて、俺は【黄炎】を出してみると、【蒼炎】とは違い、なんと石が形成されるのだ。

これには驚いた。

拳に纏わせれば石の拳ができ、攻撃力が上がり、全身に纏わせれば防御力が上がる。

極めつけは、イメージをした物を形作る事も出来た。

まだ上手くは使いこなせないが、【黄炎】を使いこなせるようになれば、面白い事ができそうだ。

だが、俺が考えている面白い事とは、基盤となる物がなければ成し得ない。

どこかに落ちている訳でもないし……まぁ、当分はこの案は眠らせておこう。


話しは変わり、俺はオレオールさんに【始纏(してん)】の事について教えてもらっていた。

俺の聞く初めてのワードだからだ。


話しによると、【始纏】とは自身が持つ力がより鮮明な形となり、自分自身のオリジナルの武具がより強力になって具現化されるというのだ。

この【始纏】は誰もが辿り着く程簡単な物ではないともオレオールさんが言っていた。

【始纏】までに行き着く事無く生涯を終える者の方が多いとも言っていた。

それだけ辿り着く事が難しいという事だ。


だが、俺はさらに驚く事を聞く。


【始纏】というのには、まず【始纏】に行きつく前に越えなければいけない壁があるのだとも聞いたのだ。


それは【式才牙(しきさいが)】である。


【式才牙】というのは自身が持つ才によって、自身に適した武具が現れるのだという。

これに目覚めてしまえばわざわざ武器を買わずに済むし、自分にあった武器が分かるのだから一石二鳥な上に、壊れても時間が経てば直るというのだ!

しか~し!

そう言われても、俺は【式才牙】をすっ飛ばし、【始纏】を使っていた事になる。

恐らく、ラグナさんから譲り受けた『龍の心』に、俺が持つ『順応』の影響だと考えた。

そのおかげなのか、俺はいつの間にか【始纏】を使えていたんだろう……運が良いのか悪いのか……


だが、そこでふと疑問が浮かぶ。

夢の世界でヴェルが言っていた事を思い出した。


「ヴェルはこう言っていた……【始纏】をすっ飛ばしていたと……それで、【鎧纏(がいてん)】の手前とも言っていた……」


もし、俺の仮説が正しければ――


「俺はまだ【始纏】に行き着いていないのか?」


目を留めていただき、ありがとうございました。

ブクマ、★★★★★で応援いただると、励みになります!

※誤字脱字報告、ありがとうございます。

とても感謝しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ