それは唐突に……
俺はオレオールさんの豪邸に戻ると、既にオレオールさんは庭で夕空を眺めていた。
「ただいま戻りました」
「お帰り坊や。 おや? 随分と疲れてる顔をしてるじゃないかい?」
「はぁ……色々とありまして……あの、オレオールさんにお願いがありまして」
「何だい?」
「あの実は……俺の友達も一緒にオレオールさんとの修行に参加させてもらえませんか?」
「こりゃ驚いた。 坊やにお友達がいたとわね」
「おっと……これでもちゃんと友達はいるんですよ。 多くはないですけど」
「友達は多くいればいいってもんでもないさ。 いざピンチになった時に、助けに来てくれる友達がいる事が大事さね」
「……それなら多少なりとも自信は……いや、やっぱ聞かなかった事にしといてください。自分で言っといて、来てくれなかった時のショックを考えると立ち直れなおれなんで」
「坊やなら大丈夫さ。 それで、坊やのお友達ってのはどんな子なんだい?」
「え、え~っと……黒くて、可愛くて、お猿さんです」
「……黒くて可愛いお猿さん……坊や、もしかしてその子は夜猿一族かい?」
「ご、ご名答です」
「坊や……まさか巌樹様と面識があるとは思わなったよ。 ま~さか、巌樹様をお守りする戦闘民族である夜猿一族が、坊やに一族の者を任せるとは……」
「あぁ……言おうとは思っていたんですが、実は巌樹様とお会いしまして……」
俺は事の経緯をオレオールさんに話す。
+++++
「……」
オレオールさんに事の経緯を話してから、険しい顔をして考え込むオレオールさん。
「そんな事があったとは……坊やのおかげで最悪の状況にならずに済んだよ。 虚ろわざる者……あいつらが対処するだろうし、まぁ、近い内に会うだろうさね……坊やありがとぅね」
いくつか聞き取れなかったが、首を突っ込んでも良い事は無い。
俺は聞き流す事にした。
「いえ、俺なんかでお役に立ててよかったです」
「巌樹様があのダンジョンをお創りになった事で、あたしや他のハンター達がどれだけ成長したか……知ってるかい? あのダンジョンで死んだ者は一人もいないんだよ」
「俺もそれを聞いて最初は驚きました」
「普通はダンジョン内で死んだら遺体はダンジョンに吸収される……だが、巌樹様がお創りになっているダンジョン内では死んだら入り口に戻される。 生きたままで。 どういった構造でそうなっているのかは巌樹様のお力なのだろうけど、ちゃんとドロップアイテムも現れるし、モンスターも現れる。 死なないダンジョン。 進めば進むほど、ドロップアイテムもレア度も上がっていく。 経験値も上がるとなれば皆の士気も上がり、ハンターにとっては嬉しい限りさね。 しかし、巌樹様に対して、果たして良い事があるのかは分からないけどね。 まぁ、けれど、ダンジョンが巌樹様によって動いている事、巌樹様の存在を知っているのは極一部の者達だけ! もし、巌樹様が死んでしまったら、ダンジョン諸共消えてなくなってしまう……そうすると、これからハンターを目指そうとする者達が成長する速度が遅くなり、敵に遅れを取る事になりかねない……まぁ、この星に限らず、どこの世界でも言える事だけど、それだけ巌樹様が必要な存在だって事さ……だが、それよりも、あたしはもう二度と巌樹様に会えなくなってしまう事の方が嫌なんだけどね。 あのお茶目な巌樹様を見ると元気が出る。 坊やのおかげで危機を逃れた……近い内に巌樹様にお会いしに行こうかねぇ」
「それがいいかと。 巌樹様もオレオールさんに会いたそうな顔をしていました」
「そうかい。 なら近い内に会いに行こうかね? それで夜峩と夜宵には会ったのかい?」
「はい。 お会いしました。 実は俺の友達ってのが、お二人のお子さんで」
「それは本当かい⁈ いや~、あの二人の子どもだ……素質はどうあれ、元気な子なんだろぅさ」
「はい……おかげで、男か女かで揉めましたが……」
「どういう事だい?」
「じ、実は……」
+++++
「は―――はっはっは! そいつは災難だったんねぇ! けど、坊やが鈍感なのと確認をしなかったのが悪いさね」
「ごもっともなお答えで、何も言い返せねぇです」
「まっ! これも経験だと思って、今後につなげるこったね」
「面目ねぇっす」
「さて、驚き、そして笑かせてもらったんだ。 今度はあたしの番さね」
「心臓に悪いのは勘弁を……」
「大丈夫だよ。 で~は、今日あたしは王のいる城へと行ってきたとこさ」
「あ、そうだったんですね」
「そして、王に会い、辞めてきた」
おっと……ここで先ほど聞き流した罰が凄い速さで返ってるとは……
はぁ……聞いてはいけないワードを聞いちまった……だが、聞いてしまった手前、ここで俺は何を辞めたんですかって聞かないといけなくなる。
俺が取る方法は1つ……
「あ、俺、お腹の調子が――」
「待~ち~な~」
ベタな行動でどうにかなるとは思わなかったけどさ……
オレオールさんは逃げる俺の肩をガシッと掴む。。
うわっ、凄い、体が1mmも動かないや~あははっ。
「大丈~夫。 すぐ話は終わるからさ。 それで、あたしは王に会い、辞めると言ってきたのさ」
これはもう聞いたら、聞いた事に対し、返せと言っている。
「な、何を……辞めるって何を王様に言ってきたんですか?」
「よくぞ聞いてくれた! あたしは王に第一騎兵隊を辞めると言ってきたのさ~! ニヒッ」
ニカッと屈託のない笑顔を俺に見せるオレオールさんに対し、俺はどうしたらいいのか分からない顔をするしかなかった。
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