表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/107

青空

ここは……どこだ?

気が付いたら綺麗な青空が広がっている。


「俺はたしか……オレオールさんと戦っていて……死んだ――」

「死んでないよ」

「うおおおっ⁈」


突如俺の真後ろから声がして、驚く俺!

心臓がドキドキしてるじゃん!


「ニヒッ」

「ニヒッて……こらこら、人をそうやって驚かさないの……って、君は誰だい?」


女の子は俺をジッと見つめ動かない。

髪は銀髪で、瞳はこの空の様に綺麗な青空色……背丈はだいたい140cmってところか……

うん?

どことなく氷歌に似ていないか?


「私の事分からない?」

「分からないって……俺と君は初め……て……」


俺がそう言うと女の子は悲しそうな表情になってしまう。


「あ、あれ? どっかであったことがあったような~たしかあれは……え~っと……」


だめだ……思い出せん……つか俺はさっきまでオレオールさんと戦っていたんだよな?

いや、確実に戦っていた!

ならなぜ青空の下で目を覚ましたんだ?


「やっぱ俺死――」

「だ~か~ら~死んでないって言ってんじゃん!」

「あたっ⁈ 痛みがある……でも、ならここはいったいどこなんだ?」

「ここはね~、私の世界だよ」

「……私の世界?」


ダメだ……頭が追い付かん……俺はラグナさんの記憶を読み返すが、靄がかかったみたいで良く見えない。

ラグナさんの記憶に夢中になっていると、少女が俺の目の前に顔を出す。


「ねぇねぇ~、私の事まだ分からない~?」


くそっ、まだ続いていたのか⁈

煙に巻いたと思っていたのに、この少女はしっかりしている。

ただ、この様子はあまりよろしくない。

この少女は俺の事を知っている。

人の顔と名前が一致しない事は多々あると思う。

忘れる程、俺はボケちゃいない。

それに、忘れられちゃうほど、辛いものはないからな……

でもヒントはくれてもいいと思うんだ。

間違えるよりかは断然いいと思うんよ。


「ご、ごめんよ~、今すっごい疲れてて……何かヒントをくれないかな?」


我ながら情けない聞き方だ……

ほら見ろ……少女の切なさそうな顔……きっと――


「仕方がないな~! まっ! 私が迅人をここまで疲れさせちゃったんだからしょうがないか~」

「うん? 私?」


どういう事だ?

少女が俺を疲れさせる?

いや、まさか……いや、俺は一線を超えた事はない!

まさか、俺が寝ている間に⁈

いやそれもない!

俺の一番新しい記憶はオレオールさんとの戦いで終わっている!

なら、少女はこんな事を言わないだろう。

俺の過去を見つめ直しても、俺はやはりこの少女に会った事は無い!

うん?

俺を精神的に疲弊させるぐらいの出来事はオレオールさんとの戦いであった……

いや、そんなはずは……


「も、もしかしてヴェルなのか?」


俺が溢した言葉を聞き、少女は満面の笑みを俺に向ける。


「うん! そうだよ! 私はヴェル! 迅人を守る『蒼龍の鎧装(ヴェルギウス)』だよ!」


驚きで声が出ない。

だって目の前にはヴェルだっていう少女がいる。


「な、なんで? え、どうして?」

「やっとね~迅人が私の事を見つけてくれたから、こうして会う事ができたんだよ」

「俺が見つけた? それってどういう意味なんだ?」

「迅人は始纏をすっ飛ばして鎧纏(がいてん)の手前まで来たんだよ」

「始纏? 鎧纏??」

「あれ? そんな事も知らないの?」


お?

何だその反応は?

俺があたかも知ってる体で話しているぞ。

もしかして誰もが知っている事なのか?


「はは~ん……ひょっとして知らずにここまで来たんだぁ……すっごいじゃん迅人! ちょっとズルした私が言うのもあれだけど、私を見つけ出すんだからぁん」

「な、何が?」

「何その反応⁈ もっと喜びなさいよ! はぁ……別にいいよぉ……それよりもさ、迅人が次に私を呼ぶ事があったら、凄い事が起きるから楽しみにしててね! あ、あと、妹たちの『蒼龍の爪拳(イグちゃん)』と『蒼龍の震脚(ドラちゃん)』も会いたがってるから、早く見つけてあげて! 本当なら順番が違うから」

「え、おいっ⁈ それってどういう意味なんだ⁈」

「もう時間が無いから、また今度ね! 次に会える時は妹たちを見つけてからかな? それまでは私を呼んでも応えないから! み~んな迅人に会いたがってるのに、私が先に見つけられちゃったから、今でも私にギャーギャー文句言ってるし、イライラしてる」

「なっ⁈ お、おいっ⁈ え、な、なんだ⁈」

「聞きたい事はさっきのお姉さんに聞いたらいいよ~。 それじゃ、またね~!!」


急に青空が暗くなったと同時に、俺の意識が遠のいて行く。



+++++



「おおおいっ!」

「あら、起きたかい坊や?」

「えっ⁈」


俺はベッドの上にいた。

そして、横を向くと、オレオールさんが綺麗な笑みで俺を見ている。

え、つか、いつから俺の事を坊やって言うようになったんだ?

いや、今はそんな事はどうでもいい!


「あ、えっとぉ……」

「その様子じゃ、『(まとい)』と話していたみたいだね」

「『纏』?」


俺が知らない、聞いたことの無い言葉をオレオールさんの口から零れ、俺はその言葉に反応する。


「ははは。 その反応じゃ氷歌から聞いていないみたいだね」

「あはは……氷歌はわざと教えなかったんだと思います」

「そうだろうねぇ……でも、ちゃんとあの子にも意図があっての事だと思うよ」

「だと思います……氷歌はいつもそうやって俺に気付かせるタイプなんで」

「氷歌が近くにいてよかったねぇ」

「そうとも言い切れませんが……」

「まぁ、あの子は口下手なようだけど、口下手ではない……けど、悪い子じゃない」

「それは分かっています」

「なら、これ以上は必要なさそうさね」


オレオールさんは立ち上がり、ドアノブに手をかけ、立ち止まる。


「準備ができたら坊やに話がある。 聞く気はあるかい?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ