思考との戦い
意識が戻ると目の前は真っ白になっていた。
あれ?
体が動かないぞ⁈
あぁ、そうだ……俺はオレオールさんと手合わせをしていて……
数秒だが意識を失っていたみたいだ。
『蒼龍の鎧装』はまだ俺を認めてはくれていない。
『順応』の力で何とかなるかもと思っていたが、何故か効果が感じられない。
そのせいもあって、気を抜くと自分勝手に動きだし始める。
なんとなく今日はいけるかなと思っていたが、案の定こんな感じだ……
まぁ、俺の力不足な所もあるんだけど、意識を集中しないと、すぐに意識を持って行かれる。
だから、オレオールさんの言葉は聞こえていたが、答えられなかった。
あ、オレオールさが俺の指先を触る。
優しい眼差し……一面氷の世界となっているのと、太陽の輝きにより、オレオールさんは幻想的な美しさを醸し出している。
うん? 刀を収めようとしている……あぁ……俺が意識を失って、これ以上続けられないと判断されたんだな。
俺的にはまだやれる。
実際、氷漬けにされてはいるが、俺にはダメージはない。
嫌という程、氷歌と訓練したおかげで、冷たいのには順応してしまった。
でも手合わせなのだから、俺の実力がある程度分かってくれたと思うし、オレオールさんも満足した顔をしている。
俺が意識を失った時に自動的に『蒼龍の鎧装』が炎を纏い、完全には氷漬けにはならなかった。
つか、ヴェルよ……そういった気遣いができるのであれば、俺の言う事を最初から聞けってんだ。
まぁ、認められていない俺がいけないんだけどさ……
そんなことを思っていると、オレオールさんはロックさんの方へと歩いていく。
あれ……氷漬けのまま放置?
何かを喋っているみたいだけど、氷で塞がれているため、よく聞き取れないぞ。
放置……それは困るな……
仕方がない。
自分自身で何とかしますかね!
『蒼龍の鎧装』は、オレオールさんの技を防いだため眠っている。
『好都合だ』
蒼炎の火力を上げ、氷を溶かしていく。
『ふぅ……うまくいったぞ! うん? あれ? なんだ? オレオールさんの目が輝いてい……おいおいおいおいっ⁈』
「いいよ、いいよ坊や! まさかあたしの想像を超えてくるとは、たいしたもじゃないか!」
「は、はい?」
納めようとしていた刀を再び構えだしたぞ⁈
終わりじゃないのかよ⁈
あ、あれ、体が言う事をって、ヴェルの奴がまた復活しだしやがった!
オレオールさんが構えだしたと同時に俺の体が勝手に動き出し、臨戦態勢に入り始める。
「坊やもやる気満々じゃ~ないか~。 いいねぇ……ますます気に入った!!」
『何がですか⁈』
俺はヴェルの支配から抗うために、喋られない。
喋られない事をよそに、ヴェルはオレオールさんを煽るように低く構えだす。
『おい……お互い思うところがあると思うが、一発殴らせろ! 多少気遣いができるようだが、ここは俺に決定権を委ねるべきではないか? 俺の体なんだから、俺に決めさせろ!!』
「何だい? お互いに一発で決めようじゃないかだって?」
『そんな事を言っていない……つか俺の心を読めるんじゃないのかよ?』
「坊やが必死に伝えようとしている事は分かった……断片的にしか聞こえないが、そこまでの意気込みを持って言われたら応えるしかないねぇ」
『断片的にしか聞こえないのか⁈ 都合よくそんな風に聞き取れたってのかよ⁈』
「お、お師匠、そろそろ終わりにされた方が……」
おっ! ここで、ロックさんが助け舟を出してくれ――
「いや、こんな楽しそうなお師匠の邪魔はしてはいかん! それに、迅人もやる気があるみたいだし……私はこの勝負の見届け人となろう!!」
つかえねぇぇぇぇ……それと手合わせがいつの間にかグレードアップし勝負になっていやがる!
つかこのおっさん、オレオールさんのことになると甘々過ぎじゃね!
「ロック、いつも堅物だと思っていたけど、あんたを見直したよ!」
オレオールさんまでもロックさんのノリに乗っちまった。
「ここまで楽しましてくれたんだ。 あたしのとっておきを見せてやろうかね」
オレオールさんは腰を低くし、霞の構えをとる。
「こいつを喰らって死なないでおくれ……坊や」
死ぬようなモンを俺に喰らわせるのかよ⁈
ただの手合わせから、勝負になり、そこから一気に死合にまで格上げされた俺の身にもなりやがれってんだ!
けど、ヴェルの奴はやる気を見せている以上、俺には逃げ道はない。
つか逃げれん!
ここはヴェルに乗っかるしか選択はない!
こいつの気が済むまで解除はできないから……。
ぶっちゃけ俺がヴェルを使ってしまったから……
いや、イケると思ったんだ……
ヴェルを使う時、7・3の割合でヴェルを制御できていた。
あ、ちなみに3が俺です。
すいません……
ノリでイケると思った俺が悪いんです。
ですから、ヴェルに全ベットさせてもらい、この場をなんとか乗り切る!!
お前を信じるぞ! ヴェルギウス!!
『ウ、レ、シ……ィ』
え、い、今何か聞こえ――
「行くよ坊やっ!!」
だ―――――っ⁈ 今はこっちに集チュ――
「グオオオオオオオオオオ―――!!」
だ――――⁈ 考えが纏まらん内に動き、いや、突っ込んでいきやがったああああああ――⁈
「真っ向から来るかい! 益々滾ってくるじゃないか! さすが大和魂を受け継ぎし国からきた子だよ!!」
ち、違うんです、俺の意思では⁈
「氷豹……彪閃牙っ!!」
オレオールさんから眩い程の閃光が走り、狂暴そうな氷の豹が向かってくる!
俺は……いやヴェルは真っ向から向かっていく!
さっきもそうだが、こいつはストレートしか投げれねーのかっ⁈
そんな事を考えていたら狂暴な豹が大きな口を開けて迫ってきている。
うわっ……またやられるのか⁈
『シン……ジ……テ』
『えっ⁈ い、今なんて⁈』
俺はダメだと思った……その時、突如頭の中に聞こえた声と同時に、俺の意識は闇へと墜ちていった……。
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