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懐友

ドス―――ンッ


「フゥゥ――」


危なかった。

あと少し遅かったらあの場で倒れ込んでおった。

わしはすぐさまその場に横たわる。


「そうか……もう少しか」


わしの命でもある黄炎の一部を迅人に授けた……つもりだった。

我が命でもある黄炎が迅人の下へと行きたいと呼応した途端、一気に持って行かれそうになった。

じゃが、今全てを持って行かれる訳にもいかんわしは、少し細工をした。

わざと今にも消え入りそうな炎へと細工をした。

細工をしなければすぐにバレる。

それに、あの膨大なエネルギーを、今の迅人に与えれば、体が持たない。

だから、あ奴の力と共存させることにした。


「そうでもせんと、迅人は自分を責めるじゃろうし……のぅ、ラグナよ」


迅人が黄炎と口走った瞬間、奴の気配、いや、意思を感じた。


「姿を消し、息を潜め、生きておった奴がのぅ……」


ラグナが消え、奴がどこかで生きておるのを感じておったわしは、ラグナがまだ生にしがみ付いておることに日々安堵しておった。

それと同時に、ラグナの気持ちを思うと、会う事も出来なかった。

まぁ、奴は魔法で防いでおったおかげで、会うにも会えんかったんじゃが……。


先も言うたが、わしはまだラグナが生きている事に安堵した。

生にまだしがみ付いている事にも安堵した。

わしが気付いておったぐらいじゃ……あ奴達もそう思っておったじゃろうが……まぁそう思わん者もおっただろうが、わしは嬉しかった……いつか、またラグナと出会える日が来るんじゃないかと期待していた。


しかし、突然ラグナの気配が消えた。

ラグナであればまだ死ぬはずはなないと思っていたわしは、酷く落ち込んだ。

そのせいもあり、虚ろわざる者に侵入を許し、我が子たちに迷惑をかけた。

虚ろわざる者により、穢れた者達へと変わり果てた我が子たちによってわしの体は弱くなっていった。


だが、わしは我が子たちを手に掛ける事はできんかった。

かわいい我が子たちを手に掛ける親がどこにおる。

これはわしが招いたこと……罰なのだと……そう思い込み、わしはラグナ同様に耐える事を選択した。


しかし、なぜ、ラグナは突然命を絶ったのか?

それが不思議でならんかった。

あれほどまでに生にしがみ付いとったあ奴が?

だが、その疑問はすぐに吹き飛ぶ。


「まさか、このタイミングで迅人が現れるとは……まったく、いたずらっ子が……あ奴らしぃ……」


迅人がわしの所に来た。

迅人を見た瞬間、ラグナしか使えん蒼炎を見たわしは驚愕した。

なぜこ奴がラグナと同じ蒼炎を使っているのかと。

まだまだ完全とは言えないが、あれはラグナの蒼炎。

その時、わしは感じ取った。


「そうか……そうなのだな、ラグナよ」


ラグナはこ奴に……迅人に託したのだと。


「ラグナはいつも突然現れ、わしを驚かせておった……あの頃を思い出したわい。 そうか、そうか……」


少し休んだら何故か力が湧いてきた。

これも迅人、それにラグナのおかげであろうな。


「さて、やる事を済ませ、来る日に備えるとするかのぅ……ラグナよ。 が―はっはっは!!」


お読みいただきありがとうございました。

お読みいただいた皆様に感謝を……

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