悪戯
な、なんであいつがここに⁈
こいつと仲間なのは確かだとは思うが……
よりによって、なんでこいつなんだよ?
「なんだよ~迅人君、そんなあからさまに残念そうな顔をして~? 俺は悲しいぞ~」
そんな感じで悲しがっているロキは泣いているフリをしている。
俺はお前に会えて嬉しくもないし、そんな間柄ではないであろが……
ましてや、お前は俺を殺そうとしていたであろうが。
「さて、嬉しい再会に浸ってはいたんだけどね~。そんな時間も無さそうなんだわ」
「お、遅いぞロキ⁈ 」
ロキはそう言うと夜峩さんにズタボロにされた虚ろわざる者を指さす。
すると、助けに来るのが遅いと憤慨する虚ろわざる者。
「上の奴らが回収して来いって言うからさ~、仕方なく来たっつ~の」
チャラけた感じで説明しだすロキ。
こいつを回収しにきたのはだいたい察していたが、そう言った瞬間、夜峩さんから強い殺気を感じた。
「貴様が、こいつを助けに来たことはわかった。だが、おいそれとこいつを渡すわけにはいかん。こいつは我が一族を実験としょうし、穢れた者へと追いやった」
「うんうん、あなたの言いたい事はよくわかったよ。けど、勘違いしないで欲しいな~」
「なに?」
ロキは再度虚ろわざる者の方へと指を刺す。
うん?
よく見るとその奥で浄化しきれていない穢れた者の死骸が横たわっていた。
「うん? いやいや、俺はそこに横たわっている死骸を回収しにきただけだから」
「おいっ⁈ ど、どういうことだっ⁈ お、おれは⁈ 俺を助けに来たんじゃないのか⁈」
ズタボロになった虚ろわざる者はそう叫ぶと、ロキは肩を下げ、やれやれと言わんばかりのジェスチャーを見せる。
「上から言われたのは、お前の横にいる穢れた者の回収なわけで、お前を助けろとは言われていな~いよ」
「な、なぜだ⁈ 私がいなければ後の研究に支障が――」
「指示に従わない奴はいらないってさ」
「なっ⁈ 指示にだって⁈ 私のインスピレーションは突然降ってくるのだ! 貴様らの指示に従っていたらせっかくの考えが薄れてしまうでは――」
「薄れてしまう様な考えしか浮かばない奴はいらないって事だろ」
「は?」
「あ、あと、お前、うちらの仲間を実験体に使おうと計画していただろ? バレないとでも思っていたのか?」
「そ、それをどこから⁈」
「仲間内に危なっかしい奴は置けんだろ~」
おいおいおい……仲間を実験体にって、ロキの言う通り、上の指示は間違ってはいないだろう……けど、こいつらの組織にも良識はるのか?
いやいや、ラグナさんの記憶を共有している俺は騙されませんぞ。
お前らの組織はどう見繕っても人を不幸にしている組織だ。
「迅人君、その顔は何を考えているか分かるよ~。たしかに人様に顔を向けられない様な酷い事をすることもあるけどさ~。けど、俺達には俺達なりの信念があってやっているんだ」
「その信念で人を不幸にしているのにか?」
「俺も心を痛めてはいるんだけどね~」
「そうは見えないけどな」
「仮面を被っているから余計に分かりづらいよね~」
「仮面を取らなくてもお前が笑っている顔は想像ができるよ」
「ははは、酷い言い草だな~。 さて、そう言う事なんで、そいつは好きにしちゃってください」
「ロキィィィィィィィィ――!!」
ロキがそう言うと虚ろわざる者は叫び出す。
「あ、そうだそうだ」
パチィーン
ロキが指を鳴らす。
それと同時に虚ろわざる者から魔力が急激に上がりだす。
そして――
バアアアア――ンッ⁈
「なっ⁈」
「ぬぅっ⁈」
突如虚ろわざる者の仮面が爆発し、虚ろわざる者の首から上が消し飛んだのである。
「好きにしろとは言った者の、考えてみたらあいつから俺達の情報を聞き出す恐れがあったからさ~。さて、回収する物はしたんで、俺は帰らせてもらいやす」
穢れた者の亡骸が消えている。
先程の爆発に乗じて回収したらしいな。
「今回、こいつのせいで結構目立っちゃったから、当面は静かにする予定なんで、寂しがらないでね迅人君」
「いや、俺はお前とはそんな中では――」
「それじゃね~迅人君」
『そうやすやすと逃がすと思うたか?』
突如威圧感半端ない声が空間を震わす。
そして、何も無い場所から、その声の主が現れる。
「あ~、やっぱそう簡単には逃がしてはくれないか~?」
「が、巌樹様⁈」
そう――
巌樹様が現れたのだ。
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