beyond the darkness
俺は始の肩を借りる様にして、暗闇の洞窟を歩く。
元々足手まといだった俺だが、本当の意味で足手まといになるとは、笑えない冗談である。
だが、こんな状況なので、反省は帰ってからにしようと思う。
始は黙々と歩を進めるが、俺のスピードに合わせ、動いてくれているのが分かる。
俺はほんっとうに情けないな。
この暗闇の洞窟を歩き続けてどれくらいの時間が経過しただろう。
暗闇をひたすら歩いていると時間がどれぐらいたったか麻痺してしまう。
とりあえず、携帯を取り出し、時間を見ると17時を回っていた。
本当なら今頃、元の世界に戻って、始と夕飯を食べながら今日の反省会をしていたのに……
これも俺のせいだ。
始の言葉にもっと耳を傾けていれば……
自分の馬鹿さ加減に反吐が出る!
「あの頃を思い出すな」
「あん?」
黙々と歩を進めていた始が喋り出す。
「俺達がまだ覚醒していない時、今とは逆で、いつも俺に肩を貸してくれてたなって」
「あぁ……そうだな。いつもお前はクラスのいじめっ子共にボコボコにされながらも、ひるまず向かっていったっけな」
「そんな時、いつも駆けつけて、助けてくれるのがお前だったよな」
「お前を見捨てられるかよ」
「さっすが俺のヒーロー」
「今じゃ逆だけどな」
まだ覚醒をしていなかった時はみんなどんぐりの背比べだった。
俺は昔から武術を嗜んでいたから、他の子よりも強かっただけ。
みんな覚醒しだしたら、一気に俺を追い抜いて行った。
俺がそう言うと、俺を支える始の腕の力が強くなった。
「今も変わらねぇよ。俺のヒーローはむかっしから迅人、お前だよ」
「はいはい! 分かったって! 嬉しすぎて涙が……涙が……ふわぁ……あ、わるいあくびが出た」
「おまえなぇ! そこは涙を出すとっこって、おいっ! 迅人見てみろ!」
「うん? なに? あ、あれってもしかして⁈」
下を向いていた俺は、顔を上げ、前を向くと赤く光っている場所が見えた。
「お、おい、あれって――」
「あぁ、出口だ!」
俺と始は進んで行くにつれ、明るくなっていく毎に始のテンションが上がっていく。
だが、俺はというと、明るさが日の光ではない事に気付き、最悪な事を考えてしまう。
嫌な予感しかない。
こういう時の俺の感は当たるのだ。
「な、なんだ……これは⁈」
「あぁ……やっぱりな」
明かりの先を通り抜けると、そこは出口ではなく、マグマが煮えたぎる地獄だった。
「そ、そんなことって……」
「……」
始は見て分かるようにショックを受けていた。
俺はそんな始の表情を見て何も言えずにいた。
「おいっ! あそこ! あそこを見てみろ! あちら側に通れる橋があるぞ!」
「おい……橋って……」
始が指さす方向を見たが、始の言う橋とは、今にも崩れそうな岩でできた橋である。
今も少しだが崩れ、橋の一部がマグマに吸い込まれていった。
だが、周りを見渡してみても、あちら側に進むにはあそこを通るしか道はない。
「迅人、もう少しだ! 頑張れ!」
「あぁ、ここまで来たんだ……行くしかないだろ」
「あぁ! 行くぞ!」
俺達は意を決して、橋を渡る。
だが俺の嫌な予感は、警報の様に俺の頭に響き続けていた。