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あの後、突如現れたゲートのおかげで、俺のデビュー戦でもある選考会は閉会式もなくゲートの騒動に持って行かれてしまい、終わりを迎えた。
今回の騒動での死者は奇跡的にも一人もいなかった。
まぁ、今回は名のあるハンターも近くにいたし、Sクラスのハンターが2人もいた事ですぐに片付いたおかげってのもあるんだけどね。
今回のニュースでは自然的にできた、要は偶然そこにゲートが発生したことになっていた。
だが、表向きにはそうニュースでは言われているが、氷歌の話だとそうではないと言っていた。
まぁ、ゲートが突然現れ、さらには奴ら虚ろわざる者達が現れたんだから、偶然がそんな重なる訳がないと思うのが普通の考えであろう。
つまりは、ロキとか名乗っていた男は、時間稼ぎと騒ぎを起こし、仲間の動きを悟らせないためのカモフラージュだったみたいだ。
ロキのもう一人の仲間が何をしていたのかについては現在捜査中とのことだ。
あの後、ロキ達が消え、氷歌にはこっぴどく怒られた。
理不尽にも程があるだろう……
氷歌から言われたのがもっと早くロキを倒し、捕縛できただろうと……
いや、確かにあのままいけばできたであろう……だが、それにはお前の許可が下りなければダメなんだろうと言った瞬間、臨機応変に動けなければダメだろうと言われ、俺の頭は混乱したんだ……お前の許可なく第1段階を使ってたらボロクソに言われ、痛い目にあうじゃんと……
そう思っていたら、氷歌から3段階までは自分の判断で使用していいと言ってくれた。
『それと、手の付けられない相手がこの先出てこないとは限らない。第3段階まで使って倒せなければ、自分の判断でその先を使用なさい。あなたはもう既に虚ろわざる者のメンバーであるロキに気に入られてしまったのだから。私の許可が必要だと言うけれど、その場に私がいなければ動けないという判断は間違いよ。私がいなくとも、真っ当な理由の中動いたのであれば私は迅人を評価するわ。けれど、自身の力を誇示するために力を使ったのであれば、私はあなたを軽蔑する』
そう言い残し、氷歌は消えていった。
氷歌の言いたい事は痛いほど俺の心に突き刺さった。
氷歌の許可が下りないからと言って、何かペナルティがあるとは言っていなかったし、俺は氷歌の許可なく使用した事で、怒られる事ばかり考えていた。
俺もいい歳だ……俺の中の氷歌は、俺が消息を絶った5年前とは考え方が変わっている。
あなたはいい歳なのだから、自身の考えに責任を持って行動なさいと言っている事にやっと気付く。
それからは、氷歌は氷歌で仕事があるので別行動を取る事になった。
俺はと言うと、やはり、もっと強くならなければいけない。
もっと実戦を踏まえた経験を積まなければいけないと思い、以前から行ってみたいと思っていたゲートへと向かう事にした。
それと家族に苦労をかけた分を取り返すためにもお金を稼がなければならない。
そんな場所があるのかと言われればあるのだよ。
昔の俺なら無理だったと思うが、今の俺ならイケる自信がある。
俺は今、とあるゲートの前にいた。
俺が入るゲートは砂漠の世界である『デューン』だ。
俺はここで実戦を積むと共に、モンスターを狩り、お金を稼ぎたいと考えております。
なぜ、ここを選んだのかって?
この世界は日中は暑く、夜は凍える程の寒さへと変わるのだ。
まさ今の俺にはうってつけの環境である。
ゲートを潜ると、太陽の強い陽が俺を襲う。
眩しい……だが、暑さは感じない。
少し歩いて行くと、様々な種族が入り浸っていた。
そしてそこには商店街が存在し、色々な物が売り買いされている。
様々な種族が入り浸り、活気がある。
「しっかし、賑やかだなぁ」
俺は店には目もくれず、ここの世界の協会へと向かう。
中に入ると中も様々な種族でごった返していた。
俺は掲示板があるフロアへと向かうと、ぴょんぴょんと跳ねている子がいた。
「う~……見えないよぉ」
よく見ると、この子の頭には猫の様な耳がある。
おそらくこの子はケットシーという種族であろう。
周りには屈強そうな種族ばかりで、ケットシーだと小さくて見えないのだろう。
まぁ、その光景を見て、癒されたので、お返しをしないといけないなと思った俺は声をかける事にした。
「よかったら俺の肩に乗るかい?」
「えっ⁈ いいのかい?」
「あぁ、どうぞ」
「ではでは、お言葉に甘えさせていただきますね」
そう言うとサササッと俺の体によじ登り、あっという間に俺の肩に到着する。
「おお~! よく見えるよく見えるぅ」
「お目当てのクエストはありそうかい?」
「う~っと、ちょっと待ってねぇ~」
俺がそう聞くと、ケットシーの子は掲示板に貼ってあるクエストを吟味し始める。
「あっ! 良さそうなのがあるよー!」
「おお~! そうかい? そいつはよかったな」
「うん! お兄さんのおかげで良いのが見つかったよ! ありがとうね」
目をきらきらさせながらお礼を言うこの子を良い子だなと思うのと、猫特有の瞳が綺麗だなと思っていたら、肩に乗っていたケットシーが下に降りる。
「お兄さんありがとね。おかげで良さそうなクエストが見つかったよ~」
「そいつは肩を貸した甲斐があったな」
「本当にありがとね! あっ、私の名前はクララって言うの! 私の事はクララって呼んでいいからね」
「おっ! いいのか? 俺は迅人だ。俺の事も迅人って呼んでくれ」
「あはっ! よろしくね~迅人」
クララはニパァっと屈託のない笑顔を俺に見せる。
「迅人は地球人?」
「あぁ、そうだよ」
「私はケットシーだよ」
「地球にもケットシーの種族は多く住んでるよ」
「そうなんだ! 私まだ一回も地球に行った事ないから、迅人みたいな優しい人がいるなら、近々行ってみようかなぁ?」
「なら今度地球に来たら俺が案内するよ」
「ホントにホントに⁈」
俺の足をクララは掴みながら、グラグラと揺らす。
小さい体の割に力強いな……
「あ、あぁ、本当本当」
「ならさならさ、連絡先交換しようよ」
「あぁ、いいぞ」
俺とクララは、お互いの携帯に連絡先を交換する。
「OK! 登録完了っと!」
「こっちもOKだ」
「よしっ! あっ⁈ もうこんな時間だ! 私これから仲間たちと合流しないといけないんだった……」
「そうなのか? なら俺の事は気にしなくていいから早く行くといいよ」
「うぅぅ……もっと迅人と話がしたかったんだけど……」
クララは下を向き悲しそうな表情になる。
どうしたものか……俺は時間があるからいいが、クララの仲間を待たせる訳にもいかないし、ここは俺が引く形を取って、クララには元気になってもらおうか。
「連絡先も交換したんだ。 いつでも連絡していいから、今は仲間たちの下に行くのがいいと思うぞ。俺のせいで仲間を待たせるのは良くないしな」
「そう言ってくれると助かる~。そっか! そうだよね! 今さっき連絡先を交換したんだった! えへへ」
「あぁ……お互い時間に余裕があった時に、ゆっくりと話をしような」
「わかった~! 迅人の気配りに感謝だよ~! それじゃ私行くね! 迅人ぉ、さっきはほんとに、ほんっとにありがとね! それじゃまたね~迅人ぉ!」
「あぁ、またな」
クララは元気よく手を振りながら仲間の下へと消えていった。
単独での異世界に少し緊張をしていたが、クララに会った事で気が紛れてよかった。
「さて、俺もクエストを見させていただきますかね」
すると、俺は1つのクエストに目が行き、すぐに決め、即行動に移したのであった。




