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祝福

俺は氷歌が試合を見ていた部屋に移動した。


「よくやったわね」

「えっ⁈」

「よくやったわねと言ったんだけど」

「あ、ありがとうございます」


部屋に入っていきなり褒められた事に少しだが、いやかなり動揺した。


「まぁ、今回夏乃子が相手だったのが、あなたにとって都合が良かったってのもあるんだけどね」

「そうだな……あのくらいの熱量と温度じゃ俺を倒す事はできないな」

「迅人の力である【順応】……この力がこれ程の成果を出すとはね」

「俺も信じられなかったよ……自分が死にかけてこの力に気付くんだからな」


そう……俺はこの【順応】という力によって夏乃子に勝てたと言っても過言ではない。

何を隠そう、俺はマグマに飲み込まれながらも生き抜いて事をご存じであろうか?

えっ? 忘れた?

ならもう一度最初から読んでください。


話を戻そう!


俺が夏乃子勝てた理由の1つが、俺の力【順応】のおかげである。

俺はマグマに飲み込まれながらも生き抜き、そして、マグマに入っても死なないのである。

ようするにこう言う事だ!

夏乃子の炎の攻撃は凄まじかったと思うが、マグマに比べたら全然熱くもないのだ。

俺には熱さによる攻撃は効かないと言う事なのだよ。

最初は火に対し恐怖感はあったけど、氷歌との訓練で怖さはすぐに消えた。

だから、炎帝を前にしていても怖気ずく事は無かったのかだって?

まぁ、火に関しては驚きはしなかったけど、夏乃子が炎帝だって聞いた時の方が俺にとってはそっちの方が驚いた。


「でもよく夏乃子に一発も食らわせずに勝てたわね」

「お、おい! 無理くり過ぎる課題を出した本人が言う事かよ⁈ あれにはさすがに困惑したんだぞ!」

「だって、炎も効かない奴が戦ってもすぐに終わってしまうじゃない。それでは簡単すぎてダメよ」

「まぁ、何とかなったから良かったものの……」

「もしあんたが夏乃子に一発でも入れていたら氷漬けにしてやろうと思っていたのに」

「お前はどっちを応援してるんだよ……」

「私は両方を応援してるの……悪い?」

「お、お前なぁ……」

「別に私は夏乃子が嫌いな訳ではないわ……でもあの子が『守護十二月帝』の一人になってから胡坐をかき、鍛錬を疎かにし、弱くなっていくのを見てはいられなかったの……」

「お前がそんな顔をするとはなぁ……はぁ~、友達思いなんだかよく分らんねぇ~俺には」


ふと『友達百人できるかな?』 という言葉が脳裏に浮かんだ。


皆もこのフレーズを耳にした事があるであろう。

俺も最初は100人友達作るぞと考えていた頃があった。


しかし現実は甘くはない。


100人友達がいても本当に苦しい時に助けてくれるのは極僅かである。

中には友達だと言って平気で裏切る者もいるしな!

それに100人もいたら体が1つしかないのに時間を割くのに大変だってんだ。


話を戻そう。


ここだけの話、氷歌はめちゃくちゃ面倒見がいい。

幼馴染の俺だから言わせてもらうが、本当に面倒見がいいのだ。

ぶっちゃけ、氷歌はこの様な性格なので、友達は多くはない。

氷帝だからいっぱいいるでしょって思うのだが意外にそうでもない。


そして、先に言わせてもらうが、氷歌は100人の友達を作ろうとはしなかった。

いや、最初から作る気がなかったと言った方がいい。


氷歌には友達は少ない……だが、本当に信頼できる友達が氷歌にはいる。

少ないが助けて欲しい時に必ず助けに来てくれる人が氷歌にはいる。

俺にはそれがとても羨ましかった。

なんだかんだ言っても夏乃子も氷歌の中では何とかしてあげたいと思う友達なのであろう。えっ? その中に俺は含まれているのかだって?

話が脱線してしまったので、話を戻そう。

え? 答えていないだって? 俺にも分からんよそんなこと……


「今回の事で、あの子が私の事を嫌いになったかもしれない……けど私はそれで良かったと思うわ……これであの子が強くなると思えば私は嫌われ者になっても構わない」


そう言ってのけた氷歌の顔はとてもかっこいいと思ってしまった……不覚にも……


「何よその不服そうな顔は?」

「な、なんでもありません」

「……いいわ。それよりも――」


窓際に立っていた氷歌が俺に歩み寄って来る。

そして手を差し出してきた。


「とにかく、私が言った事を全てクリアしたんだから、今度はちゃんと祝福してあげるわ」


そう言い氷歌は笑顔を見せてくれた。

そうか……俺は氷歌が出した課題をクリアして、この先もハンターとしてやっていっていいんだ!

そして、前回は氷歌の反対を押し切ってハンターになった時とは違う。

今回はちゃんと氷歌からの承諾を得て、ハンターとして活動ができる。

俺は氷歌の手を数秒見つめ握手をする。


「これからが本当の戦いだってことを肝に銘じて動きなさい」

「あぁ……肝に銘じるよ」


お互いの手を強く握ったまま俺と氷歌は笑っていた。

つか、氷歌の握る手が滅茶苦茶強いのは気のせいだろう――


「いぃ―――てててててててて⁈ ひょ、氷歌手が痛っ⁈ 痛いんだけどっ⁈」

「何このぐらいで弱音を吐いてるのよ? だらしない」

「お、お前さっき祝福するって言って――」

「「「きゃああああああああああああああああああ⁈」」」


俺と氷歌が言い合っていると、会場から悲鳴が聞こえる。


「何かしら?」

「大勢の悲鳴が聞こえるぞ」


俺と氷歌は会場を見ると、そこにはゲートが開いており、そこから無数のモンスターが溢れ出ていた。


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